東京スカパラダイスオーケストラ×THE BACK HORNが語る、“対バンの刺激” ホットスタッフ40周年記念対談

スカパラ×バクホン、“対バンの刺激”

大事なのはその瞬間にどんな表現ができるか(加藤隆志)

ーースカパラは来年30周年、THE BACK HORNは今年20周年。長いキャリアのなかで、音楽に対する意識が大きく変化した時期はありますか?

山田:どうだろう?

菅波:やっぱり、将司が前を向き始めたことかな。

谷中:いいね(笑)。後ろ向き時代の話も聞きたいけど。

山田:(笑)。ぜんぜん前を向いて歌ってなくて、ずっと後ろか、床を見てたんですよ。なぜか床をぶん殴って、骨折したこともあったし。

加藤:ホントに?!

山田:爆音のなかで暴れていて、床を殴ったら「ボキッ!」って音が聞こえて。いきなり冷静になって、ローディの人に「折れた」と伝えました(笑)。でも、大きく意識が変わったことはないかも。

菅波:徐々に徐々に。

山田将司

山田:うん。上京して、フルアルバムを出して、ワンマンをやって、ライブの規模が大きくなって。さっきも言いましたけど、少しずつ気持ちが開いてきて、「お客さんと向き合おう」と思うようになったんだと思います。

加藤:向き合う意識がないと続けられないですからね。短い期間に最大限の表現をして解散していくバンドもあるし、20年、30年と続くバンドもいて。どっちがいいという話ではなくて、大事なのはその瞬間にどんな表現ができるか?ということだと思うんですよ。ただ、音楽を鳴らし続けようとしたら、絶対に聴いてくれる人と向き合わなくちゃいけなくて。

菅波:そうですよね。

加藤:もちろん、バンドのなかの関係も大事で。これは最近出した「メモリー・バンド」という曲のテーマにもつながるんだけど、バンドの人間関係って不思議なんですよね。家族ではないし、かといって仕事仲間として割り切れるものでもなくて。

谷中:ただの友達でもないしね。友達であることは確かなんだけど。

加藤:そうなんですよね。音楽を鳴らす仲間なんだけど、続けていくうちに「一緒に生きていきたい」という気持ちになってきて。バンドとして音を鳴らし続けるためには、聴いてくれる人と一緒に何かを生み出すことも必要なんですよね。一番はもちろんライブなんだけど。

谷中:それぞれのメンバーがバンドのなかでーー人生をかけた仕事としてーー自己表現しなくちゃいけないんだけど、それがなかなかできないこともあるでしょ? あるメンバーが上手く自己表現できないときは、こっちから言えることは限られているし、ずっと待っていないといけなくて。

菅波:ありますね、そういうこと。それぞれが自分で超えないといけないこととか。

谷中:そうそう。そういう意味でも家族的なんだよね、バンドは。お父さんについていく時期もあれば、「最近は長女が家族を引っ張ってる」ということもあって。そういうことをバンド内でやってると思うんだけど、THE BACK HORNはどう?

山田:自然とやってるかもしれないですね。

菅波:「あいつ、張り切って突っ走ってるけど、ケガしねえかな?」とか(笑)。そういう支え合いはありますね。

谷中:そうだよね。スカパラのことで言うと、加藤はメンバーのなかで一番年下で。(加藤に向かって)一生、ずっと一緒にやるって俺は勝手に思ってるんだけど……。

加藤:はい。

菅波:うわ、アツい。

谷中:加藤は“谷中さん”って呼んでくれるんだけど、そのままだとおもしろくないと思っていて。“谷中”って呼び捨てにしてもいいし、下剋上してくれないと。バンドのなかで新しい何かを生み出そうとしたら、それしかないからね。だから、後から入った欣ちゃん(茂木欣一/Dr)や加藤が活躍しくれるのはすごく嬉しいんだよね。

加藤:……まあ、“谷中”とは言わないと思いますけどね(笑)。

菅波:(笑)。いま思ったんですけど、ずっとカッコいいバンドって、若い血を入れるのが上手いですよね。サザンオールスターズの『世に万葉の花が咲くなり』(1992年)というアルバムが大好きなんですけど、あのアルバムには小林武史さんがサウンドプロデューサーとしてガッツリ参加していて。小林さんは当時30代前半ですけど、おそらく桑田さんにもガンガン意見を言ったと思うんです。

