きゃりーぱみゅぱみゅ×中田ヤスタカ対談 アルバム『じゃぱみゅ』解説&デビューから7年間の変化

きゃりー×中田ヤスタカ『じゃぱみゅ』対談

6曲目:ちゃみ ちゃみ ちゃーみん 

きゃりー: 6曲目が「ちゃみ ちゃみ ちゃーみん」。最初、鈴の音ですか?

中田:あれは、客の出入りが多い喫茶店をイメージしていて。

きゃりー:あ〜、そうなんだ。

中田:『おもちゃの楽器集』みたいな音を集めていて。ちょうど合うやつがあって。曲が終わった後、すぐ音楽的にまた楽器の音が“ふぁっ”と鳴るより「ん?」っていう時間が曲と曲の間にほしかったんだよね。それで最後に加えたの。

きゃりー:なるほど。あれがすごい物語のはじまりっぽくて好きでした。

中田:そうそう、せつないイントロでしょ。

きゃりー:せつないせつない。しかも、中田さん「何かはじめようとしてるんだけど、まだ何もしてない人の歌だよ」みたいに言ってたじゃないですか。そこらへんもすごい自分と似ていて。「キミに100パーセント」もそうなんですけど。わたし、もっと英語とか勉強したらワールドツアーとかよくなると思うんだけど、結果何もしないタイプだったりするので。すごい自分っぽくて好きです。

中田:そんなに頑張れないじゃん? でもアイデアはあったりするじゃん。思いついたことを寝る前に妄想して実現しているイメージで寝るみたいな。思い描いてるときの楽しみってあるよねっていう感じです。

7曲目:演歌ナトリウム 

中田:そして、やるやる言ってなかなかやらなかった「演歌ナトリウム」がついに完成しました。

きゃりー:何年越しですか。3年越しぐらい?

中田:3年前ぐらいに冗談半分に「『演歌ナトリウム』っていう曲を作ろう!」みたいな、タイトルだけ先に決めてね。ご飯食べながら思いついたみたいな(笑)。今回ついに実現したという。

きゃりー:そう。でも3年前に中田さんが言ってたのは「演歌とダブステップが混ざると面白い!」って言ってたんですけど、今回ガチに元素記号の歌詞になって。

中田:しかもラップだった。

きゃりー:そう(笑)。でもすごい可愛いし。覚えるのが本当に大変でしたね。レコーディングの時もうまく歌えないぐらい早いし、難しくて。親しみがないワードっていうのが難しかったんですよ。リバモリウムとか普段言わないじゃないですか(笑)。

中田:普段使わない言葉だけを覚えていくっていう。

きゃりー:そうそう。それがすごい難しいなと思ったんですけど、ライブですごい盛り上がってます(笑)。

中田:ははは(笑)。歌詞を元素周期表みたいにしようと思って。ネットで調べながら順番に打ち直してる時に「きゃりーさん、これ覚えるの大変だろうな」って(笑)。

きゃりー:印象的だったのが、レコーディング中と完成後で「演歌ナトリウム」のアレンジを変えてきたじゃないですか? それもすごい楽しめました、わたし的には。

中田:レコーディング中のアレンジはもっと和風だったかもね。

きゃりー:もっと演歌寄りだったんです。それが、すごいオシャレな音になりましたね、テンテンテレテン♪

中田:そうそう。「音ノ国」が和風になったからね。アルバムの曲順が、あの時点では決まってなくて、曲を並べながら作ってたから。ここで「演歌ナトリウム」を和にするより、逆にそこで「お?」ってなる方が面白いかなと。

きゃりー:オシャレ。

中田:途中、アレンジがガラッと変わって、ちょっと演歌っぽい歌い方みたいなやつ、あそこですごい異次元に行く感じにしたくて。今までも、ちょっと箸休め的な曲はあったかもしれないけど、ライブでも盛り上がる曲になったのははじめてかもしれない。

きゃりー:レコーディング中に、演歌っぽく歌う部分で中田さんが急に動画を再生して「イメージこんなんで」とか言って。演歌歌手の方がこぶしをきかせて歌ってる動画を流してくれて。「はい、じゃあ録りま〜す」みたいな感じで。「ええっ!?」ってなって。

中田:きゃりーは勘が良いから「こういう声がほしいんだろうな?」みたいなやつをすぐやってくれるから。

きゃりー:本当ですか?

