小野島大の新譜キュレーション 第16回
Oneohtrix Point Neverの新アルバムはボーカルにフィーチャーした傑作に 小野島大の新譜10選
英国のDJ/プロデューサー、ダニエル・エイヴリー(Daniel Avery)の2ndアルバムが『Song for Alpha』(Phantasy Sound/Hostess)。1stアルバムがアンディ・ウェザオールに絶賛され、次世代テクノDJの若手筆頭格として注目されたのは5年も前の話。その間に着実に経験を積み、本作では完成度の高いダークでストイックでディープなミニマル・テクノ〜アンビエント・エレクトロニカを披露、今や現役トップクラスのテクノ・クエイターとして見事な成長ぶりを示しています。リスニング用としてもフロアキラーとしても使える、アンダーグラウンドでレフトフィールドなテクノ・アルバムとしては近年の傑作。個々のトラックだけでなく、アルバム全体の世界観の作り込みがうまい。素晴らしいセンスとイマジネーションの持ち主です。
先日大成功の坂本龍一とのコラボなどで知られるドイツの電子音楽家アルヴァ・ノト(Alva Noto)のアルバム『UNIEQAV』(Norton / Impartment)。クールで端正なエレクトロニカですが、リズムやメロディ、音楽の構造、そしてミックスやマスタリングまで神経質なほどに気を配った、おそろしく完成度の高い一作。彼のフロア向けの一面がうかがえるサウンドで、超絶かっこいいハード&ストイックなエレクトロニカ一本勝負だった来日公演を気に入った人なら、これも間違いなく気に入るはず。
ロンドン在住のプロデューサー、ロス・フロム・フレンズ(Ross From Friends)が、フライング・ロータス主宰の〈Brainfeeder〉と契約し、早速ニューEP『Aphelion EP』(Brainfeeder / Beat Records)をリリースしました。いわゆるローファイ・ハウスのクリエイターとして注目を集めた人ですが、サンプリングを多用し、ヒップホップやハウス、ディスコなど様々なダンス・ミュージックからの影響を巧みに消化して、ノスタルジックでメランコリックなメロディと共に叙情的に展開していく曲調はセンス抜群。過去の楽曲と比べても際だって洗練度の高いこのEPで、一気にファン層を広げそうです。アルバムが楽しみな才人。
ロンドン出身のDJ/プロデューサー、ジョージ・フィッツジェラルド(George Fitzgerald)の3年ぶり2作目が『All That Must Be』(Double Six)。ベース・ミュージックのエッセンスを取り入れたエレクトロニカ〜テック〜ディープ・ハウスで、際だってモダンで洗練された感覚のダンス・ミュージックです。今作では不安定だったという私生活を反映してか、前作よりもダークでメランコリックでメロディアスに仕上がっており、素晴らしい出来。エブリシング・バット・ザ・ガールのトレイシー・ソーンがゲスト参加した曲も。ハスキーで落ち着いた声が魅力的なメロウ・ディープ・ハウスです。