『GALNERYUS 15th Anniversary ~Radiance~ The Notes Of Our Glory』
GALNERYUSはHR/HM界の至宝だーーEX THEATER ROPPONGIで目撃した“伝説の一夜”
この日のライブの醍醐味はこれ1曲に止まらず、ここから続く“ゲストボーカルリレー”では曲ごとに新たな発見と驚きを見つけることができ、その後に続くGALNERYUSのライブとの対比でさらにこのバンドの魅力を再発見することになる。
Fukiが「REASON」を歌い終えると、次のゲストをステージに呼び込む。続いては摩天楼オペラのフロントマン・苑が登場。この日のMCで自身を「ヴィジュアル系」と紹介した苑だが、摩天楼オペラのスタイルは間違いなくGALNERYUSにも通ずる正統派のメロディアスHR/HMだ。その苑が歌う「ここで区切れと天使は歌う」はSYUらしさと苑のハイトーンが掛け合わさることで、両者の個性がより強く表出する力作となった。苑は自身のバンドで歌う以上のハイトーンでこの曲を歌いきり、続く団長(NoGoD)へとバトンを渡す。
コミカルな風貌と巧みな話術で場の空気を一変させる団長だったが、いざ彼が歌う「Euphoria」が始まるとそのストロングスタイルの歌唱で観客のハートをわし掴み。SYUと団長のコラボレーションから生まれる、ほかとも異なる世界観は観る者に強い衝撃を与えていたようだ。そして最後のゲストボーカルは、TEARS OF TRAGEDYの紅一点・HARUKAだ。彼女はFukiとも異なる空気感でステージの雰囲気を華やかなものへと変え、「未完成の翼」を透明感のある歌声で歌い上げた。
各々の魅力が感じられたSYUのソロアルバムコーナーが終わると、メンバーは一度退出。しばしのインターバルをおいてから場内にSE「MEDITATION FOR THE SAGA」が流れ出すと、場内の熱気は再び高まっていく。再度ステージに現れたGALNERYUSの楽器隊がセッティングを終えると、ライブは「UNITED FLAG」から再開。ここからはGALNERYUSとして本格的なステージに突入する。
ついに登場した小野は、時にコミカルな動きで観客を和ませながらも、いざ歌い始めるとその圧倒的な歌声とテクニックで会場の空気を掌握する。ここからは「POINT OF NO RETURN」「QUIET WISH」など、初期の人気曲を連発。バンドはスリリングな演奏を交えながら小野のボーカルを支え、時にはテクニカルなソロプレイで自身の個性をアピールしていく。曲によっては個々の見せ場もしっかり用意され、改めてその技術力の高さを目前にしため息を漏らす瞬間も多々あった。
中でもはやり特筆すべきなのは、SYUの“ギターヒーロー”然とした佇まいと圧巻のテクニック/表現力だろう。今や死語となりつつある“ギターヒーロー”を2000年代以降、名実ともに体現し続ける彼の存在は、ここ日本のロックシーンにおいてとても貴重かつ重要なものではないだろうか。音数の多いギターソロでも弾き過ぎと感じることなく、その曲の中にそれが必要だから弾く。しかも、そこには機械的な速弾きギタリストとは異なり、古き良き時代の名プレイヤーに通ずるエモーショナルさもしっかり備わっている。そういったプレイヤーとしての個性/実力のみならず、ソングライターとしても非凡な才能を発揮するのだから……最初に述べた「日本が世界に誇る、HR/HM界の至宝」という表現は、もしかしたらSYUにこそ与えられるべき賞賛なのかもしれない。
そんなことを考えながらライブを楽しんでいると、ライブ序盤のSYUソロアルバムコーナーでは披露されなかった、小野の歌唱による「哀傷」が歌われる。GALNERYUSの要素がありながらも、どこか小野のソロ曲にも通ずるこの美メロバラードは会場を優しい温もりで包み込んだ。
スローバラードで小休止を入れたところで、ここからはライブも後半戦に。7弦ギターに持ち替えたSYUがひときわヘヴィなギターリフを刻むと、シングルのみに収録されたレア曲「ALSATIA」が飛び出す。GALNERYUSらしいクラシカルなスタイルに現代的なヘヴィメタルの要素を加えたこの曲で再び場の空気が一変すると、低音弦ならではの響きを活かした「BLAST OF HELL」、アイリッシュ民謡的なメロディが印象的な「THE TIME HAS COME」で観客の盛り上がりはピークへと向かい、本編ラストの「RAISE MY SWORD」ではオーディエンスのヘッドバンギングの嵐で最高潮を迎えた。
アンコールではメンバーの口から年内のアルバムリリースや新たなツアーを計画していること、さらには9月にアメリカ公演を行うことなどが明かされ、デビュー16年目に突入した今年も精力的な活動で我々を楽しませてくれることを約束。その後は「SILENT REVELATION」「HEAVENLY PUNISHMENT」と新旧の名曲を連発して、再び会場の熱気を高める。さらにダブルアンコールではゲストボーカリスト4名をステージに招き入れ、小野を含む5人で「DESTINY」を歌唱。多幸感あふれる雰囲気の中、この日限りの豪華なコラボレーションで2時間半にわたる“伝説の一夜”を締めくくった。
ハードロックやヘヴィメタルはメインストリームの音楽ジャンルとは言い難いが、そんな日本のシーンで15年以上にわたりメジャーで活動を続けてきたGALNERYUS。この日、ゲストシンガー一人ひとりが過去に観客としてGALNERYUSのライブを観たこと、一ファンとしてGALNERYUSの楽曲に励まされたこと、バンド活動を開始して初めてGALNERYUSと共演した喜びなどを口にし、改めてこのバンドが後続たちに与えた影響を認識することとなった。広いシーン全体で考えればその影響は微々たるものかもしれない。最初こそ孤軍奮闘だったかもしれないが、今はこうしてフォロワーも増えた。15周年は祝福すべき事実だが、今の彼らにとっては単なる通過点にしか過ぎない。GALNERYUSはこれからも、今までのように前進を続ける。そして、微力ながらも我々はその活動をバックアップしていけたら、この先も節目節目で素敵な“伝説”に出会うことができるかもしれない。
■西廣智一(にしびろともかず)Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。
■セットリスト
『GALNERYUS 15th Anniversary ~Radiance~ The Notes Of Our Glory』
2019年2月1日(金)EX THEATER ROPPONGI
SE. VORVADOS
01. REASON [Vo: Fuki]
02. ここで区切れと天使は歌う [Vo: 苑]
03. Euphoria [Vo: 団長]
04. 未完成の翼 [Vo: HARUKA]
SE. MEDITATION FOR THE SAGA
05. UNITED FLAG
06. POINT OF NO RETURN
07. RISE UP
08. QUIET WISH
09. 哀傷
10. ALSATIA
11. BLAST OF HELL
12. THE TIME HAS COME
13. RAISE MY SWORD
<アンコール>
14. SILENT REVELATION
15. HEAVENLY PUNISHMENT
<ダブルアンコール>
16. DESTINY [with:Fuki、苑、団長、HARUKA]