『24K Magic World Tour』レポート

ブルーノ・マーズの天才的なパフォーマンスに釘付け! 極上のエンターテインメントショーを観た

 2016年11月に発表したアルバム『24K Magic』からは次々とリミックスを含むシングルが発表され、2018年のグラミー賞では主要部門において3冠を総ナメと、その人気は天井知らず。まさに今“世界で最も輝いているミュージシャン”として名前を轟かせるブルーノ・マーズ。今回の来日公演は、最新アルバムの名前を冠した『24K Magic World Tour』の一環で、世界中を周り計210公演が予定されている。

 筆者が鑑賞したのは、4日間行われた日本公演最終日となる4月15日の公演だ。会場のさいたまスーパーアリーナは、最後部の座席までびっしりとオーディエンスで埋まっている。それもそのはず、当初、4月12日、14日の2公演がアナウンスされていたものの、チケットは瞬く間にソールドアウト。急遽、追加公演、さらには鑑賞がやや困難な舞台脇の座席も追加シートとして販売されたほどなのだ。

 定刻を少し過ぎた頃、場内に流れていたBGMが止まり、頭上のスクリーンには「Are you ready? 」「Scream!」と、観客の期待を煽るメッセージが。焦らされた観客のテンションも最高潮に上がったところで、最新シングル「Finesse」のイントロと共に幕が上がった。壇上には、すでにブルーノ、そして、常に彼のツアーに帯同してきたバックバンド、The Hooligansの姿が。会場の熱をさらに上げていくように、アルバムの表題曲「24K Magic」へ。バックには大きなネオンのボードが下がってきて、火花の特効もふんだんに使用しながら、初盤で一気にブルーノの世界へと飲み込まれていくような勢い。2ndアルバム『Unorthodox Jukebox』からのヒット曲「Treasure」を挟み、再び「Perm」で『24K Magic』の世界へ。パフォームした曲の中でもひときわバウンシーなこの曲、途中でバンドメンバーとともにステージ上の段差に着座し、座った状態でジャンプしながら歌唱&演奏するという、昨今のブルーノのパフォーマンスではお決まりのシーンも大きな見どころだった。

 そして、ブルーノのギターソロも飛び出したバラード、「Calling All My Lovelies」では、電話を片手に〈君に会いたいよ、とっても、とってもとっても…〉と日本語での歌唱が! 続く「That's What I Like」では「愛してます」というフレーズも何度も飛び出し、黄色い歓声がさらに沸き起こった瞬間だった。まるで往年の男性R&Bグループのショーを観ているかのような、濃厚でスムーズな「Versace On The Floor」を経ると、ショーは折り返し地点へ。ブルーノの実兄、E・パンダことエリック・へルナンデスのアツいドラムソロの後は疾走感を保ったまま「Runaway Baby」へ。ゴールドに光る拡声器を片手に、観客を一度静かにさせてからベースとドラムのミニマムなサウンドに合わせてステップを踏むシーンなど、ブルーノならではの小粋な技も披露。「バンドを休ませてあげたいんだ」とMCを挟み、ブルーノとキーボードのみで「When I Was Your Man」を歌い上げた瞬間は、本公演においても最もエモーショナルな場面であった。

 シンフォニックで壮大なジョン・フォシットによるキーボードのソロパートの後は、「Locked Out Of Heaven」、「Just The Way You Are」と立て続けにブルーノのキャリアを代表するヒット曲を披露。もちろん、オーディエンスも大合唱で、金色の紙吹雪が舞い散る中、大フィナーレに向けて大きな盛り上がりを見せた。一度、幕が閉じた後のアンコールには、マーク・ロンソンとタッグを組み世界的なヒットシングルとなった「Uptown Funk」を。ブルーノ自身がバンドメンバーの紹介をしたのち、トロンボーン担当のキャメロン・ウェイラムがブルーノを紹介する番になると「最終日なんだから、バッチリ頼むよ!」とキャメロンに声をかけて、誇らしげに観客に向けて最後のグリーティング。最後の最後まで、極上のファンクサウンドを奏でながら、約90分のショーの幕が閉じた。

 ショーの間、一貫していたのは、とにかくブルーノのエンターテイナーとしての技力の高さだ。世界で最も輝く男を前にこんなことをいうのも野暮だとは重々承知だが、無駄のない動きや緩急つけた構成、一瞬たりとも見逃すまいと彼の姿に釘付けになるパフォーマンス、そして、その歌唱力。全てが非凡で、まさに天才的という言葉がぴったりだった。そして、The Hooligansそのものも、ブルーノの才能を引き立てる天才エンターテイナー集団であることも忘れてはならない。ただのバックバンドではなく、一糸乱れぬ揃いのステップや、パワフルな演奏、ファンキーな姿やコーラスのギミックからは、ブラックミュージックの真髄も感じさせられた。ちなみに「Perm」では一部でOutKastの「The Way You Move」を引用し、「That’s What I Like」ではラテンアレンジを、そして「Marry You」ではブルーノがギターでプリンス「Purple Rain」の一節を加えるなど、生のライブでしか味わえないダイナミズムに溢れた場面も多く散りばめられていた。

 あっという間の90分で、まるでブルーノのファンクネスに包まれたテーマパークを堪能したかのような気持ちで、鑑賞後はまさに夢見ごごち、といったところ。

 ブルーノの本格デビューは2010年。そろそろデビュー10周年に向けてのカウントダウンが始まる頃かと思うが、果たして2010年以降にデビューしたR&BシンガーやHIPHOPアーティストで、日本のさいたまスーパーアリーナを4日間も埋められる存在は他にいるのだろうか、と考えさせられた夜でもあった。アメリカではポップミュージックのチャートすらR&BやHIPHOPの楽曲が多くチャートインしている状況ではあるが、日本ではまだまだその熱気に追いついているとは言い難い状況だ。だからこそ、最先端のR&Bのエッセンスを内包しながらもトラディショナルなブラックミュージックを体現するブルーノの大規模な来日公演が、非常に貴重なものに感じられたのだった。

■渡辺 志保
1984年広島市生まれ。おもにヒップホップやR&Bなどにまつわる文筆のほか、歌詞対訳、ラジオMCや司会業も行う。
ブログ「HIPHOPうんちくん」
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blockFM「INSIDE OUT」※毎月第1、3月曜日出演

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