花澤香菜、区切りの年で打ち出した今とこれからの表現「自分が思ってることを全部出してる」

花澤香菜が打ち出した今とこれからの表現

もうちょっと肩の力を抜いて自信をもって 

ーーでは、ここから収録曲についていろいろ聞いていければと思います。まずは山内さんの「マイ・ソング」について。これはどういう感じで進めていったんでしょう?

花澤:これは事前に、たとえば「虹」とか、フジファブリックの曲の中からこういう曲が好きだとか、自分が歌うんだったらこういう曲がいいとお伝えしていたんです。で、山内さんと佐橋さんは直接電話でやり取りしてたので、すごく早かったです。

ーー仕上がった曲をどう捉えてどう歌おうと思いましたか?

花澤:30代を迎えて、これから面白いことがきっとたくさん待ってるんだろうなっていう希望に満ち溢れた感じの歌詞だったので、それとフジファブリックの演奏がすごい背中を押してくれて、ぐいぐいレコーディングできました。

ーーフジファブリックって、過ぎ去った時間を振り返る切ないタイプの曲と、未来に向かって進んでいくタイプの曲の二つのパターンがあると思うんです。これは後者の曲ですね。

花澤:そうですね。

ーー続いては橋本絵莉子さんの「おとな人間」。この曲は彼女なりの言語感覚で、30歳を迎えた今というテーマをビビッドに切り取っている。すごい曲だと思いました。

花澤:これ、本当に大好きです。それこそ初期のチャットモンチーっておっしゃってましたけど、私の好きなチャットモンチーが詰まってる曲を作っていただいて。

ーー最初からこの歌詞が来たわけですよね?

花澤:そうなんですよ。女子ならではの大人の捉え方というか。「あー、わかるな」って思いながら。

ーー続いて、在日ファンクの「パン」。これはまず、どういう流れでパンの曲ができたんでしょうか?

花澤:前に私が北川(勝利)さんと一緒にやっていたライブで、ジェームス・ブラウンの真似をして「メロンパン! メロメロ!」って歌ってたことがあったんですけれど、あれで「ファンクとパンは合うものだ」っていう常識が私の中でできて。

ーーなるほど(笑)。

花澤:そこから、隙あらばやりたいなと思っていたんです。で、やっぱり日本でファンクと言ったら在日ファンクだと思っていて。ハマケンさんとは『家電男子』っていうアニメのアフレコで一緒になって、その時にコミュニケーションがあったので。一緒に曲をできたら嬉しいなと思っていたんです。

ーーということは、ハマケンさんは花澤さんのオファーを受けて歌詞を書いたわけですよね。

花澤:基本的には、どの方にも、そのグループだったらどんな曲にしたいか、どういう歌詞をお願いしたいかを私から出す形だったので。在日ファンクだったら「京都」みたいな感じの曲調で「パン」がいいと。パンの魅力を歌っているパッションとファンクは絶対に合うと思うと力説した文章をお送りしたんです。「トングとトレーを持ってパンを選んでいる時が至福の時間」とかそういうワードを沢山送って。

ーー続いては、OKAMOTO'Sの「Change!」について。これもOKAMOTO'Sなりの30代突入みたいな疾走感とエネルギーを持った曲ですね。

花澤:ちょっとやんちゃな感じがいいですよね。私、もともと(オカモト)レイジ君と子役時代に一緒だったんです。『やっぱりさんま大先生』っていう番組で何年も一緒にレギュラーやっていて。

ーーずっと前のことですね。

花澤:二人とも子役だった時に一緒にやってたんで、レイジ君がOKAMOTO'Sでめちゃくちゃ頑張ってると知ってたので密かに応援してたんですよ。それで佐橋さんが「OKAMOTO'Sとかどう?」と言ってくださって、シングルを佐橋さんがプロデュースしてたことをそこで知って「そうなんですか!?」って。前にちょこっとリハーサルスタジオで再会はしてたんですけど、まさかここでお仕事一緒にすることになるとは思いませんでした。

ーー橋本絵莉子さんの「おとな人間」もOKAMOTO'Sのメンバーと一緒に録音したんですよね。

花澤:そうです。全然違うテイストなのに、どっちもすごくまとまっているし、格好いいし。すごいバンドだなって思いました。

ーー「ミトン」は岡村靖幸さん作曲、大貫妙子さん作詞の曲ですが、まず岡村さんの曲が来るっていうのも相当ビビったんじゃないかと。

花澤:ビビりました。佐橋さんが「書いてくれると思うよ」って言ったけど、嘘だろうと思って(笑)。どうなるんだろうなと思ってたんですけど、本当に書いてくださった。私はBase Ball Bearの小出祐介さんと岡村さんがコラボしてる「愛はおしゃれじゃない」がすごく好きで、そこから岡村さんのライブ映像を見たりとかして、なんてかっこいい方なんだろうって思ってたので。武道館ライブの前にも矢沢永吉さんと岡村さんのライブ映像を観てたんですよね。そういうお力も借りてたので。その方に書いていただけてすごく嬉しかったです。しかもめちゃくちゃ岡村さんの曲で。

ーー真島昌利さんの「満月の音」はどうでしょう?