加藤:なるほど。スカパラのことで言えば、下の世代の若いボーカリストと一緒にやることで刺激をもらってるんですよね。さっき話に出ていた片平里菜ちゃん、尾崎世界観くん(クリープハイプ)、斎藤宏介くん(UNISON SQUARE GAREDEN)もそうだし。

谷中:そうだよね。

加藤:スカパラは若いミュージシャンをしっかり受け止めてくれるんですよ。僕が加入したのは27才くらいのときだったけど、それまで僕は150人くらいのライブハウスでしか演奏したことがなかったのに、いきなり何千人の前でやるわけじゃない? とにかく目立ってやる! と思ってたし、GAMOさんがソロを取ってるときに、その前に出ていってギターを弾いたり(笑)。そういうときもメンバーは「やれやれ!」って言ってくれてましたからね、みんな。

加藤隆志

谷中:そのほうがおもしろいからね。TAKUMA(10-FEET)が参加してくれたときも、ガツガツ意見を言ってくれて、それが良くて。レコーディング当日にサビの歌詞を丸ごと変えてきて「こっちのほうがいいと思う」って提案してくれたんだよね。思っていたのとはぜんぜん違ったけど、「そう来たか」という刺激があって。

菅波:いいですね! 2015年にスガシカオさんのバンドに参加して夏フェスを回ったことがあるんですけど、ジャンルも違うし、最初はちょっと遠慮してたんです。そしたらスガさんに「らしくねえ。いつも通りやれ」って言われて。「よし!」と思って、ギターソロでもないのにスガさんの隣でガンガン煽ったら、「それだよ!」って喜んでくれたんですよね。

谷中:いいね。

菅波:さっき尾崎世界観の名前が出てましたけど、俺、「めくったオレンジ(feat.尾崎世界観)」も大好きで。間奏でダブになるじゃないですか。あれを聴いたとき「うわ、本物だ」と思って。俺らも「フラッシュバック」という曲の後奏でドラムをダブミックスしたことがあって。自分たち的にはアガッたんだけど、ファンにはあまり人気がないみたいです(笑)。

谷中:スカの要素を入れてる曲もあるよね?

山田:ありますね。ギターの裏打ちを取り入れたり。

加藤:Radioheadにもダブを取り入れた曲があるけど、ロックバンドがスカやダブをやるカッコ良さってあるからね。リミックスとかも良さそう。

菅波:やってみたいですね、それは。

ーースカパラとTHE BACK HORNは共通する部分も多いし、対バンやコラボレーションにも期待したいです。

加藤:ぜひやりたいですね。この前の武道館のイベントもそうだし、こうやって話していてもそうだけど、みんながTHE BACK HORNを好きになる理由がよくわかりました。音楽愛がハンパないんだよね。

谷中:そうだね! 観に行きたいな、武道館(2019年2月8日に開催される日本武道館ワンマンライブ)。やっぱりワンマンを観ないとね。

ーースカパラの30周年はどうなりそうですか?

加藤:そうだよね。(ホットスタッフ・プロモーションの石川純氏に向かって)僕らはどこでやるんですか?

石川:鋭意、選定中です。

谷中:せっかくだから石川くんも何かひとこと言ってよ。

石川:え、いいんですか?

谷中:もちろん。スカパラにもTHE BACK HORNにも関わってるんだから。

石川:では、ひとこと言わせていただきます。スカパラは社内の異動で担当させてもらうことになったんですが、ライブ制作に関わらせてもらって感じたのは、スカパラはロックバンドであるということなんですね。これだけの本数をこなしながら、1本1本のライブに真摯に向き合っていて。その姿勢に惚れました。

加藤:おお、ありがとう。

石川:後輩のバンドにはぜひ、スカパラの背中を追ってほしいなと思います。THE BACK HORNはインディーズ時代の最初のワンマンライブのときからずっと一緒にやっていて。私は自分より年下のバンドはほとんど認めないんですよ。年下のバンドに「生きろ」とか言われても感動しない人間なので。

谷中:ハハハハハ! おもしろいな、それ(笑)。

石川:ところがTHE BACK HORNだけは別で。初めてライブを観たのはフジロックの新人ステージ(フジロックが苗場に開催地を移した1999年、ROOKIE A GO-GOの前身であるLevi’s NEW STAGEに出演)だったんですが、本当に感銘を受けて。じつは別のスタッフが担当することになっていたのですが、ムリを言って、代わってもらったんです。

