Awesome City Clubのバックグラウンドにある幅広い音楽地図 今夏の新曲プレイリストから紐解く

 一時期は「シティポップ」という言葉が一人歩きしていた感もあるが、こうしたプレイリストを見てみると、ACCのバックグラウンドにある幅広い音楽地図がよくわかるというもの。そして、それはブラックミュージックのモダナイズ、あるいはクロスオーバー化といった2010年代の世界的な潮流とシンクロしつつ、KIRINJIや大橋トリオといった先達の歩みを踏まえ、日本におけるMr.Childrenや斉藤和義ばりのポピュラリティをも感じさせるという、ACCの特異なポジションを改めて浮かび上がらせるものでもある。

 8月22日には、配信シングルの第二弾として『8月とモラトリー』を発表。こちらもクラップを配した小気味いいリズムと、シンセのレイヤーを組み合わせ、レトロとモダンが混在する現在のモードをさらに印象付ける一曲に仕上がっている。一方、歌詞に関しては、〈君〉とのこれからを夏の始まりと重ね合わせていた「SUNNY GIRL」に対し、過ぎていく季節に対するメランコリーが綴られているが、atagiはこの曲についてTwitterで「僕がオーサムを始める前にソロでやっていた『青春の日々』という曲を、オーサムでやる為に歌詞やアレンジを手直しして作った」と記している。

 8月27日に渋谷WWWにて開催された『Welcome to AwesomeCITY Vol.0』は、昔から繋がりのある仲間を集めたイベントでもあり、当日「8月とモラトリー」を披露する際は、この曲が彼らと過ごしたライブハウスでの日々をモチーフにしていると話してもいた。過去には雪景色のミュージックビデオも印象的な「青春の胸騒ぎ」という曲を発表し、現在では冬の定番曲となっているが、「8月とモラトリー」もまた夏の定番曲として愛されることだろう。

 なお、ACCは9月も毎週のように全国のフェス/イベントへの出演を予定。「SUNNY GIRL」と「8月とモラトリー」の2曲によって、様々な感情が交錯する、特別なダンスフロアが作り上げられるはずだ。

■金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『ナタリー』『Real Sound』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』『bounce』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。

■リリース情報
Awesome City Club『SUNNY GIRL / 8月とモラトリー』(7インチ盤)
発売日:11月3日(土・祝)
価格:1,600円(+税)

※iTunes Store、Spotifyほか主要配信サイトおよび定額制聴き放題サービスにて、配信中。
※プレイリスト「ACCの新曲『SUNNY GIRL』を知るための10曲」公開中。

■関連リンク
Awesome City Clubオフィシャルサイト

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