The Vocodersとはどんな新バンドなのか? POLYSICSとの違いをライブから考察

音楽性

 ハヤシがMCで「座って聴くテクノ、でもアンビエントとかではない」と言っていた。

 要はこれ、ほかのバンドで言うところの、アコースティックライブとかアンプラグドのポリ版なのだ。ポリがアコギでやるのは全然違う、どんな形ならやれるか、やりたいかと考えて、自然にこうなったのだと思う。

  で。それをポリがやると、どんないいことがあるのか。3つある、ということがわかった。

 まず、「ロックバンドがアコースティック編成でやりました」というのとは、普段との飛距離が違う。たしかに別バンドだと思うほど大きく異なる。BRAHMANはメンバー4人に2人加わった6人編成でOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDをやっているが、あれくらいの飛距離だと言っていいと思う。

ヤノ マサシ

 2つ目は、それをやることによって、普段ライブでなかなかセットリストに入れにくい、でも葬るには忍びない曲たちをリアレンジして再発掘できること。そして3つ目、普段のポリでは出ていない、というかきっと封じていたのであろう、いや単に必要ないから使わなかったのかもしれないが、とにかくそのような、これまでになかった新しい武器が表れていることだ。どんな武器か。メロディがいい、一緒に歌いたくなる、という武器だ。ポリのライブで死ぬほど盛り上がる鉄板曲には、「カジャカジャグー」や「URGE ON!!」のように歌メロがあるんだかないんだかわからない、というかほぼない名曲がいくつもあるが、ヴォコのセトリでそれ系の曲は「That’s Fantastic!」くらいであることにも「なるほど」と思う。

 というわけで、きっと当初は本人たちも予想していなかったであろう可能性をいろいろ秘めているThe Vocodersなのだった。

 なお、配信シングル『Part of me』は、オフィシャルサイトを見ると「配信第一弾リリース!」というコピーが付いている。ということはポリも含めて第二弾や第三弾もあるだろうし、その末にアルバムもありうる、というかここまで本気なんだからまず間違いなく考えているだろう。

 あと、今後、夏フェス等への出演も、「このフェスはこの時間帯でこのステージだからポリで出る、あのフェスはこの時間帯でこのステージだからヴォコで出る」というようなことが、2019年は可能だということですよね、きっとこれ。考えれば考えるほど、いろいろ楽しみになってきた。

フミ

 余談。フミちゃん、MCで「バイザーがないといつもと勝手が違う」と言っていたが、終演後に「お客さんの顔がすごいはっきり見えてすごい緊張する」「演奏中に目線をどこにやればいいのかわからなくて困る、ほかのバンドはどうしてるんだろうって思った」とおっしゃっていました。笑いました。でも、そりゃあたしかにそうなるわ、20年バイザーかけてライブやってたら、とも思いました。

(文=兵庫慎司/写真=緒車寿一)

■リリース情報
POLYSCS『Part of me / Frame On』
The Vocoders『Part of me / Mandolin Girl』
4月3日(水)発売

オフィシャルサイト

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