ONE OK ROCK『Eye of the Storm』から考える、“クロスオーバー”がロックに与えた新たな語法
ONE OK ROCKのニューアルバム『Eye of the Storm』は、ここ数年の彼らのチャレンジがかたちになった一作だ。ギター中心のアンサンブルからリズム隊に焦点をあてたプロダクションに舵を切ったことで、サウンドそのもののシンプルな力強さが押し出されている。
しかし、本作では、彼らが洗練させてきたロックバンド的なカタルシスのつくり方やメロディの力を大胆に振り切ってしまっている。高揚感のあるコード進行やメロディ、あるいはギターをかき鳴らす爽快感。こうしたカタルシスが本作で薄らいでいるのだ。そのサウンドを惜しむ声も随所で聞かれる。
そのかわり、本作にはまた別種のカタルシスが用意されており、それに惹かれるリスナーも少なくないはず。ONE OK ROCKの最新作が持つ魅力を体感するためのガイドとして、こうした新しいロックのあり方について概観してみることにしよう。
ONE OK ROCKの変化の契機は、アメリカのレーベル、<Fueled by Ramen>との契約だろう。同レーベルはもともと、ParamoreやPanic! At The Discoなど、エモを中心としたポップパンク寄りの人気バンドを多く擁してきた。近年はTwenty One Pilotsに代表されるように、トラップやEDMからの影響を貪欲に取り込んだ、新しいロックをメインストリームに向かって放っている。
彼らの提示する新しいロックは、トラップに負けない重低音と、各パートの抜き差しによって楽曲のなかにダイナミズムをつくりだすEDM的な方法を取り入れたもの。メロディはよりシンプルになり、各楽器が放つ一音一音の存在感を出すために、テンポはやや遅く音数は減る。しかし、大音量でそのサウンドを浴びたときの快感は従来型のロックに引けを取らない。いまや、フェスやスタジアムなど、そうしたサウンドのほうが映える場所も多いかもしれない。