ヒゲダンの歌詞はなぜグッとくる? Official髭男dism「Pretender」を軸に特徴を読み解く

 メジャーデビューからわずか1年ほどで、バンドシーンの最前線に躍り出たOfficial髭男dism、通称・ヒゲダン。月9ドラマ『コンフィデンスマンJP』の主題歌となったメジャーデビュー曲「ノーダウト」は YouTube再生数が1800万回を突破、 USEN J-POPチャートでも1位を獲得。また、2nd EPのタイトル曲「Stand By You」は国内AM&FM局のオンエア回数を集計するBillboard AirPlayチャートで2週連続で1位に輝くなど、各種配信チャートを席巻した。結果、2018年デビュー組の中で、最もサブスクリプションでの再生回数の多いアーティストになるなど、その快進撃はとどまることを知らない。つい先月には出身地でもある中国地方のNHK総合が、ツアー最終日に密着したドキュメンタリーを放映。番組はファンの声に押され、異例の全国放送へと発展した。「曲を聴くと元気をもらえる」「思わず踊りたくなる」など、老若男女幅広い声も丁寧に拾われており、改めて彼らの現在地が示されたかたちだ。

 そんな彼らが、5月15日に最新シングル『Pretender』を発売した。タイトル曲は先行配信がなされており、Apple MusicではリアルタイムランキングJ-POP部門1位、iTunesではトップソングランキングJ-POP部門1位、総合3位を獲得するなど各種音楽チャートでも好調。ドラマに続き映画『コンフィデンスマン JP』の主題歌として書き下ろした楽曲とあって、映画の公開と併せて一層の盛り上がりも期待される。

Official髭男dism - Pretender[Official Video]

 Official髭男dismといえば、フロントマンの藤原聡が繰り出すポップ色全開のピアノサウンドと、ファンクやジャズ、ブラックミュージックの要素を加味したリズム、なによりキャッチーなメロディでリスナーの心をつかんできたバンドだ。事実、音楽認識アプリ「Shazam」で長期にわたり1位を獲得したのも、先日放送された『ミュージックステーション』で「新世代を感じさせるアーティスト」に選出されたのも、一聴しただけで引き込まれてしまうほどの“ヒゲダン・ワールド”が楽曲の中に確立されているからにほかならない。

 しかし一方で、歌詞もまた魅力的だ。たとえば新曲「Pretender」は恋の終わりを綴った切ないミディアムナンバー。〈もっと違う設定で もっと違う関係で 出会える世界線 選べたらよかった〉〈君の運命のヒトは僕じゃない 辛いけど否めない でも離れ難いのさ〉と、別れ際の心情が痛いほど伝わってくる。恋愛はもちろん、仕事や友人関係など日常の機微をすくい上げた等身大の歌詞が、藤原の得意とするところ。声高に大層なメッセージを掲げる代わりに、時に聴き手の心に寄り添い、また背中をそっと押すような、シーンやストーリーを意識しているように思う。

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