三浦大知、大森靖子、小松未可子……アーティストの“新たな表情”が感じられる新作

大森靖子『クソカワPARTY』(2CD+DVD)

 「今私のなりたいもの、私が本当は一番触れられたい私、どうせ誰もここまで来れねーんだろと思っている最高位の孤独に君臨している恥ずかしい私そのままを歌ったアルバム」(ニューアルバム『クソカワPARTY』資料の“COMMENT”より)のために大森靖子は、“クソカワジョーカーがクソカワPARTYを主催する”というコンセプトを用意した。根底にあるのは現代人が抱えざるを得ない深刻な生きづらさなのだが、それをそのまま表現するのではなく、ファンタジーな世界を作り上げることで幅広い層のリスナーが入りやすいエンターテインメントにつなげているのだ。ゲーム音楽、アニメ音楽、アイドルシーンで活躍するクリエイター・ANCHORを起用するなど、アレンジャー、ミュージシャンの配置も絶妙。本当にセルフプロデュース能力に長けた女性だと思う。

大森靖子「GIRL'S GIRL」MV

小松未可子『Personal Terminal』(通常盤)

 前作『Blooming Maps』に続き、Q-MHzの全面プロデュースによるニューアルバム。これまでは凛とした女性像を軸にしてきた小松未可子だが、ジャズワルツ的なアプローチの「Maybe the next waltz」、ピアノロックナンバー「Swing heart direction」(末光篤がアレンジとピアノで参加)などのシングル曲を含む本作は、『Personal Terminal』というタイトル通り、彼女自身のパーソナルな表情が多彩なサウンドのなかで描き出された作品となった。アーティストしてのキャラを絞り込むのではなく、時と場合によって人格が少しずつ変わるという当たり前のことをナチュラルに表現した本作をもっともわかりやすく示しているのは、〈今日も境界線があやふやで 自分が消えてしまう〉(「カオティック・ラッシュ・ナイト」/作詞には小松未可子も参加)という歌詞だろう。

小松未可子ニューアルバム『Personal Terminal』クロスフェード

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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