輝夜 月、未知の体験尽くしな1st VRライブ 仮想空間のライブハウスに舞台表現の最先端を見た

 歓声に答えた輝夜 月は宙に浮いた大きなエビフライにまたがって再登場。ここからはトークタイムとなり、あらかじめTwitterで募集していた質問に答えていった。会場を自由に浮遊しながらトークを進める輝夜 月と、即座にエモーションを返す観客たちのやり取りが楽しい。エモーションには今回のライブ用にエビーバーやパブロッコリーのアイコンが用意されており、観客達は思い思いのエモーションを送信していたのだが、エビフライのエモーションを送った数に応じて、ステージ上にあるエビーバーのアイコンがどんどん膨らんでいく、という演出があり、観客たちがエビフライを連打した結果、会場上空を覆うほど巨大なエビーバーが誕生、輝夜 月も慌てふためくなかで突如大爆発。彼女の「死んだ……(笑)」という声とともに会場は白い光に包まれた。

 再び会場の全貌が映し出されると、舞台中央にはなんとエビーバーと合体した輝夜 月が。再度流れ出す「Beyond the Moon」に会場が揺れる。ライブらしく一部の歌詞を変え、「今日からみんな友達だ!」と声を張った。最後には会場上空に夏の終わりを飾る花火が打ち上げられ、大爆発とともにステージは白い煙に包まれた。

 煙が晴れると、そこに映し出されたのは爆発で吹き飛んだステージの残骸だ。屋根が吹き飛んだZepp VRの外は、仮想空間「Beyond the moon」。地平は月面のようにも見え、彼方には地球の姿もある。宇宙をじっと見ていると、「KAGUYA LUNA Live@Zepp VR "Beyond the moon" 2018.0831 Thank you for Coming today!」の文字が現れ、輝夜 月の声がライブ終演を告げる。「現実にお帰りください」と楽しそうに言う彼女の声でライブは終了した。

 歌あり、トークあり、最後には大爆発と、快活であっけらかんとした輝夜 月らしいファーストライブを楽しめた。ライブ全編を通して、彼女の「感謝」を感じられたのも印象的だ。

 これまでも、仮想空間に暮らすキャラクターが現実世界のシステムに則ってライブを行うことは数多くあった。例えば初音ミクの場合には『マジカルミライ』プロジェクトでライブを行っているし、任天堂のゲーム『スプラトゥーン』に登場するアイドルユニット「シオカラーズ」もニコニコ超会議でライブを行った過去がある。しかし、これまでのVR・ARライブが「キャラクターたちが現実世界にやってきてライブを行う」という形を取っていたのに対して、今回のライブは「観客が仮想空間に赴いてライブを楽しむ」という形で行われた。

 仮想空間でのライブは世界初の試みとだけあって、これまでの"劇場体験"とは全く違うものだった。どこまでもせり上がる舞台はやがて空を舞い、輝夜 月はステージから開放されて縦横無尽に飛び回った。観客の送るエモーションはリアルタイムで反映され、演者もそれを確認できる。エモーションに応じてどんどん巨大になるエビーバーが目の前で爆発すると、早着替えが終わり、最後には会場ごと大爆発……いずれも今までのライブでは不可能な未知の演出であり、舞台表現の最先端にあることは間違いないだろう。観客がこの体験を同空間で共有できることの価値は計り知れない。

 また、これらの強烈な演出が、次回以降のライブでさらに研ぎ澄まされるのも楽しみだ。輝夜 月に限らず、他のバーチャルYouTuberもライブをすることになれば、ますます仮想空間でのライブの可能性は広がるだろう。VRライブは無限の拡張性を秘めている、そう思えるライブを見られたことに感謝しつつ、今回、ライブビューイングでの参加となったことが少し悔しい。次のライブは絶対VRグラスを着けて参加したい! と思える体験だった。

(取材・文=白石倖介)

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輝夜 月 LIVE @Zepp VR LIVE VIEWING情報サイト
輝夜 月 公式 Youtube
輝夜 月 公式 Twitter  

(c)Kaguya Luna/SACRA MUSIC 2018

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