BEYOOOOONDS、なぜMVが次々話題に? 人気ハロプロ作品と共通する3つのキーワードから解説
そして、ハロプロならではの「トンチキ」を最高に感じさせてくれるのは「Go Waist」。察しの通り、原曲は1979年にアメリカのVillage Peopleが発表したあの有名な「Go West」である(クレジットにも記載あり)。
ダイエットを主題にした歌詞自体は(近年ハロプロのオリジナル作品にも多数参加している)作詞家・児玉雨子の提供ということもあり、「愛されたい」「自分のことを好きになりたい」というハロプロおなじみのテーマが散りばめられた、ある意味王道と表現してもいい内容だ。
しかし以前、やはり先輩のBerryz工房が同じダイエットをテーマにして歌っていた「1億3千万総ダイエット王国」(2014年)と比べると、2019年のBEYOOOOONDSは思いっきり「トンチキ」の方へと爆走する。MVを見比べれば、両者のゴールがまるで違っているのが一発で理解できるだろう。
その“ゴールの違い“とは、ある意味プラチナ期のモーニング娘。やBerryz工房、℃-uteが記憶の中のアイドルグループとなってしまった2019年において、「ハロプロは高いレベルのアイドル・パフォーマンス集団である」という評価が、すでに隅々まで伝え届いているゆえの選択肢だったのかもしれない。
またもうひとつ、見方を変えればどこを切り取っても印象に残る「120%全力のトンチキ」は、口コミの積み重ねがブレイクへと繋がっていくSNS時代に生を受けた彼女たちだからこそ、用意されていた道とも見ることができる。
近年のハロプロは、下部組織であるハロプロ研修生からの昇格がかなり多くなっていた。現に記事執筆現在のデビューグループ所属者全50名のうち、約8割(計39名)がハロプロ研修生出身者になっている。
これは2010年代にハロプロがパフォーマンスという切り口で世間から再評価されていったことを踏まえれば、ハロプロ研修生という英才教育システムを受けた者たちが優先的に次代の看板を背負っていくのは、ある意味当然の流れであった。ただパフォーマンス時代以前、素人集団からスタートしたハロプロを知っているファンにしてみれば、アイドル未経験者による奇跡的な化学反応が減ってしまい、どこか寂しさがあったのも事実だ。
しかしその中で、今回デビューが決まったBEYOOOOONDSは従来の元気さや幼さだけでなく、一芸を高く評価する一般オーディションを開催し、結果としてピアニストや10年以上のダンス経験者として確かな実績を残してきた計3名を正規メンバーとして迎え入れている。つまりBEYOOOOONDSとはパフォーマンス集団・ハロプロのプライドを徹底的に教え込まれてきたメンバーと、その評価に負けない個別能力をもったアイドル未経験者による、完全未知の集合体なのだ。
そう考えるとメジャーデビュー作品を通じたBEYOOOOONDSへの反響は、そのまま「令和のハロプロ」の始まりに寄せられた、ファンの無数の期待でもあるように感じる。そしてその中のひとりとしては、やはりBEYOOOOONDSにはこのまま”異例”を恐れずに、どうか自分たちのアイドル道を変幻自在に突き進んでいってほしいと、そう願っている。
■乗田綾子 Twitter
ライター。2012年にブログ『小娘のつれづれ』をスタートし、アイドルや音楽を中心に執筆。現在はフリーライターとして著書『SMAPと、とあるファンの物語』(双葉社)を出版しているほか、『月刊エンタメ』『EX大衆』『CDジャーナル』『週刊女性PRIME』『SODANE』でも執筆。