なぜSTUTSは人気プロデューサーに? YUKI、土岐麻子らを魅了する楽曲センスに迫る
6月26日に発売される土岐麻子のリミックスアルバム『TOKI CHIC REMIX』にSTUTSが参加することが明らかになった。PUNPEEが参加した「夜を使いはたして feat. PUNPEE」でブレイクしてから、STUTSはYUKI、iriなど自由なスタンスのミュージシャンたちから引っ張りだこの、人気プロデューサー/ミュージシャンになった。
STUTSがヒップホップを知ったのは、中学時代に聴いたRIP SLYMEなどだったという。そこからどんどんのめり込んで、高校時代にはゴリゴリの日本語ラップリスナーになった。ビートメイクを始めたのは高校の時。そして大学進学を機に上京すると深夜のクラブで、ラッパーたちのバックDJをしたり、MPCプレイヤーとしてビートライブなども披露するようになった。だがSTUTSには「単純にMPCを叩く人って所に囚われたくない」という信念があった。彼は、MPCプレイヤーとしてHIFANAらの“見せる”パフォーマンスに刺激を受けたという。彼らが登場するまでMPCプレイヤーのライブは、パフォーマンスとしてやや地味な印象があった。しかし、特にHIFANAはMPCのパッドを叩くプレイヤーのカッコよさにフォーカスした演出で、ビートライブの見せ方をガラリと変えたのだ。そのあたりの影響は、STUTSの存在を世に広めたニューヨーク・ハーレムの街角で行ったストリートライブの映像からも見て取ることができる。
「ルーツとなる芯は保ちながら、自分のいる場所を限定しない」。これは昨年私がインタビューした記事(参照)で語っていたこと。まさにこのスタンスが多くのミュージシャンを惹きつける要因だろう。彼はクラブでライブしていた時期、同じイベントに出ているカッコいいラッパーたちに自分のビートを入れたデモCDを渡していたという。そのコネクションが彼の活動のベースになった。菊丸(KANDYTOWN)、RAU DEF、ZONE THE DARKNESS(現:ZORN)、KMC、Haiiro De Rossi、ダースレイダー、JJJ……。さまざまなラッパーにクオリティの高いビートを提供して存在感を強める一方で、シンガーソングライターの寺尾紗穂の楽曲にもビートプログラミングで参加していた。また2014年にはAlfred Beach Sandalとの共作「Horizon」も発表している。