NICO Touches the Wallsが見せつけた“4ピースバンド”の地力 『MACHIGAISAGASHI』レポ

 終盤のMCで光村が「(リリースを重ねるほど)ハードルが上がる一方って話をさっきしましたけど、やればやるほど、自分が如何に不器用な人間かってことを日々思い知ってます」「でも自分の情けないところを許せるなら、こうやってライブをすること、作品を作ることにも意味があるのかなと。今日は楽しく歌わせていただきました」と話していたことが印象に残っている。なぜなら、そういう、ニコというバンドのどこか捻くれた感じがこの日のライブから読み取れたからだ。

対馬祥太郎(Dr)

 例えば、飴と鞭の使い分けが絶妙なオープニングおよびその後の展開。そして演奏曲の中からもう一度観たい曲を募るスタイルのアンコール(アンコールとは本来こうなのだと、昨年のツアーMCで力説していた)。これらには、紋切り型のやり方に首を傾げ、自己流の一捻りを加えるこのバンドの性格が表れていた。新曲のうちの1つは、一風変わったコード進行で予測不能な展開をしていて、私たちは大いに翻弄されることとなる。また、先述のような光村の抱える孤独が滲み出た曲もあった。

 現在制作中の『QUIZMASTER』について光村は「(4人の)趣味趣向が充満しそう」と話していた。同作が、創意工夫に富んだアプローチを通じ、一筋縄ではいかないバンド自身の在り方を落とし込んだ作品なのだとしたら、リリースが非常に楽しみである。ツアーは6月9日、Zepp Osaka Bayside公演まで続いていく。

(文=蜂須賀ちなみ/写真=上飯坂一)

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