なぜ今、ジャネット・ジャクソンなのか ビヨンセやアリアナなどに影響を与えた“革新性”に迫る
2015年に自身のレーベル<Rhythm Nation>から約7年ぶりの復活アルバム『Unbreakable』を発表し、自身7枚目となる全米1位を獲得。そして第一子出産後の2018年には最新曲「Made For Now」をリリースするなどふたたび音楽シーンの前線に戻ってきたジャネット・ジャクソン。彼女が2月10日、11日に日本武道館で来日公演を行なう。近年のジャネット・ジャクソンは、2018年に『ビルボード・ミュージック・アワード(BBMAs)』で功労賞に当たるアイコン賞を受賞したほか、韓国/日本/香港で開催された『Mnet Asian Music Awards(MAMA)』でもインスピレーション賞を受賞。また、2019年3月に授賞式が行なわれる「ロックの殿堂」でもThe Cureやスティーヴィー・ニックス、Radioheadらとともに殿堂入りすることが決まっている。つまり今回の公演は、ジャネット・ジャクソンが音楽シーンに与えた功績に改めて焦点が当たるなかでの来日公演となる。
では、なぜ今ジャネット・ジャクソンなのか。まず考えられるのは、彼女のこれまでの活動が、近年活躍している女性ポップアーティストたちの最大の影響源となっていること。ジャネット・ジャクソンは、高い歌唱力とダンススキルでヒップホップ/R&Bをポップシーンに広めると同時に、人種問題を中心とした社会的なメッセージも積極的に発信してきた。こうした活動は、ビヨンセやリアーナ、レディー・ガガ、アリアナ・グランデ、ジャネール・モネイ、さらにはK-POPの女性ダンス&ボーカルグループといった多くの女性アーティストのひな形になっている。また、若手ダンサーを自身のバックダンサーとして積極的に起用し、欧米のポップシーンやK-POPシーンで活躍する様々なダンサー/振付師を世に送り出してきた側面もある。音楽面/パフォーマンス面での革新性や音楽カルチャーへの貢献度から、女性アーティストの活躍の場を用意した“イノベイター”として再評価されているのだろう。
実際、その活動を振り返ると、ジャネット・ジャクソンは時代ごとに新たな要素を取り入れている。初期2作で不遇の時代を過ごしたのち、プリンスのバックバンドのメンバーも務めたジャム&ルイスとの共同作業が始まった。3作目『Control』(1986年)と4作目『Janet Jackson’s Rhythm Nation 1814』(1989年)では、ジャネット自身も作品にアイデア面でかかわるようになり、ソウルにファンク、エレクトロ、ロック、インダストリアルなどを加えたポップミュージックを表現して一気にブレイク。なかでも『Janet Jackson’s Rhythm Nation 1814』の収録曲「Rhythm Nation」では、Sly & The Family Stoneの「Thank You (Falettinme Be Mice Elf Again)」をベースに“私たちはリズムネイションの一員”と人種差別や社会問題を越えて音楽で繋がることを歌い、よりアーティストとしてのメッセージ性を強めていった。こうした活動は、『The Formation World Tour』などのビヨンセとも重なる部分がある。
以降も作品ごとに音楽性を変えながら、11枚のアルバムを制作。『Unbreakable』では、自身の歴史をふまえた音にEDM/ベースミュージックの時代に呼応したビートやベース音を強調した新たなプロダクションを追加した。また、現時点での最新曲となる「Made For Now」(2018年)ではレゲトン界からダディー・ヤンキーを迎え、同曲をスペイン語で再録した「ラテンVer.」も発表。ルイス・フォンシ「Despacito ft. Daddy Yankee」などを発火点に盛り上がったラテン音楽の流行に焦点を当てるなど、今もなお新たな流行をキャッチアップする姿勢は失われていない。