『Early Days / Million Memories』インタビュー
暁月凛が明かす、葛藤を乗り越えて打ち出した“本当の自分”「ぶっちゃけ私、嫌われるのが怖かった」
暁月凛が、5月16日にシングル『Early Days / Million Memories』をリリースした。同作は前シングルから約1年ぶりの作品。よりポップに作られた「Early Days」と、彼女の原体験ともいえる楽曲に近い雰囲気の「Million Memories」という2曲は、暁月が葛藤を乗り越えた証でもあるのだという。その証拠に、ビジュアルやMVといったクリエイティブの各所も、迷いを振り切ったかのように刷新されている。
リアルサウンドでは暁月にインタビューを行い、その葛藤の正体や、暁月が見つけた新たな道、心境の変化によって生み出された楽曲の制作秘話などについて、じっくりと語ってもらった。(編集部)
「自分の中にある捻くれた部分と和解ができた」
ーー暁月さんにとって、デビュー3年目を迎えて初めてのリリースが今回のシングル『Early Days / Million Memories』です。前作シングル『コノ手デ』から約1年リリースの間隔があるので、まずはこの間の活動について伺いましょうか。
暁月:私の中では、すごく成長ができた1年だと思います。2年目という年は特別で、新しいことだらけだった過去1年の経験を踏まえて、新たなものを積み重ね、自分の中で統合するという大事な時期だったような気がします。そのなかで様々なイベントにも出させていただいて、自分1人で考える時間もたくさんありましたし、デモを作ったりと、表には出ないものの、裏では結構精力的に活動していました。
――ある意味、3年目に向けて自分を磨き、力を蓄えていた期間でもあったと。
暁月:そうですね。1年目は全く経験がなくて、慌てたり不安に感じたり、緊張したりすることも多かったんですけど、2年目は多少そこにも慣れて、成長した実感はあります。
――その成長について、自分では具体的にどんな部分が大きく変わったと感じているのか、教えてもらってもいいですか?
暁月:まず一つ、一番大きいのは“落ち着き”ですね。私は元来すごく悲観的な人間で、希望を抱くことや人を信じることを“ダサい”と思っていて……なんというか、かなり偏見を持って生きていたんですよ。
――その感覚はすごくよくわかります。
暁月:でも、それは別に人を信じたくないわけじゃなくて、信じたいけど傷つくのが恐いから、口では「信じない」って言ってるだけなんです。心の中では、自分が人を信じることも、信じてもらうことも切実に望んでいて。自分の中にあるそんな捻くれた部分と和解ができたのが、この1年だったのかもしれません。2年目を迎えて、「こんなに悲観的なことを言う私でも、信じてくれて、応援してくださる方々がいるのであれば、希望は本当に存在しているのかもしれない」と考えられるようになって。少しずつ自分のことも、他人のことも信じられるようになりました。
――ファンの方の応援や周りの手助けによって、自分自身のコンプレックスを打ち破ることができたんですね。今回のシングルについて、楽曲もそうなんですけど、まず目に飛び込んで来たのはビジュアルとMVで。大胆にイメージを更新したのも、その一年があったからこそなんですか。
暁月:間違いないです。自分に対しても、ファンの方に対しても信頼できるようになったからこそ、本当の自分をもっとさらけ出しても、受け止めてもらえると思えるようになりましたね、あと、ぶっちゃけ私、嫌われるのが怖かったんですよ。今までの自分と違う一面を出せば、かならず誰かに何かを言われたり嫌われたりするかもしれないと思って、大きく何かを変えることに対して、臆病になっていたというか。だから、今までは割と毒のない自分を出していて。
――それが、これまでのアーティスト写真のような白いワンピース姿、つまりイノセントなイメージだったわけですね。
暁月:そうです。自分自身では「女の子が女の子らしく振舞わなきゃいけない」なんて思ってはいなかったんですが、世間の目を気にして無意識のうちにそういう見せ方をするようになっていました。でも、2年目以降は「それは駄目だ」と思って、もっと自発的に発信していくことにしたんです。
ーー今回は髪型もベリーショートにして、気鋭の写真家・Takako Noelさんに撮影をお願いして。
暁月:今回は私がいいと思う、ボーイッシュな感じを出してみました。最近は考え方も変わってきて、「私にしかできないことをやらないと、自分の存在価値がない」と思うようになって。可愛くて毒のない女の子がいくらでもいるなかで、自分でしか発信できないことを考えたうえで、私の本当の部分ーー毒のようなものも、しっかり出そうとしたうえでお願いしました。
――そして、肝心の楽曲自体も、大幅にアップデートされているように聴こえます。とくに「Early Days」はいわゆるアニメソングとしても高いクオリティがありつつ、これまでよりポップでもある。前作の「マモリツナグ」よりもBPMは少し速いけど、そこまで速く聴こえないし、広いところにアプローチしていける曲になっているような気がします。
暁月:今までは“幻想の世界”を題材にしたものが多かったんですが、「Early Days」は一般の方々の人生にもリンクできるような世界観にしてもらっています。
――前回取材させていただいたときに、暁月さんが言った「今後は自分の中にある耽美的な要素も上手くアレンジして表現していきたい」という言葉が印象に残っていて。今回の曲を聴いたときに、その言葉が真っ先に浮かんできたんです。アニメの世界に寄り添っているけど、暁月凛というシンガー自体が発信している曲にも聴こえる曲というか。そのあたりは、楽曲を手がけた湊貴大さんにも相談したんですか?
暁月:いえ、言わなくても伝わったというか、とくにこういう心情を入れて欲しい、といったリクエストはしていなかったんですが、見事に私とリンクする楽曲をいただけました。湊さんはやはり天才だなと思いましたね。
――湊さんとのタッグはこれで3作目になりますし、ある程度お互いの中で冒険し合えるというか、より違ったものを作り上げられる関係性になっているのかもしれないですね。
暁月:湊さんの曲といえば、ボカロやアニソン曲というイメージだったんですけど、ここまで普遍的なポップスも作ってくださって、さらに尊敬の度合いが高まりました。