w-inds.がひとつに繋ぐ、自分たちの過去と今ーー生バンド従え新旧楽曲披露したFCツアーファイナル

w-inds.が繋ぐ自分たちの過去と今

 橘慶太のセルフプロデュースによる活動を開始した2017年を経て、今年は引き続きその体制でニュージャックスウィングを独自にアップデートした『Dirty Talk』をリリースしたことも記憶に新しいw-inds.。彼らが4月30日、神奈川・パシフィコ横浜国立大ホールで『w-inds. FAN CLUB LIVE TOUR 2018 〜ESCORT〜』の最終公演を行なった。今回のツアーはw-inds.による2018年初のツアーとして、全国6都市を回ったファンクラブ限定ツアー。通常のツアー以上に親密でラフな雰囲気を持ったパフォーマンスの数々から、メンバーの素の表情や、グループのこれからへのヒントがうかがえるようなライブだった。

 まず印象的だったのは、デビュー当時から現在までの多岐に亘るディスコグラフィの中から、普段のツアーではなかなか聴くことのできない幅広い楽曲を詰め込んだセットリストが用意されていたこと。しかも、それが生バンドを従えた演奏で再アレンジされ、懐かしくも新鮮な表情を見せる。その代表格が、冒頭に7人組のバンド編成で披露した2014年作『Timeless』の収録曲「STEREO」だ。グループカラーのブルーに染まった観客の大歓声とともにステージの幕が下りると、目の前に橘慶太がシンセ、千葉涼平がアコースティックギター、緒方龍一がエレクトリックギターを演奏するバンド形態のw-inds.が登場。メンバー3人+サポートの4人がひとつのバンドのように楽器を演奏して生演奏ならではのパワフルな音圧が広がり、ライブ序盤から会場がヒートアップする様子は圧巻だった。

 続いて爽やかな初期曲「Long Road」のイントロで3人がステージ前方に飛び出すと、以降も生バンドをバックに新旧の楽曲を披露。サビ終わりにメンバーと観客とが揃って手を挙げ、終盤には早速観客も加えての合唱がはじまった「Long Road」、Calvin Harrisの『Funk Wav Bounces Vol.1』にも通じるエレクトロと生音ファンクを融合させた「This Love」、「黄昏One Way」など新旧の楽曲を次々に披露していく。また、トライアングル型のセットなどを使って3人のダンス&ボーカルグループとしての魅力を正面から表現した昨年の武道館公演などと比べると、この日はMCの時間をたっぷりと取り、お互いのパフォーマンスの自由度を高く設定したラフな雰囲気があり、ダンスの統一感よりも、メンバーが随時ポジションを変えながら親密感溢れるパフォーマンスを繰り広げる様子が印象的だ。

 中盤に披露された初期曲「THE SYSTEM OF ALIVE」でようやく3人がステージ中央に揃ってコンビネーションダンスを披露すると、「This is the Life」を経て、緒方龍一が「w-inds.の17年を辿っていけるように、みんなをw-inds.の17年にエスコートできればと思って、このツアーを回ってきました」と今回のツアーのテーマを語る。そう、楽曲制作を筆頭にグループにまつわる様々な要素を積極的に自らかじ取りする現在のw-inds.だからこそ、この17年間を今の視点で振り返ることができる。と同時に、今回大きなテーマとして感じられたのは、そうした彼らの過去と今とを、フラットに繋ぐということ。2017年以降追求してきたクラブマナーのサウンドは、日本屈指のダンス&ボーカルグループによる刺激的な冒険として多くの人々に好意的に迎えられてきたが、同時にその頃からメンバーが繰り返し伝えていたのは、“それだけをw-inds.のすべてにするつもりはない”ということだ。つまり、w-inds.は音楽的な冒険を繰り広げながらも、同時に王道のJ-POPでもあり続けるのだろう。

 その象徴と言えるのが、中盤に披露した「Dirty Talk」だ。この楽曲ではニュージャックスウィングを取り入れ、生音とクラブマナーのビートを融合。デビュー当時から追求してきたソウルマナーのタイムレスなポップミュージックを最新のビートミュージックを通過した音で更新し、華やかなポップさと音楽的な冒険とを同時に詰め込んだ、新旧のファンをひとつに繋ぐようなサウンドを手に入れていた。この日はそこに生バンドの演奏を加えて、サウンドにさらなる華やかさを追加。以降は2006年作『THANKS』の収録曲「Still on the street」や2003年の『w-inds.PRIME OF LIFE』収録曲「Dedicated to You」といったレア曲を挟んで観客を沸かせ、終盤は2017年の楽曲群を生演奏で再構築。トロピカルハウスを取り入れた「We Don’t Need To Talk Anymore」ではドロップにギターソロが重ねられ、「Time Has Gone」でもフューチャーベースの揺れるシンセにギターのアルペジオを追加。トロピカルハウスを取り入れた「Again」、そしてアンコールで橘慶太のファルセットが印象的に響いた「CAMOUFLAGE」など、橘慶太のセルフプロデュースによるクラブマナーのプロダクションや難易度の高いダンスなどが加わった近年の楽曲の持ち味を残しながら、それをより間口の広いポップミュージックに変えていく展開に歓声が止まらない。

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