ドラマ『QUEEN』で話題のmilet、ヒットの理由は孤独を肯定する価値観とそれを届けるための歌声

孤独を大切にする感性

 多くの場合、“孤独”はネガティブな印象を持つ言葉として用いられるし、国語辞典を引いてみても「ひとりぼっち」や「さびしいこと」などといった文字列が並ぶ。そんな“孤独”に対してmiletは「マイナスなイメージは全くなく、むしろすごく落ち着く場所」だと話す。(miletインタビュー 関和亮、山岸聖太らからのラブレターとともに)繋がることを最善とする時代にもっとも枯渇していた“孤独を受け入れる”ということを提示してくれるのが彼女という存在なのである。

milet「Again and Again」MUSIC VIDEO(出演:松本穂香・フジテレビ系ドラマ『JOKER×FACE』メインテーマ)

 『JOKER×FACE』のメインテーマに抜擢された「Again and Again」は、「孤独のなかの強さ」を歌った1曲だ。何か決断をしたり踏み出したりするときは、誰かの意見を聞いたり助けを求めたりしたくなる。そして、誰かに後押しされた気になって前に踏み出してみたりする。さも、自分ではない誰かの意見に流されたかのように。

 しかし結局は、どこへ行くにしても何をするにしても、決断しているのは自分自身なのである。誰かの意見に身を任せているように見えても物事を決断するときというのは、深層心理に深く潜り孤独になり自分自身と向き合い、次の一手を決める。そこにあるのは、孤独になることで未来へと歩みを進める強さだ。〈孤独だって それでいいんだ〉何度だって 抜け出すまで〉というリリックは、まさしくそういった類の信念を反映しているといえるだろう。

すべてを許容する深さを持ったダーク

 その世界観の構築に一役を買っているのが、ハスキーかつダークな彼女の歌声だ。このような表現をすると声が低いかのようなイメージを持たせてしまうかもしれないが、決してそのような意味ではない。miletを形容する際のダークというのは、“暗い”のではなく“深い”のだ。例をあげるのであれば、底の見えない深い海のような、終わりの見えない広大な宇宙のような。全てを許容し受け入れるであろう深さを持っている。

 彼女は自身の歌声を「発見した」と表していたが、必然的に引き寄せたように思えてならない。それはmiletというアーティストが、ひとりの人間として芯を持った人物だからだ。中学・高校とカナダで過ごしたこともあり、「イエス」「ノー」という意志表示をハッキリと行い、自分の考えや気持ちを伝えるためには物怖じせず発言する。日本人が苦手とする自己顕示を当たり前に積み重ねていたからこそ、自分が進むべき道を見据えぶれない信念を培ってこれたのではないだろうか。また、そんな彼女だからこそ人々を魅了し許容する歌声に愛されたのではないだろうか。

miletのブレイクは偶然ではなく必然

 “孤独を肯定する”という独自の価値観をもちながら、それを届けるための歌声を持ちあわせているmilet。3月16日には新人としては異例のスピードで『CDTV』(TBS系)への初出演も決定している。言わずと知れた国民的音楽番組であり、King Gnuやあいみょんのような新進気鋭のNEW GENERATIONアーティストも出演し名を広げた同番組での歌唱が、彼女の名をさらに知らしめることは間違いないだろう。miletへの評価が偶然ではなく必然だと証明される日もそう遠くないはずだ。

■坂井 彩花
ライター/キュレーター。1991年生まれ。ライブハウス、楽器屋販売員を経験の後、2017年にフリーランスとして独立。Rolling Stone Japan Web、EMTGマガジン、ferrerなどで執筆。
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