indigo la Endは不安を美しい音楽に変えていくーー初の日比谷野音ワンマンを見て

indigo la End、初野音ワンマンを見て

 川谷はライブ中何度も「楽しかった」と呟き、「良いツアーだったな」「一人で曲を書いてる時は苦しいけど、ライブでやると楽しかったなってなる」と柔らかい笑顔を浮かべた。「メンバーとか、普段そんなにしゃべらないですけど、この場を借りてほんといつもありがとうございます」と感謝し、メンバーもはにかみながら喜んでいた。

 来年結成10周年を迎えるindigo la Endだが、ずっと同じメンバーではない。後鳥亮介(Ba)は、2014年8月に加入。その後、ツアー『幸せが溢れたら』のサポートドラムだった佐藤栄太郎が2015年3月、ファイナルで正式加入した。アルバム『幸せが溢れたら』は、2015年2月に発売され、今の4人で再スタートをきる節目となった作品と言える。野音ではそこから6曲と、最も多く演奏された。「幸せな街路樹」も、曲自体は以前からあったが、発表されたのはその時期。だから自ずとこのライブでは、indigo la Endの歩みに想いを馳せたし、後鳥・佐藤が加入する前の曲も、すっかり彼ら自身のものになっていることを感じた。

 この日川谷は、野音のステージには個人的に二回ほど立ったことがあると前置きし、「indigo la Endで、野音でやるっていうことに、凄く特別な意味を自分で課してた」と話した。川谷は度々「indigo la Endで歌うことが一番自分に近い」と語っている。複数のバンド、舞台『独特な人』、プロデュースなど、自分の中に自己を複数抱えると、「ホント」がわからなくなり、混乱をきたすこともあるかもしれない。だからこそより、indigo la Endが川谷の軸であることが際立つのだろうし、そのindigo la Endとして野音に立っている姿には、感慨深いものがあった。

 ツアー『街路樹にて』は、メンバー同士、そしてindigo la Endとファンが絆を深めた、美しいツアーだった。リリースツアーではない分、メンバー4人がじっくり向き合う貴重な時間になったことだろう。ファンにとっても、川谷の美しい楽曲、長田の流れるようなギター、後鳥のあたたかいベース、佐藤の緩急あるドラム、その全てが揃ってこそindigo la Endであると、より愛しく思えたのではないだろうか。

 終演後に配られた川谷からファンへの手紙には「全て泡になってしまえ 最初からなくなるって知ってたら 幾分楽だから」「でもこんな不安が綺麗に見えるのが音楽です」「どうかもう少し身体を預けてみませんか」と書かれていた。不安を美しい音楽に変え、私たちを救ってくれるように、私たちもindigo la Endを幸せにしたい。だからもう少し、いや末永く、indigo la Endを見守っていきたいと思う。

(写真=井手康郎)

■深海アオミ
現役医学生・ライター。文系学部卒。一般企業勤務後、医学部医学科に入学。勉強の傍ら、医学からエンタメまで、幅広く執筆中。音楽・ドラマ・お笑いが日々の癒し。医療で身体を、エンタメで心を癒すお手伝いがしたい。Twitter

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