カイゴ、“トロピカルハウスの旗手”が持つソングライターとしての才覚 ベスト盤発売を機に考える
2018年以降の最新モードを伝える楽曲としては、海外ではデジタル&ストリーミング配信のみの形態だったため初CD化となるImagine Dragonsとの「Born To Be Yours」と「Remind Me to Forget ft. Miguel」の2曲を収録。「Remind Me to Forget」では、うっすらとヒップホップ/R&Bの影響がうかがえる音が加わっていて、カイゴのさらなる進化を感じさせるものになっている。
そうしたこれまでの歩みを改めて聴いて感じるのは、彼がクラブミュージックのプロデューサーでありながら、むしろその本質はポップミュージックにおける優れた「ソングライター」であるということだ。実際、筆者が現時点での最新アルバムとなる2作目『Kids In Love』に際して話を聞かせてもらった際には、ジャンル/年代を問わず様々なポップ職人の名前を挙げながら、「トロピカルハウスは自分の音楽性のひとつではあってもすべてではない」と語ってくれていたが、ビッグルームハウスを筆頭に「上げて」「落とす」音の落差を際立たせてクラブミュージックの快楽原則を追求したEDMのメインストリームとは異なり、カイゴの楽曲には一貫してEDM由来のドロップと普遍的な歌メロとをよりスムーズに繋ぎ合わせるような感覚があり、それが夏らしいシンセと相まってトロピカルハウスの“チルアウト”する感覚に繋がっていた。
そのルーツと言えるのが、ドキュメンタリー作品『Stole the Show』で父が回想する、小さい頃熱心に弾いていたピアノだったと考えると、彼が初期から追求していたのは、やはり普遍的なソングライターとしての魅力だったのだろう。その雰囲気はジャンルを横断する形で日に日に増し、現在ではミゲルを筆頭にしたモダンR&Bのスターを筆頭に、メインストリームからアンダーグラウンドまであらゆる音楽性を飲み込んだものに発展している。ジャンルも出自も、知名度も多岐にわたる本作のゲスト陣の顔ぶれを見れば、その特異性を改めて感じることができるはずだ。
ジャケット写真はカイゴのライブセットから見渡した会場の景色=観客の姿になっており、ここからも、この作品が自分の音楽を聴いてくれるリスナーのために向けて作られたことが伝わってくる。トロピカルハウスでのブレイクを経て、世界を回り、その中での経験を反映させた『Kids In Love』発表以降はさらにジャンルの壁を越えたサウンドを馴らしつつある彼のキャリアが、本人の選曲によってまとめられたこの作品は、目前に迫る日本での初の単独公演を前に、現在のカイゴの音楽の幅広さを伝えてくれる作品と言えそうだ。
■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。
■リリース情報
『HITS COLLECTION 2018 -JAPAN ONLY EDITION-』
発売中
¥2,200+税
解説&歌詞対訳付き
ブックレットに本人メッセージ・コメント入り
<収録内容>
1. It Ain’t Me (Kygo & Selena Gomez) | イット・エイント・ミー(カイゴ&セレーナ・ゴメス) Composed by Kygo, Brian Lee, Ali Tamposi, Selena Gomez, Andrew Watt / Lyrics by Brian Lee, Ali Tamposi, Andrew Watt / Produced by Kygo, Andrew Watt
2. Born To Be Yours (Kygo & Imagine Dragons) | ボーン・トゥ・ビー・ユアーズ(カイゴ&イマジン・ドラ ゴンズ) Composed by Dan Reynolds, Wayne Sermon, Ben McKee, Daniel Platzman, Kygo / Lyrics by Dan Reynolds, Wayne Sermon, Lyrics by Ben McKee, Daniel Platzman, Kygo / Produced by Kyrre Gørvell-Dahll
3. Stole The Show feat. Parson James | ストール・ザ・ショウ feat. パーソン・ジェームズ Composed by Kygo, Ashton Parson, Kyle Kelso, Michael Harwood, Mali Harwood, Vocal Arranger Kyle Kelso / Lyrics by Ashton Parson, Michael Harwood, Marli Harwood / Produced by Kygo
4. Firestone feat. Conrad Sewell | ファイアーストーン feat. コンラッド・スーウェル Composed by Kygo, Conrad Sewell, Martijn Konijnenburn / Lyrics by Conrad Sewell, Martijn Konijnenburg / Produced by Kygo
5. Remind Me To Forget feat. Miguel | リマインド・ミー・トゥ・フォーゲット feat. ミゲル Composed by Alex Oriet, David Phelan, Phil Plested, Kyrre Gørvell-Dahll, Miguel Jontel Pimentel / Lyrics by Alex Oriet, David Phelan, Phil Plested / Produced by Kygo
6. First Time (Kygo & Ellie Goulding) | ファースト・タイム(カイゴ&エリー・ゴールディング) Composed by Kygo, Henrik Meinke, Jonas Kalisch, Alexsej Vlasenko, Jeremy Chacon / Lyrics by Sara Hjellström, Fanny Hultman, Jenson Vaugn, Ellie Goulding / Produced by Kygo
7. Stay feat. Maty Noyes | ステイ feat. マティー・ノイエス Composed by Kygo, Maty Noyes, William Larsen / Lyrics by Maty Noyes / Produced by Kygo, William Larsen
8. Stargazing feat. Justin Jesso | スターゲイジング feat. ジャスティン・ジェッソ Composed by Kygo, Justin Stein, Jamie Hartman, Stuart Crichton / Lyrics by Kygo, Justin Stein, Jamie Hartman, Stuart Crichton / Produced by Kygo
9. Carry Me feat. Julia Michaels | キャリー・ミー feat. ジュリア・マイケルズ Composed by Kygo, Julia Michaels, Justin Tranter / Lyrics by Julia Michaels, Justin Tranter / Produced by Kygo
10.Stranger Things feat. OneRepublic | ストレンジャー・シングス feat. ワンリパブリック Composed by Kyrre Gørvell-Dahll, Ryan Tedder, Casey Smith / Lyrics by Ryan Tedder / Produced by Kygo
11.Raging feat. Kodaline | レイジング feat. コーダライン Composed by James Bay, Derek Fuhrmann, Mark Williams, Kygo, Steven Garrigan / Lyrics by James Bay / Produced by Kygo
12.Nothing Left feat. Will Heard | ナッシング・レフト feat. ウィル・ハード Composed by Kygo, Will Heard / Lyrics by Kygo, Will Heard / Produced by Kygo
■ライブ情報
KYGO KIDS IN LOVE TOUR 来日公演
日時:10月27日(土)
OPEN 15:00 / START 16:00
会場:さいたまスーパーアリーナ
SPECIAL GUEST: ドン・ディアブロ / ジャスティン・ジェッソ / TJO
<チケット情報>
アリーナ・スタンド自由: 9,000円(税込)
GOLD チケット: 16,000 円(税込/特典付) SOLDOUT
企画・招聘・制作:クリエイティブマン
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