片平里菜、原点を見つめ直し歩みを進めるーー5周年記念企画ライブで見せた渾身のパフォーマンス

片平里菜、5周年で見せた渾身ライブ

 15分ほどの休憩を挟んで始まった第二部では、第一部の衣装とは異なるオレンジ色のワンピース(本人曰く、デビューシングル『夏の夜』のジャケットで着用した衣装とのこと)に着替えた片平が「この涙を知らない」からライブを再開。続く「誰にだってシンデレラストーリー」では場の空気が明るくなり、片平も積極的に観客とコミュニケーションを取ろうと試みる。2曲終えたところで、よくやくこの日最初のMCとなり、片平は笑顔で「やっと会話できる(笑)」と茶目っ気たっぷりに話してみせた。

 このブロックでは「この涙を知らない」からデビュー曲「夏の夜」までを、時代をさかのぼりながら披露していく。アレンジは原曲に近い形が取られていたが、そこに乗る片平の歌声はデビューから5年を経たことで、リリース当時よりも強さや頼もしさ、深みや繊細さなど表現の幅がより広がったことが感じられた。それは「誰もが」みたいに壮大さを持つ楽曲や、「あなた」のようなバラードナンバーを通じてより実感できたはずだ。

 二度目のMCでは第一部終盤の出来事を振り返り、「歌いながらウキウキしたり、ショボンとしたり、キーって怒ったり、感情の起伏が激しい女の子の歌を歌っているなって、客観的に思っていたんですけど」「1曲1曲の真意を伝えたくて、より感情的になっちゃったんです」と吐露。続けて「こんな情緒不安定な私についてきてくれて、ありがたいなと思います」と片平が告げると、石崎が「それは(片平に)才能があるからですよ」と話し、客席から拍手が沸き起こる一幕もあった。

 メンバーとの和やかなトークを経て、いよいよライブ終盤へ。ライブの盛り上げに欠かせない「Oh JANE」「女の子は泣かない」では、立ち上がった観客とのコール&レスポンスを交え、会場の空気が熱を帯びていく。そして「今、音楽人生の岐路に立っています。まだまだ歌いたい曲、作りたい曲がたくさんあるので、これからも頑張りたいと思います」と真剣な表情で思いを伝えた片平は、デビューシングル「夏の夜」を歌唱する。この曲の後半に登場する〈もしもいつかこの声が なくなってしまうとか思うだけで 伝えたいことがたくさんあるってことに やっと気付くんだ〉という歌詞はこの日の彼女の発言とリンクし、5周年という節目を迎えたことで原点を見つめ直し、次の5年に向けて再び歩みを進めるという強い決意がダイレクトに伝わってきた。まさに、ライブの締めくくりにふさわしい1曲だったのではないだろうか。

 アンコールではステージにひとりで登場した片平が、マイクもアンプも使わずに、生歌と生ギターのみでメジャーデビューのきっかけを作った「始まりに」を弾き語り。彼女の力強い歌声はしんと静まり返った会場中に響き渡り、最後は「これからもよろしくお願いします!」という頼もしい挨拶でライブを締めくくった。

 今年の8月でデビューまる5年となる片平だが、そんな節目のタイミングに新機軸となる『愛のせい』という力作を作り上げたことは、彼女にとっても大きな自信になったはずだ。と同時に、この5年を振り返りつつ、先を見据える中でいろんな迷いも生じているのかもしれない。そんな彼女の正直な気持ちが、この日のステージからは嘘偽りなく伝わってきた。

 この先、片平はどんな活動を続けていくのだろう。この原稿を執筆している時点では一切不明だが、少なからず今回のツアーで得た手応えが彼女のこれからの活動に大きく反映されるはず。それは、彼女がこれから進む道を明るく照らす、大きな手助けとなるのではないか……そう信じてやまない。

■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

■セットリスト
片平里菜 デビュー5周年企画 –2部構成–『愛のせい』アルバム全曲再現ライブ&シングル全曲ライブ
5月10日(木)東京・EX THEATER ROPPONGI セットリスト

<第一部『愛のせい』アルバム全曲再現ライブ>
01. 愛のせい
02. 子供時代
03. デイジー
04. lucy
05. 異例のひと
06. 山手通り
07. wash brain
08. なまえ –naked–
09. Howling wolf
10. 結露
11. からっぽ

<第二部 シングル全曲ライブ>
12. この涙を知らない
13. 誰にだってシンデレラストーリー
14. 煙たい
15. 誰もが
16. あなた
17. Oh JANE
18. 女の子は泣かない
19. 夏の夜

<アンコール>
20. 始まりに

片平里菜オフィシャルサイト

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