Swindle、The Cinematic Orchestra、K Á R Y Y N……小野島大、エレクトロニックな新譜9選
フランスはリヨン出身のプロデューサー、フォラモア(Folamour)の2年ぶり3作目『Ordinary Drugs』<FHUO>。前作『UMAMI』が、ダニー・クリヴィットやローラン・ガルニエなどにフックアップされ注目を集めた人ですが、ピアノやホーンなど生楽器をフィーチャーしたソウルフルでジャジーなディープハウスとして抜群のセンスとクオリティです。前作よりもジャズ色が強まり洗練度も増して、バランスが良くまろやかでファットな音質も素晴らしく、リスニング用としてもフロア用としてもいける最近出色の傑作と言えるでしょう。
またフォラモアと同じリヨン出身のエチレン(Ethyène)の『Brotherly Love』<Moonrise Hill Material>のエレガントでシネマティックなディープハウスも実に魅力的です。
ベルリン在住のDJ/プロデューサー、エフデミン(Efdemin)ことフィリップ・ソルマンの5年ぶり4作目が『New Atlantis』<Ostgut-Ton>。英国の哲学者フランシス・ベーコンの同名小説からインスピレーションを得たという本作は、黒光りする四つ打ちのストイックなビートに、ヒプノティックなアンビエント〜ドローンサウンド、ダルシマーやハーディ・ガーディ、ギターといった楽器が瞑想的に交錯するミニマル〜ディープテクノ。ヨーロッパの古楽とエクスペリメンタルなエレクトロニカが合体したようなサウンドはほかにない個性で、実に魅力的です。こういう曲が鳴らされるパーティーで踊ってみたいもの。
ベルギーのアンダーグラウンド・ハウスの気鋭、UC・ビーツ(UC Beatz)は、さきごろ『Mosaic Grooves』<Entrepôt Records>という素晴らしいアルバムを出したばかりですが、間髪を入れずリリースされた『Hidden Treasures』<Underluxe Records>は、自主レーベル<Entrepot Records>から、2014年〜16年にかけて限定数百枚のバイナルオンリーでリリースされたトラックをコンパイルしたもの。マメにバイナル盤をチェックしきれない私のような無精なリスナーには大変ありがたいアルバムです。フィリーディスコやオールドスクールなソウル〜ファンク、ジャジーブレイクスなどサンプリング主体の太いボトムと共に展開する、アルバムよりもロウで荒々しいダンストラック集です。
■小野島大
音楽評論家。 『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』『CDジャーナル』などに執筆。Real Soundにて新譜キュレーション記事を連載中。facebook/Twitter