BUMP OF CHICKENが描く“ドラマチックな旅” 『億男』主題歌のサウンドと歌詞から考える

 <持て余した手を 自分ごとポケットに隠した/バスが来るまでの間の おまけみたいな時間><ガムと二人になろう 君の苦手だった味>から始まり、<ガムを紙にペってして バスが止まりドアが開く>で終わる。ここからはあくまで筆者の勝手な推測だが、このバスを待っている間に刺激された、聴覚<街が立てる生活の音に>、味覚<君の苦手だった味>、視覚<往復する信号機>、触覚<肌を撫でた今の風が>、嗅覚<夏の終わる匂い>という五感と共に、ふと君を思い出す。君との思い出を辿るけれど、忘れてしまったことも多くて、すべての記憶が蘇ることはない。だから、君と話がしたい。でも、君を思い出したことで、自分の中で改めて気づいたことがあり、ポケットに隠していた自分をガムと一緒に紙に吐き出した。そしてバスのドアと共に、さっきまで自分が向かおうとしていた場所とは違った世界がひらく。といったドラマが描かれているように感じた。このバスを待っている時間だけで、素朴だがドラマチックな物語が展開され、見事に起承転結しているのだ。

BUMP OF CHICKEN「話がしたいよ」MV

 『億男』で、一男と九十九が、1と99で2人あわせて100パーセントのように、自分一人では気づけなかった何かを、君という存在があったからこそ見つけることができる。私たちが気づいていない“お金と幸せ”の正体もまた、映画『億男』とBUMP OF CHICKENが誘う旅を通して見つけることができるかもしれない。

(文=戸塚安友奈)

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