中国アイドル産業はどう変化した? 人気アプリ「Owhat」CEOが語る5年間

オンラインからもアイドルが誕生

ーー今年で5年目を迎えるOwhatですが、スタートした当初とこの1、2年で中国でのアイドルに何か変化を感じますか?

ディン:2014年前後は、中国でも韓国アイドルが人気でしたね。例えば、EXOとか少女時代とか。また、TFBOYSという中国オリジナルの3人組のアイドルグループもちょうど2013年にデビューしました。その他では、俳優出身のアイドルも出てきたのもその頃ですね。2017年はネットドラマやオンライン番組で人気の出たアイドルが誕生するという新しい現象が起きて、そして、2018年の『偶像练习生』などのオンラインのオーディション番組といった新しいスタイルから大量にアイドルが生まれました。オンラインからアイドルが誕生しているというのが、以前にはなかった新しい傾向じゃないでしょうか。

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ーーそれでは、ファンの変化はいかがですか?

ディン:流行のサイクルが早くなるにつれて、一人のアイドルをずっと追っかけるということが少なくなっているのかなと思っています。以前は、一人のアイドルを10年追っかけるというのが当たり前だったのに、ここ最近は、複数のアイドルを同時に追っかけるというファンも多数出てきています。

ーー一途ではないんですね?

ディン:そうなんです。アイドルも他の消耗品同様、替えのきくファストファッションならぬ“ファストアイドル”みたいな感じに捉えている人も増えているんです。もちろん、一途なファンもいますよ。ただ、日本と違って中国のファンの多くが“自分が求める基準”がまだ定まっていないと言えるのかもしれないです。でも、1995年以降に生まれた若い子は、子どもの頃から様々なものに触れてきたので、自分の欲しいものの基準が固まっている人が多くて、一途なファンが多いかもしれないです。

ーーそうなると、アイドルもファンを獲得するために必死でしょうね。

ディン:そうですね。昔のアイドルは、音楽とかドラマや映画などの良い作品を世に送り出すことでファンを楽しませてきましたが、今はそれだけではファンたちも物足りなくなっているんですよね。今は、アイドル個人がSNS上で色々と発信する必要があるんです。作品だけで影響力を与えるというのは難しい世の中になっています。第三者が編集したものではなく、自分で責任をもって発信しなければいけない時代なので、そこのセンスや能力も問われる時代になっています。ですから、アイドルたちもそのことを十分に理解する必要があると思います。

ーーそれでは、ディンさんから見て、中国のアイドル産業の未来は明るいと言えますか?

ディン:東アジア全体の特徴かもしれないのですが、アメリカなどと比べるとファンの子はグループで楽しむ傾向にありますよね。ファンクラブに入って同じアイドルのファンの子たちと一緒に応援をするとか。そういう意味でも、中国のアイドル産業は、これからもこのコミュニティをターゲットにまだまだできることはあると思っていますし、どんどん大きくなって、面白い動きが出てくると思っています。

 以前、北京で取材をしたある芸能事務所のCEOが語ってくれた一言を思い出した。「中国のアイドル産業自体が、始まったばかり。2018年の番組(『偶像练习生』)が与えた影響は大きい」と。中国で多数のアイドルを抱える一番大きな芸能事務所でも設立が2009年というから驚きだ。この10年でアイドル番組が増え、芸能事務所が増え、アイドルになりたい人も増えている。新しい産業にチャンスとばかりに飛びつく人たち。そして、その産業を支える多くのファンたち。Owhatは、アイドルとそのファンを育てたいと、新しいコンテンツ作りを続けている。

 今年3月、Owhatは北京に「Ospace」というレンタルスペースをオープンした。ライブハウスや録音スタジオ、レッスンスタジオをはじめ、アイドルのグッズを売るショップも完備しているという。アイドルとファンのためのスペースだ。すでに数カ月先まで予約でいっぱいだというから、中国でのアイドル産業はまだまだ止まるところを知らないようだ。

(取材・文=小山ひとみ/写真提供=Owhat)

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