花澤:やっぱり世界観がすごいですよね。私はもうずっとブルーハーツを聴いて育ってきたので、このコラボレーションは夢のようなんですけど。曲と歌詞を聞いて、これは私にはまだわからないところがきっと沢山あるんだろうなって思いました。もしかしたらおじさまにならないとわからないかもしれないなっていう(笑)。

ーー関取花さんの「おしえて」についてはどうでしょう?

花澤:前に関取さんがラジオで弾き語りでライブをされているのを聴いて、それがめちゃくちゃよくて。こんなすごい人がいるんだって涙が出てきちゃって。ラインナップは男性の方が多かったので、「関取さん、お願いできたら嬉しいです」って言ったんです。

ーー「ゆうのそら」はライブでコーラスをされているハルナさんとENA☆さんが書いた曲ですね。

花澤:今までいろんな曲調、いろんな種類の歌を歌ってきましたけど、こういう曲はまだやってなかったと思いました。しかも私自身ミュージカルをやった後なので、こういう歌を歌いたいなって思ってた時だったんです。佐橋さんとやるライブのメンバーをほぼ揃えていただいたので、もう勝手知ったるな感じでした。

ーーライブをやる中で生まれたファミリー感のようなものが音源にも入っている。

花澤:入ってると思います。

ーーそして、最後に花澤さんと佐橋さんで共作した「Tact」と「Ready to go」の2曲について聞ければと思います。パンチの強い曲が多いラインナップの中で、アルバムの聴き心地をしっとりとまとめてくれるような曲だと感じました。

花澤:そうですね。包み込んでくれる曲ですね。

ーー加えて、アルバム全体のメッセージ性という意味でも核になる2曲なんじゃないかと思ったんですが。

花澤:そうだと思います。今自分が思ってること全部出してる感じですね。

ーーこれはどういう風に作っていった曲なんでしょうか?

花澤:「Tact」と「Ready to go」もプリプロ段階で「こういう曲を作りたいんだよね」って、1番ぐらいまで佐橋さんが考えてくださったんです。それをみんなで聴きながら、どういう歌詞にしようかというテーマを出して、そこから私が考えて。それに音を合わせてみて。そういう作業を何回も往復してやってましたね。

ーー「Tact」は、それこそこのアルバムを作っていく光景が思い浮かぶような歌詞になっているように思います。

花澤:確かにそうですね。どういう風にこれから生きていきたいか、どういう風に仕事していきたいかを考えてるような感じですね。

ーー「タクト」には指揮棒という意味もありますが、それになぞらえるならば、指揮者として花澤さんが立っている、という風に見立てることもできる。

花澤:指揮をしてるのは私なんですけど、このメンバーが後ろにいてくれて目の前にお客さんがいるみたいな感じですね。 お客さんも一緒に、これからどういうふうに飛躍していきましょうかっていう感じですかね。

ーー「Ready to go」も、ある種アルバムのタイトルとつながった意味合いもありますよね。「ココベース」があるから行く準備ができている。

花澤:うん。そう、そんな感じです。「Ready to go」はもう使っちゃったしな、どうしようかな、何がいいかなって考えてる時に造語もありかと思って。

ーーアルバム『ココベース』が2月20日にリリースされ、30歳を迎える誕生日である2月25日に『HANAZAWA Concert 2019 Birthday Special -2019/02/25-』が開催されます。そういう意味合いも、全部繋がっている。

花澤:繋がってますね。ただ、30歳というのも大事ではあるんですけど、それよりもここからどうしていこうかというようなところを言いたかったので。私は本当に不器用なので、いろんな手を尽くして、いろんな角度から攻め入らないと物事が突破できないんですよ。だからそうやって、何をするにもグッと力を入れて、ぶち当たって過ごしてきたんですけど、もうちょっと肩の力を抜いて自信をもって、いろいろできたらいいなっていう思いを込めてますね。『ココベース』には。

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