乃木坂46 生駒里奈がグループに残した“変わり続ける勇気” 卒業コンサートを振り返る

乃木坂46生駒が残した“変わり続ける勇気”

 本編はそこから、生田がピアノの伴奏を務めた「君の名は希望」「悲しみの忘れ方」でクライマックスへと向かう。各メンバーからのメッセージが寄せられ、生駒が冒頭のコメントでグループ・メンバーへの愛情深さを覗かせると、「この曲は死ぬまで私の代名詞になるでしょう」と前置きし、「制服のマネキン」へ。どんなライブでも、生駒の“センターとしての風格”をわかりやすく感じることができたのは、いつだってこの曲だった。グループの節目である、東京ドーム公演の大事な幕開けを飾ったのもこの曲だった。そしてこの日の「制服のマネキン」は、時折微笑を浮かべながら、どこか余裕をもってパフォーマンスされていたことが、強く印象に残っている。

 アンコールは3rdシングル表題曲「走れ!Bicycle」からスタートし、生駒以外のメンバーがステージ袖に戻ったあと、彼女一人でのMCへ。全文書き起こしたいほどの名スピーチだったが、本記事では以下の部分を引用したい。

「最初は猫背でガニ股でした。いまでもちょっとO脚だけど、びっしり立っているつもりです。最初はスカートを着るのも恥ずかしかったです。『スースーするな』って思いました。今はこんなに見てる人がいるのに、ターンすることもできます。変化したんです。この7年間で、こんなに人間って変わることができるんだってことも、乃木坂46で教えてもらったことだなと思います」

 前半で、生駒は逆境に立ち向かってきたと書いたが、それは決して誰かが強制してきたものではない。彼女はグループが充実してもなお、常に変化を求め続けていたし、グループが充実して以降は、「戦っている」というよりも「自分とグループをさらに強くする」ためのものだったように思う。「太陽ノック」のインタビューでも、「新しい『強くて怖いもの』に早く出会わなきゃいけない」と語っているように、乃木坂46での活動を通じて、変化することの楽しさ、面白さを覚えたからこそ、さらなる変化を求めて外の世界に旅立っていくというわけだ。

 アンコールの最後にはデビュー曲「ぐるぐるカーテン」が披露され、生駒の要望で「あー楽しかった!」とメンバー・ファンが一斉にコールする微笑ましい光景を見せられたり、ダブルアンコールでは秋元康氏が「5作連続のセンターで、重圧に押しつぶされそうになっている生駒の姿を思って書きました」とメッセージを寄せた「君の名は希望」が歌い上げられ、生駒の「お疲れ様でしたー!」という掛け声とともに、コンサートは終了した。

「周りに尊敬できる方がたくさんいて、たくさんのことをもらったけれど、でもそれより何よりも私は、もっともっと険しい道を上りたいと思ってしまった。こんなに充実しているのに、すごくワガママなことだと思います。この世界に夢を持ってしまった。この先に続く夢をつかみたいと思ってしまった。だからこそメンバーには自分もいつかそうなったときに胸張って1人で仕事できるっていうところを見せてあげたい」

 同じタイミングのMCで、生駒はこうも語っていた。本編の最後にも「乃木坂46が今後活躍するために私は活躍したいって思っちゃう」と話していたりと、乃木坂46にとって彼女が“希望”であり続けるように、生駒にとって乃木坂46は、航路を間違えないように照らし続ける灯台でもあるのだろう。だからこそ、生駒が去ったあとも、お互いが光り輝き続けられるよう、彼女の残した“変わり続ける勇気”を、グループがどう継承するのかにも期待したい。

「生駒ちゃんを観たときに現実を忘れて、心の底から楽しんでもらえるようなエンターテイナーになります!」(アンコールMCより)

 どのポジションにいても、センターでなくても、その姿を目で追わせる彼女には、間違いなく“主人公”の才能がある。どんな逆境やステージでも物語に変えてきた生駒は、この先も我々を驚かせてくれるに違いない。

(取材・文=中村拓海)

■セットリスト
01. 乃木坂の詩
02. おいでシャンプー
03. 太陽ノック
04. 水玉模様
05. トキトキメキメキ
06. スカウトマン
07. Against
08. シンクロニシティ
09. 初日
10. てもでもの涙
11. 心のプラカード
12. ここじゃないどこか
13. 満月が消えた
14. あらかじめ語られるロマンス
15. 無口なライオン
16. 指望遠鏡
17. 月の大きさ
18. ハウス!
19. 君の名は希望
20. 悲しみの忘れ方
21. 制服のマネキン
En1. 走れ!Bicycle
En2. シャキイズム
En3. ぐるぐるカーテン
WEn1. 君の名は希望

 

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