中田:すごい「おー!」って笑ったから(笑)。

きゃりー:「こぶし、こんな感じですかね?」みたいな(笑)。

中田:楽しかったね。

きゃりー:そうですね。わたしあの曲で歌詞以外に「セイ!セイ!」っていうのを言ってて。アルバム発売前のライブの時にやったんですけど、お客さんみんな言ってくれて。すごい盛り上がると思いました。

8曲目:恋ノ花 

きゃりー:「恋ノ花」は、初期capsuleのカバーで驚きました。

中田:思い出したようにすごい前の曲だけど、アルバムの流れでちょうどいいなと思って。2001年の曲だからね。

きゃりー:歌詞も相当いいですね。あらためて歌って聴いて、やっぱり本当すごいです。ずっとすごいんですね、中田さんって。

中田:いやいやそんな(笑)。歌詞で、ですます調がめずらしいと思って。「なんとかでしょ」とか「だわ」とか女の子の普通のやつをむしろ強調してるぐらいで書いていて。

きゃりー:美しい。

中田:その感じがいま逆に新鮮かなと思って。

きゃりー:新鮮ですね。手紙っぽいというか。

中田:アルバムの中でもすごい合うというか。僕が10代後半の頃、和風の曲を作るのにハマって。

きゃりー:えっ、10代の頃の曲なんですか?

中田:20年ぐらい前に作った曲だね。

きゃりー:すご。

中田:そう思うと、このタイムワープ感がすごい面白いなと思って。サウンドは全然違うけどね。

きゃりー:ちょっと歌詞を変えたって言ってましたっけ?

中田:ちょこっとだけ響きの問題で変えたね。今だったらこうするっていう。内容変えるわけじゃなくて。本当ちょっとだけ。

きゃりー: capsuleファンとしては嬉しい反面、カバーってやっぱりすごい緊張するんですよ。好きすぎて。カバーすることに対してのプレッシャーがありました。あと聞きたかったんですけど、これなんで一発録りだったんですか?

中田:最初から歌えていたからね。

きゃりー:あ〜、曲を知っていたからってことか。

中田:そう。そのまま録ったほうがいい感じかなと思って。

きゃりー:なるほど。それ今までになかったので新しかったです。

9曲目:とどけぱんち 

きゃりー:9曲目が「とどけぱんち」。カワイイです、この曲。ストレス社会に向けて。

中田:ライブで楽しそうだったよね。

きゃりー:楽しい楽しい。

中田:「えいや、は〜!」みたいなやつ。

きゃりー:サウンドはちょっと昔っぽいですか? 80年代っぽいのかな?

中田: 90年代かな。80年代の時に活躍したアレンジャーが、90年代でまだ活躍してるって感じだね。

きゃりー:細かっ。最初の〈と、と、とろけ〜る〜〉のところのメロディとかマジでトリップするんじゃないかってぐらい変わっていて楽しい曲です。

中田:音階がすごいところまでいってるかも。これ「良すた」のカップリングだったんだよね?

きゃりー:そうだそうだ。

中田:でも、こっちの方が今回のアルバムに合うなと思って。

きゃりー:そうですよね。「良すた」じゃなく「とどけぱんち」の方が映える。

中田:そうしてみました。

10曲目:最&高 (Album Edit) 

きゃりー:そして最後が「最&高」のアルバムエディットということで。最初イントロが長くて歌わずっていう。新しいと思いましたが、何かイメージあったんですか? 

中田:これは、コンサートの最後の最後に盛り上がる曲のインストバージョンを流しながら、スタッフロールが流れているみたいなイメージですね。だけどやっぱり歌うみたいな(笑)。もともとフィナーレ感ある曲だったから、さらなるフィナーレ感を増した感じです。

瞬発力を大事にした、アレンジへのこだわり 

きゃりー:全曲を解説していただきました。今回、アレンジの幅も広いですよね?

中田:きゃりーの曲は、いままで自分が好きだったもの、いま自分が好きなものとか、時系列を絞っていなくて。だから「恋ノ花」もカバーするし。今回チップチューンっぽいテイストも多めに入れていて。いまやりたいアレンジというよりも、それに耳がいくようにわざと作ってみたっていう。

きゃりー:すごい。本当にいろんなこと考えて作っているんですね。

中田:考えてないからそうなったかもしれないけど(笑)。その場その場の瞬発力が大事だと思ってて。いま閃いたことをやれるのが一番いいみたいな。何カ月も前に決めたことを準備して、でも、そうじゃないかもと思った時に、そっちを選べるような気持ちで作ってるから。自分の中でわちゃわちゃしてるんだけど、でもこれだっていう一番テンションが高いところを今回パッキングできた気がするからアルバムとしてまとまっていると思う。

きゃりー:制作中は、夜とか眠れるんですか? アドレナリンとかすごそう。

中田:レコーディングした日はすごいね。とりあえず今日こんな感じに録りましたみたいなやつってあるじゃん? それを寝る前に聴きながら寝ようかなと思うんだけど、何度も聴き直して「どうしようかな?」みたいな感じになっちゃって。もう1回Macを開いちゃったり。

きゃりー:なるほど。すごいいろんなところまで思いが詰まってて。ありがとうございます。

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