ファレル・ウィリアムス独占インタビュー 「Yellow Lightに導かれて、新しい世界を作っていかなくてはいけない」
90年代ブームはすでに来てるよ
ーーあなたにとって、『怪盗グルー』シリーズの魅力、イルミネーション・エンターテインメント作品の魅力はどこにあるんですか?
ファレル:まず、彼らのチームは人間としてとても魅力的なんだ。イルミネーションでは何百人という才能あるアーティストが一緒に働いていて、そこで力を合わせてリアルに感じられるものを作っている。『怪盗グルー』シリーズのキャラクターはファンタジックだけど、ずっと見てると、それを人間が作ったということが信じられないくらいリアルなものに感じてくる。何百人ものアーティストが集まってそういうものを作っていることに敬意を感じずにはいられないよ。そして、パリでも、ここロサンゼルスでも、イルミネーションで働いている人たちはとても優秀で、自分たちの作っているものに誇りを持っている。
ーー『怪盗グルーのミニオン大脱走』では80年代のポップ・ミュージックがとても大きな役割を果たしています。音楽界においても、映画界においても、もう随分長いこと80年代ブームが続いてますが、『怪盗グルーのミニオン大脱走』にはいわばその決定版のような趣がありますよね。
ファレル:80年代ブーム?
ーーそう。
ファレル:いや、もうそれはブームであるかどうかを意識する以前のものとして、完全に僕らのカルチャーに根づいているよ。何故なら、80年代には本当にいいポップ・ソングがたくさんあったし、いいアーティストがたくさんいたし、彼らの多くはとても魅惑的なビジュアル・イメージを持っていた。80年代がとてもマジカルな時代だったということに、疑問を挟む余地はないんじゃないかな。
ーーポップ・カルチャーにおける60年代のように?
ファレル:70年代生まれの僕たちにとっては、そう言ってもいいかもしれないね。
ーー自分もあなたと同じ70年代生まれなので、80年代はティーンの頃の記憶と分かちがたく結びついていて、その感覚はよくわかるのですが、一方で80年代のカルチャーの影響力が今も強すぎて、なかなか90年代ブームが来ないという見方もできるように思うんです。
ファレル:いや、90年代ブームはすでに来てるよ。
ーーあなたが言うとすごく説得力がありますね(笑)。
ファレル:あまり僕はブームだとか、そういう考え方はしないんだけど、君にそういうことを言われて考えてみれば、今、自分の周りの人たちはみんな90年代のような服を着て、スニーカーを履いている。そして、90年代のような音楽を作っている。ハウス・ミュージックがリバイバルしている、ドラム&ベースがリバイバルしている、グランジだってリバイバルしている。どれも、数年前まではなかった傾向だよ。
ーー現在あなたがN.E.R.Dの制作作業にフォーカスしているのも、そうした動きと繋がっている?
ファレル:だから、それについてはまだ言えないよ(笑)。
ーー(笑)。でも、90年代リバイバルは、はたして80年代リバイバルほどポップ・カルチャー全体において大きな現象となるんでしょうか? それについて自分は懐疑的なんですけど。
ファレル:まだだよ。まだなんだ。そこまでなるには、もうちょっと時間がかかる。
ーーそのうち必ずもっと大きくなる?
ファレル:うん。間違いない。とても大きなムーブメントになるよ。
ーー『怪盗グルーのミニオン大脱走』ではマイケル・ジャクソンやa-haやフィル・コリンズやダイアー・ストレイツの曲が使われていましたけど、では、シリーズの次作ではニルヴァーナの曲が流れたりすることもあり得る?
ファレル:あり得るね(笑)。
ーー2013年のダフト・パンクのアルバム『ランダム・アクセス・メモリーズ』で、そして先月出たカルヴィン・ハリスのアルバム『ファンク・ウェーヴ・バウンシズ Vol.1』で、あなたは複数の曲で大活躍していました。それらの作品も音楽的なモチーフの大きな一つに、80年代のディスコ・ミュージックやファンク・ミュージックがあったわけですが。
ファレル:そうだね。彼らのようなヨーロッパのクリエイターがアメリカの80年代ブラック・ミュージックのフレイバーを求める時、僕のもとにオファーが来ることがある。アメリカ人の僕たち以上に、彼らは過去のアメリカのブラック・ミュージックに入れ込んでいるんだ。どうしてそういう時に僕が呼ばれることが多いのか、僕にはわからない。ただ、一つだけ確かなのは、そこでは他の誰かがフィーチャーされることもありえたということ。(ダフト・パンクの)トーマ(・バンガルテル)もギ(=マニュエル・ド・オメン=クリスト)も、そしてカルヴィンも、彼らが自分たちの作品を制作する際に呼ばれたならば、誰だってそのオファーに喜んで応じただろう。でも、そこで彼らは他でもない僕に機会を与えてくれた。そのことをとても誇りに思うし、光栄なことだと感じているよ。
ーーカルヴィン・ハリスとのレコーディングでは、データのやり取りだけではなく、一緒にスタジオに入ったんですか?
ファレル:もちろん。彼は自分のスタジオでたくさんのリズムを、たくさんのトラックを自分で演奏していた。その中で、彼がベースで「Feels」を演奏した時に、僕は「ん? それは何?」って言ったのを覚えている。そこからスタジオの周りを歩き回っているうちに、メロディーとか歌詞とかがいろいろ浮かんできて、その後にまたスタジオに入って、あの曲を一緒にレコーディングしたんだ。あの体験はクールだったな。カルヴィンとの作業はとても楽しかったよ。彼はとてもいろんなことをできる、素晴しいプレイヤーなんだよ。
ーープレイヤー?
ファレル:そう。多くの人はカルヴィンのことをプロデューサーとして、あるいはDJとして見ているんだろうけど、制作の現場にいてよくわかったのは、彼がとても優れたプレイヤーだということだった。本当に、彼はいいよね(笑)。また機会があったら一緒にやってみたい。