K-POP2018年振り返り座談会前編

BTS(防弾少年団)、世界的ヒットの理由とブームの行方 K-POPライター4名が語り合う

BTSのブームは今後も続く?

ーーBTSの音楽性も人気の理由なんでしょうか。

まつもと:実を言うと、BTSがアメリカで人気が出た理由って音楽的にはうまく説明できていない。これまでも色々なK-POPアーティストがアメリカに進出してきていて、ようやく“アジア枠”ができた。そこにBTSが良いタイミングでハマったのではないでしょうか。今までのK-POPアーティストはアメリカにローカライズしようとして、最先端のサウンドを取り入れてうまくいかなかったですが、トレンドを気にせず、自分たちの母国語である韓国語で歌ったらヒットした。韓国語でビルボードで1位になったことが一番すごいことなんですよ。

桑畑:その前に「江南スタイル」(PSY)も韓国語でビルボード2位までいっているので。ちょっと耳慣れていたのかもしれませんね。あとはアーティストとのコラボも絶妙ですよね。誰々とコラボしてるから、というところから好きになった人は多いみたいですね。あとは「エレンの部屋」や「ザ・トゥナイト・ショー」などいつも見ているトーク番組にゲスト出演していたりとか。

DJ泡沫:アイドルとして先に好きになって、曲も良いじゃんってファンになるとか、その逆のパターンも多いと思うんです。それで両方ハマった時に熱狂的なファンダムが生まれるので、本人たちのキャラクターや素の表情も大事で。BTSはそういうコンテンツが本当に充実しています。YGエンターテインメントのアーティストが純粋な楽曲重視で、SMエンターテインメントがコンセプトとイメージ的なキャラクター重視だとしたら、BTSはその中間くらい。自分たちでも曲を作っているし、リアルなメンバー間の絆をコンセプトイメージとして売りにしたりも出来るという。

西門:絶妙な人間味が大事なんでしょうね。ビジュアルやサウンド、パフォーマンスなどが他のどのK-POPグループよりも優れているかというと必ずしもそうではない。でも、仲の良さは一番だと思います。そこにファンが想像できる物語があるのが良かったんじゃないでしょうか。

まつもと:僕は男ですけど、国連総会での演説を見たら、RMかっこいいな、と思いました。今、世界に風穴を開けているのはボーイズグループですよね。

DJ泡沫:以前は2NE1はじめ、ガールズグループの世界進出が盛んでしたが、BTSの存在でボーイズグループのファンのパワーの凄さがはっきりしたのかもしれません。スティーヴ・アオキも、BTSがここまで来たのはファンの力も大きいと。今はストリーミングの再生回数やハッシュタグの盛り上がりでも賞や1位が決まる時代になったので、ファンがどれだけ頑張るがダイレクトに賞に繋がるようになっている。逆に言えば、ファンを敵に回すと怖い時代になってきたんでしょうね。

ーーファンの力が巨大化しているというのは感じますね。他のグループでもイベントが中止になったりした例もありますし。

まつもと:それだけ人気があることの裏返しだと思います。世界で起こっているK-POPのムーブメントを日本がきちんと認識できていない、というズレもあって。まだ世界の動きに対してきちんとリンクできていないと感じます。

桑畑:RMの国連でのスピーチのツイートの下に「自殺しようと思いましたが、RMの声を聞いて思いとどまりました」というようなリプライが世界中から来ていたのも印象的でしたね。

DJ泡沫:2017から2018年は特にXXXテンタシオンやリル・ピープなど、アメリカのティーンの間でいわゆるエモラップが流行しましたよね。それに対してアイドルとしてはそういう部分に響く言葉を言ってくれる存在が不在だったのかも。BTSが歌う“10代の鬱屈”って、20年前から韓国アイドル業界ではよく歌われてきたことで決して新しいものではない。でも10代の悩みはどこの国でもいつの時代も変わらないから、同じメッセージでも響くんだと思います。韓国語でダイレクトに意味が分からないから好きな解釈の余地があって良いというのもあって、詩的にも味わえるし、言葉も魅力的に聞こえる。それは日本のK-POPファンもアメリカのファンも同じだと思います。

桑畑:ユニセフ含め、コラボレーションを上手くやって広い層にアピールしているのもすごいですよね。私自身、「K-POPの世界進出について知りたい」という仕事の依頼が来たりして、認知度が広まったな、と肌で感じました。あとは、2017年に、防弾少年団からBTSにグループ名を改めたのもあると思います。あの頃から着々と世界進出の準備を進めていて、表面化したのが今年の前半だったのかもしれないですね。

ーー彼らのブームは今後も続きそうでしょうか。

桑畑:メンバーはあと3年くらいしたら、入隊する可能性もありますよね。

DJ泡沫:2019年は弟グループがデビューするみたいで、それが1つのターニングポイントになるかもしれないですね。ただ、最近BTSを好きになったファンは他のK-POPには興味がないようなイメージです。ここが他のグループとちょっと違う。

まつもと:その論で言うと、BTSの人気が落ちたらもうアメリカでは次のK-POPグループの人気がやって来ないということになります。先ほども言ったように、僕は新しい“枠”ができたんだろうと思っています。だからそこに他のK-POPグループも入る余地がまだある。ただ、今まで弟分ってなかなか受け入れられてないから……。

DJ泡沫:そうですね。ただ、2016年ぐらいからBTSを好きな人たちは他のグループに流れていっているファンもいるので、他のグループがこれからくるという可能性は十分あると思います。

(取材・文=村上夏菜)

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