山田:ありがたいです。

石川:当時の彼らは闇を表現しているバンドだったから、大衆受けはしないだろうなと思っていたんですよ。でも、様々なステージを重ねるにつれ、特に2011年の3.11以降、生の表現に説得力が増してきて。内面のドロドロとした深い部分、そこから上を見たときの光を描くことのバランスに、より真実味を感じられるようになってきたんですよね。

ホットスタッフ・プロモーション 石川純

谷中:素晴らしい。武道館のイベント前後から、石川くんの「THE BACK HORNとスカパラをつなげたい」という意志がガンガン伝わってきてるんだよね。

加藤:うん。こういう場を設けてもらって良かったです。絶対、何か一緒にやりましょう。

山田・菅波:よろしくお願いします!

(取材・文=森朋之/写真=林直幸)

ホットスタッフ・プロモーション40周年イベントオフィシャルサイト

■『40th Anniversary Magazine HOT STUFF HISTORY』
創立40周年のホットスタッフ・プロモーションが手がけたライブの記録を記したムック本「40th Anniversary Magazine HOT STUFF HISTORY」が10月25日に発売。
【コンテンツ】
・HOT EYE/1978年のホットな話題を集めてみた
・MASAKA ライブ直前インタビュー/YUKI、岡村靖幸、きゃりーぱみゅぱみゅ、けやき坂46、東京スカパラダイスオーケストラ他
・原宿70’S
・1978~2018のライブの歴史
・HEADZ、FUJI ROCK…ホットスタッフが手がけたイベント・フェス
・アラフォー世代に送るコラム集/音楽デバイス、紅白歌合戦、バックステージパス…etc

タイトル:40th Anniversary Magazine HOT STUFF HISTORY
ページ数:172ページ
出版社:マガジンハウス
価格:1500円(税込)
発売日: 2018年10月25日(木)

■東京スカパラダイスオーケストラ
リリース情報
『明日以外すべて燃やせ feat.宮本浩次』
11月28日(水)
CD+DVD:¥2,484(税込)
CD ONLY:¥1,080(税込)

<CD収録内容>
M1.明日以外すべて燃やせ feat.宮本浩次
M2.Are You Ready To Ska?
M3.砂の丘~Shadow on the Hill~ Live at 川口総合文化センター リリア(from 2018 TOUR「SKANKING JAPAN」”めんどくさいのが愛だろっ?”編)

<DVD収録内容>
1.明日以外すべて燃やせ feat.宮本浩次(Music Video)
2.2018.9.29 川口総合文化センター リリア公演ドキュメント from 2018 TOUR「SKANKING JAPAN」”めんどくさいのが愛だろっ?”編
※「サザンクス筑後、ユメニティのおがた、オリンパスホール八王子、犬山市民文化会館公演に来る人は絶対に観てはいけないビデオ」閲覧・ネタバレ注意
3.Opening Movie from 2018 TOUR「SKANKING JAPAN」”めんどくさいのが愛だろっ?”編

オフィシャルサイト

『ALL INDIES THE BACK HORN』

■THE BACK HORN
リリース情報
『ALL INDIES THE BACK HORN』
発売:2018年10月17日(水)
価格:¥3,300(税抜)
<初回プレス分>三方背ブックケース仕様 / ライブ会場限定特典引換券封入
【CD収録内容】全21曲
Disc-1
01. ピンクソーダ
02. カラス
03. 冬のミルク
04. 魚雷
05. 雨乞い
06. 怪しき雲ゆき
07. 晩秋
08. 何処へ行く
09. 風船
10. ザクロ
11. 桜雪
Disc-2
01. サーカス
02. 走る丘
03. 新世界
04. リムジンドライブ
05. 無限の荒野
06. 甦る陽
07. 茜空
08. ひとり言
09. さらば、あの日
10. 泣いている人
※以下5曲は、再レコーディングを行なった既発済楽曲。
「冬のミルク」(2008年1月発売『BEST THE BACK HORN』収録)
「ザクロ」(2013年9月発売『B-SIDE THE BACK HORN』収録)
「桜雪」(2013 年9月発売『B-SIDE THE BACK HORN』収録)
「無限の荒野」(2017年10月発売『BEST THE BACK HORNⅡ』収録)
「泣いている人」(2017年10月発売『BEST THE BACK HORNⅡ』収録)
それ以外の16曲は、今作のために改めてレコーディングを行なった新録音源。

オフィシャルサイト

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