渡辺志保の新譜キュレーション 第11回

カーディ・B「Bodak Yellow」が全米チャート1位に シーンを騒がすフィメールラッパー6人

 ラプソディーに続き、もう一名、強い意志をライムに落とし込んだ一曲をご紹介します。シカゴを拠点に活動している、ドリーズィーという女性ラッパー。1994年生まれの23歳で、アイドルのようなキュートなルックスも相まって「シカゴが生んだプリンセス・ラッパー」とも評される存在です。そんな彼女が発表したのが「Spar」という楽曲。

Dreezy - Spar (Audio) ft. 6LACK, Kodak Black

 ジ・インターネットのシドらとも共演歴のある若手シンガー、ブラック(6lack)、そしてやんちゃな言動がフォーカスされることも多いティーン・ラッパーのコダック・ブラックを招き、それぞれが現在のアメリカ社会に対する不満を吐き出す、という楽曲です。「良きペンマンシップにのっとって、私は言葉に書き出すわ。オフィスの半数が白人至上主義者だっているのに、私たちは(この国を)代表していると言えるの?」というラインや、「私は真実を言ってるの、この状況は十分ツラいわ。アイツらは私たちに見返りなんてくれやしない、無視されることばかりよ。もしもワシントン・DCに行ったらトランプを攻撃してやるの。私は政治家じゃないけど、この状況を知らないふりなんて出来ない」というフックにも力強さが溢れています。若いアーティストたちが集ってこうしたテーマで楽曲を発表するという点にも、彼女たちの真剣さを強く感じました。

 さて、お次はUKの注目フィメールMCを。ステフロン・ドン、という強そうな名前ですが、ジャマイカ訛りを交えたフレキシブルなフロウが注目を集めている新鋭ラッパーです。昨年、R&Bシンガーのジェレマイの楽曲「London」にフィーチャーされたほか、デビュー・ミックステープ『Real Ting』を発表。ガーアディアン誌には「ニッキー・ミナージュへの、UKからの回答がステフロン・ドンだ」とまで評されたほどです。そしてこの夏からフロアを賑わせているのが、NYを拠点とする人気ラッパー、フレンチ・モンタナをフィーチャーした「Hurting Me」です。

Stefflon Don, French Montana - Hurtin' Me (Official Video)

 流行りの、そして何より彼女のルーツでもあるダンスホール・バブスを前面に押し込んだメロディアスなトラックは非常に中毒性も高く、UKはもちろん、そろそろUSでもブレイク間近なのでは? と期待が高まります。どちらかというと、スペインやトルコの音楽に親しんでいるという背景もあるそうで、今後、どんな風に彼女のクリエイティビティが花開いていくのかも楽しみなところ。

 最後に、ネット上を中心に話題をバズらせているティーン・ラッパー、バッド・ベイビーの紹介を。この子、もともとはダニエル・ブリゴーリ、という名前で活動していました。なんと2003年生まれの14歳。もともと、窃盗や万引きなどを繰り返していた筋金入りの不良少女だったダニエル。母親が彼女(当時13歳)と共にテレビ番組に出演し、涙ながらに「この子をどうにかしてほしい」と相談したところ、ダニエル本人は「外に出て決着つけようぜ! どうだ?(Catch me outside, how bout that)」と悪態をつき、その動画が数々のミーム(ネタ画像・動画)にされ、ネット上にバラ撒かれたのです。また、彼女のアクセントによって「Cash me outside, how bout dah」と言っているように聞こえる! ということで「Cash Me Outside Girl」とまで呼ばれるように。みるみるうちに人気者(?)になり、ラッパーとしてデビューするまでになりました。今やメジャー・レーベルの<アトランティック・レコード>と契約を交わしていますが、そんな彼女に苦言を呈したのが、ダニエルの父親(なんと地元の警官)です。

Danielle Bregoli is BHAD BHABIE “Hi Bich / Whachu Know” (Official Music Video)

 最新MVの「Hi Bich / Whachu Know」を見た父親は「性的な表現などにウンザリ。反吐がでる」と一蹴。そいて、MVの中にはカイリー・ジェンナーと思しき女の子が唇とお尻に注射を打ち、整形手術を施しているような描写もみられます(カイリーは唇をぷっくりさせるプチ整形を受けたことで有名)。「これはネット上でのイジメと変わらない。カイリー・ジェンナーと彼女のチームに対して自分の娘の行いに関して謝りたい」とコメントを発表しています。バッド・ベイビーことダニエル、一瞬の時の人としてすぐに業界を去ってしまのか、それとも強運を味方につけてラッパーとしてさらにブレイクするのか……? 色々な意味で彼女の今後が気になります。

■渡辺 志保
1984年広島市生まれ。おもにヒップホップやR&Bなどにまつわる文筆のほか、歌詞対訳、ラジオMCや司会業も行う。
ブログ「HIPHOPうんちくん」
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blockFM「INSIDE OUT」※毎月第1、3月曜日出演

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