渡辺志保の新譜キュレーション 第12回
2018年もヒップホップシーンにはビッグウェーブが訪れる 渡辺志保が選ぶ、注目の新譜5選
ミーゴス以上に全米、いや、全世界を引っ掻き回す男といえばドレイクでしょう。昨年はアルバムならぬ“プレイリスト”と銘打った『More Life』をリリースし、多国籍なサウンドを用いて話題になったドレイクですが、1月19日に「God’s Plan」と「Diplomatic Immunity」の2曲が収録されたミニEP『Scary Hours』を発表しました。特に「God’s Plan」はこれまでのドレイクらしく、バウンシーでポップな香りも感じさせるトラックと、まさにドレイク節とも言えそうなキャッチーなフロウが溢れた楽曲。一方の「Diplomatic Immunity」は渋めでハードなビートの上でシリアスにラップします。ただ、歌詞の中にリアーナの本名、ロビンの名を出して彼女が好きなイタリアン・レストランの名前を入れ込んだり、以前、恋仲が噂されたジェニファー・ロペスの名前を出したりと、相変わらずの伊達男っぷり。
そして、新曲を発表するたびに何かしらネタ的に話題になるドレイクですが、今回も、『Scary Hours』のアートワークは盗作ではないかと、ラビットというアーティストからのツッコミが入っています。確かに、彼がInstagramにポストした写真を見ると、元ネタのデザインとフォントの種類、そして配置が驚くほど似ています。
真相やいかに。その炎上効果もあってか(?)、「God’s Plan」は発売初日にSpotifyで430万回、Apple Musicで1400万回もストリーミング再生され、両ストリーミング・サービスにおいてこれまでの記録を破り、「1日で最もストリーミング再生されたアーティスト」に認定されました。今年も、彼にはまだまだ振り回されそうです。
次は、昨年からネット上でバイラルヒットを記録している注目の新人ラッパーとそのクルーを。2017年9月に発表したファーストMVの「Rubbin Off The Paint」で一躍注目を集めたのが、若干17歳、アラバマ出身のMCであるYBNナミアーです。人気ヒップホップ・サイトであるWold Star Hip Hopが「Rubbin Off~」のMVをYouTubeにポストした三日後にはすでにネット上で話題になり、ほぼ無名のラッパーながらビルボードチャートでは52位に食い込むほどに。
そのYBNナミアーが発表した新曲が「Bounce Out With That」。浮遊感もあるメロディアスなシンセの音と、ポップな響きを持つ彼のフロウ(歌っている内容はヤンチャなんですが)は、すでにYBNナミアーのシグニチャースタイルとして確立されていると言ってもいいでしょう。MVには、フィーチャリング・アーティストとしても人気のあるPnBロックがカメオ出演を果たしています。同じYBNクルーから、YBN・オールマイティ・ジェイの新MV「Takin Off」も発表されましたので、ぜひ2つ併せてお楽しみ下さい。