『LUNATIC FEST. 2018』は2回目にして“安心高品質フェス”に 市川哲史がその画期性を解説

 そして今回の『第2回ルナフェス』だ。

 おなじみV系村のYOSHIKI、GLAY、DIR EN GREY、MUCCと〈品がある「くそ」ラウドロック〉coldianの第1回出演組以外の、初参戦組を並べるだけでよくわかる。

 女王蜂、The BONEZ、back number、GLIM SPANKY、シド、THE ORAL CIGARETTES、OLDCODEX、lynch.、大黒摩季、AA=、BRAHMAN、そしてLOUDNESSときたもんだ。昨年大人気だった〈21世紀のヤンキー映画&ドラマ〉『HiGH & LOW』で一時復活した、TAKAHIRO+HISASHIが率いるACE OF SPADESも場内を沸かせた。

 にしても日本独特のヤンキーカルチャーって、V系からEXILEへと歴史のバトンがしっかり受け継がれた感があるわ。おらおら。

 さて正直な話、今回も充分多彩なラインナップなのだけど、『第1回ルナフェス』や『VJS』のような「これでもか」的な過剰で濃厚な豪華仕様ではない。前述したような歴史的意義が、特別あるわけでもない。しかしながら、超人造雑種ロックから元祖ジャパメタ本舗、ド歌謡曲V系にラブソングの巣窟に日本語版デリコに歪んだ声優さんユニットにずばり摩季ねえさんまで、この〈イズムのないカラフルさ〉はちょっとすごい。

 無論前回同様、「LUNA SEAに憧れて」とか「一緒に仕事やってます」的な繋がりはあるけれど、結果的には〈生でライブを観て絶対損はないバンド〉が揃った気がする。言うまでもなくジャンルを超えて。

 ま、元々LUNA SEAが音楽に生真面目過ぎるほど生真面目だけに、現存するSLAVEも含め『第1回ルナフェス』のリピーターさんたちの目と耳と好奇心は、よその客より明らかに肥えている。それだけに選考基準も高いだろうし、相応の覚悟と自信を備えた演者しか出られない。そう、第2回にして『ルナフェス』はすでに安心高品質フェスなのだ。あの豪華な第1回は〈創刊記念ウルトラスペシャルハイパーDX増頁驀進号〉だったが、レギュラー仕様の第2回でも充分お釣りはくる。

 もし第3回以降も続くとするならLUNA SEA云々ではなく、〈とにかく恰好いいバンドしか出演しない、全バンド憧れのフェス〉として成立するんじゃないかと思う。

 馬鹿みたいに誰でも何でも出しちゃう巨大フェスより、はるかに良心的だろう。そういう意味では、私の中ではあの『氣志團万博』と双璧の『ルナフェス』なのだ。

 どっちの純情も信用できるんだもの。

■市川哲史(音楽評論家)
1961年岡山生まれ。大学在学中より現在まで「ロッキング・オン」「ロッキング・オンJAPAN」「音楽と人」「オリコンスタイル」「日経エンタテインメント」などの雑誌を主戦場に文筆活動を展開。著書に『逆襲の〈ヴィジュアル系〉-ヤンキーからオタクに受け継がれたもの-』(垣内出版)『誰も教えてくれなかった本当のポップ・ミュージック論』(シンコーミュージック)などがある。

■書籍情報
『すべての道はV系へ通ず。』
市川哲史、藤谷千明:共著
四六判/368頁
シンコーミュージック
8月6日(月)発売
本体価格1,800円+消費税

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