10thシングル『Family Song』インタビュー

星野源が示す、これからのスタンダード「過去からつながった“いま”の最先端として表現したかった」

 星野源が、10thシングル『Family Song』を8月16日にリリースした。リアルサウンドでは、音楽ジャーナリストの高橋芳朗氏によるインタビュー特集を展開。今回はその第3弾をお届けする。

 今回のインタビューでは、『Family Song』収録曲の「肌」、「プリン」、「KIDS (House ver.)」それぞれの楽曲にあるサウンドのテーマ、メッセージについても言及。そしてアートワーク、ミュージックビデオにまつわる話からは、“いま”の最先端として音楽をつくる星野源の今作での総括が語られている。(編集部)

こういう音楽がCMから流れてきたらニヤニヤしちゃうな

(※前回までのインタビューはこちら→第1回:星野源、「Family Song」で向き合った新たな家族観「“これからの歌”をまたつくりたいと思った」/第2回:星野源が語る、J-POPとソウルミュージックの融合「やってみたかったことが見事に合致した」

ーーでは、そろそろ2曲目の「肌」にいってみましょうか。これは『ビオレu』のCMソングとして使われることを前提としてつくったんですか?

星野:そうですね。まさにそういう内容のCMなんですけど、親子が仲睦まじくお風呂に入ってる写真を見ながら歌うような曲をつくってください、というリクエストがあって。これも「Family Song」と一緒で「こういう音楽がCMから流れてきたらニヤニヤしちゃうな」っていうのが最初の曲づくりの動機としてありました。初めに2パターンつくって、ひとつはちょっとディスコっぽいバージョン、もうひとつが採用になったいまのバージョンで。どっちにするかすごく迷ったんですけど、スタッフのみんなにアンケートをとったらいまのものがいいってことになって、僕としてもそうしたかったのでそれでいこうということになりました。

ーー資料にも「こういったリズムがテレビで流れるのはワクワクします」というコメントがありましたが、確かにこれはCMソングとして使われてる絵がすぐには浮かんでこないぐらいイレギュラーなリズムですね。

星野:ネオソウル的なイメージですね。なにかで聴いて、ずっとこういうリズムをやってみたいと思っていたんですよ。

ーー歌詞は「肌と肌のふれあいについて」とのことですが、まさか親子がお風呂に入ってる様子を想定してつくられた曲だとは思いませんでした。もっと官能的というか、エロティックな絵をイメージしていたところがあって(笑)。

星野:そうですね(笑)。親子関係と官能的なものとのダブルミーニングになっていて。どっちとも受け取れるようにつくりたいと思ったんですよ。たとえば〈その胸に口づけを〉という歌詞も官能的な意味と、あと親の授乳している様子を重ねていて。CMを見てからだとまたちょっと印象が変わってくると思います。

ーー3曲目の「プリン」はプリンスが亡くなる直前の去年4月7日、「プリンスの初期みたいな曲をふざけてやりたい」ということでレコーディングしたそうですね。

星野:はい。「イエローミュージックとか堅いこと言ってんじゃねえ! 真似させろ!」みたいな感じで(笑)。

ーーアハハハハ。

星野:「ふざけさせろ!」みたいな。なんというか、学生気分的な「なんか似てない? ギャハハハ!」みたいな感じで曲をつくってみようと思って。レコーディングした時期的には『YELLOW DANCER』の後、『恋』より前のタイミングで、そろそろ次のシングルをとか、スタッフからそういうことを言われる前に録った曲なんです。だから本当に好き勝手にやってみて、イエローミュージックのコンセプトから抜けて気軽に曲をつくったらどうなるだろうと思って取り組んだ曲ですね。

――本当に無目的につくったんですね。

星野:次のシングルで出せたらとは思っていたんですけど、直後にプリンスが亡くなってしまって。まあ、聴いてすぐにプリンスを連想するような曲かというとそんなこともないと思うんですけど、そのタイミングではまだやめておいたほうがいいかなと。イメージとしては、初期の『Dirty Mind』(1980年)のころのプリンスですね。

――確かに、「Just As Long As We're Together」(1978年)とか「When You Were Mine」(1980年)とか、初期のプリンスのファンクともロックともつかない折衷的な曲に通ずるものがありますね。『SUN』の出発点になった「I Wanna Be Your Lover」(1979年)もそうですけど、星野さんはわりと初期のプリンス作品に思い入れがある印象を受けます。

星野:そうですね、なんか好きなんですよ。もちろん『Purple Rain』(1984年)とかも大好きなんですけど、このころのちょっといびつというか、手作り感にも惹かれます。妙にソウルフルで人間味があるなって。

――『Purple Rain』周辺の作品よりも、『For You』(1978年)から『Dirty Mind』に至る初期のプリンスのアップテンポの曲のほうが最近の星野さんの作風と相性がいい感じはします。

星野:エフェクティブじゃないというか、楽器の生っぽい音が聴こえてくる感じがするんですよね。ギターもディストーションとかまったくかかってなくて、クリーントーンでジャンジャン弾いてるみたいな。その感じが好きですごくやりたかったんですよ。ひさしぶりに最初から最後まで自分でギターを弾きました。

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