指原莉乃、HKT48や48グループ全体に残した功績 アイドル&タレントとしての独自性を振り返る

 また、指原はマスメディアに映る「指原莉乃」、「AKB48グループ」のイメージを気にするメンバーでもあった。ハロー!プロジェクトのオタクでも知られる指原は、AKB48加入前に2ちゃんねるユーザーとして名を馳せ、AKB48公式10年史『涙は句読点』でも「ネットとアイドルの関係性」について解説している。『笑っていいとも!』(フジテレビ系)の月曜レギュラーとして、タモリや香取慎吾らとともにトーク力を磨かれた指原は、現在、多くの番組レギュラー、準レギュラーを抱えるバラエティタレントとして成長。注目が集まる一方で、ネットニュースに扱われる頻度も増えていった。

 2016年に出演した『メレンゲの気持ち』(日本テレビ系)では、AKB48グループとして出演する際はアイドル、指原莉乃として出演する際は下ネタも毒舌も言える太田プロダクションのタレントとして棲み分けをしていると発言。度々Twitterではネットニュースにしてほしくない発言をきちんと明言しており、世間から見える指原莉乃像を気にしていることが見て取れる。

 タレントとして大成したのは、Twitterにも遺憾なく表れているそのコメント力と年配相手にも臆せず懐に入っていけるコミュニケーション能力の高さ。今回の卒業発表での「年号が変わるまで一生懸命アイドルとしてがんばりたい」という去り行く平成の時代と自身を重ね合わせた締めの言葉も、タレントとして満点のセリフであるように思う。

 卒業コンサートは2019年4月28日に横浜スタジアムで開催され、卒業後の5月28日にはマリンメッセ福岡で『指原莉乃11年ありがとう!大感謝祭』が行われる。指原にとってアイドルとして最後の出演となる『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)では、指原がセンターを務める国民的楽曲「恋するフォーチュンクッキー」をAKB48が披露することも決定しており、今後も卒業に向けて様々なセレモニーが続いていくだろう。卒業生の小嶋陽菜や山本彩が行なってきた劇場公演プロデュースも、後輩にバトンを繋ぐ意味で設けられるかもしれない。続投が決まっている『TOKYO IDOL FESTIVAL』でのチェアマンは卒業後の活動として、どのような立ち居振る舞いを見せるのかも注目だ。

 最後に、今回のグループ卒業を知り、思い出した指原の言葉がある。2017年8月に『あさイチ』(NHK総合)の「プレミアムトーク」にソロで出演した指原。アイドルを目指す視聴者から「アイドルに必要なものはなんですか?」と聞かれた彼女は「タイミング」と即答し、秋元康から教わった「チャンスの順番は気づいてないだけで巡ってきている。だから常にそのアンテナは張り巡らせないといけない」という言葉を代弁した。

 まさに今回の卒業は、巡ってきたタイミング。宮脇と矢吹がIZ*ONEに専任することで、このまま自分がHKT48に在籍していては、グループがより成長する機会を駄目にしてしまうと判断した上での決断だ。そのタイミングを見逃さないこともそうだが、きちんと有言実行して見せる指原に、アイドルとしての力量を感じさせる。そして、その指原の思いに応えられるかが、HKT48、そして48グループ全体の成長へと繋がる大きなターニングポイントになるのではないだろうか。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

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