荻原梓のチャート一刀両断!
KinKi Kidsの魅力が発揮されるアーティスト提供曲 最新シングルから思い起こした“デビュー初期”
参考:2017年7月10日~2017年7月16日の週間CDシングルランキング(2017年07月24日付)
7月24日付週間シングルランキングでKinKi Kidsの最新シングル『The Red Light』が初登場1位を獲得した。KinKi Kidsはこれでデビューから21年連続でシングル1位を獲得。B’zを抜き、単独首位に躍り出た。
ここ数年ほど、KinKi Kidsのシングルの初週売上枚数は15~16万枚ほどの推移であったが、THE YELLOW MONKEYの吉井和哉が作詞・作曲した去年の『薔薇と太陽』で19万枚に上昇。安藤裕子が作詞・作曲した『道は手ずから夢の花』では17万枚、そして今作表題曲は久保田利伸が作詞・作曲を担当(作詞は森大輔と共作)し、初週売上枚数はなんと20万枚に達した。初週売上枚数が20万枚台に届いたのは2006年の『Harmony of December』以来で、約10年ぶりとなる。
大物アーティストを楽曲制作に迎えることで二人の魅力が発揮される様子は、山下達郎や吉田拓郎、吉田美和といった面々が楽曲提供していた初期のKinKi Kidsを彷彿とさせる。今回の「The Red Light」は、久保田利伸の代名詞と言えるR&Bやソウルの要素と、歪んだギターが印象的なハードロック・サウンドが融合した強烈なナンバーだ。二つの要素の融合という意味では、剛と光一の両者のイメージをフュージョンさせた一曲と表現するのは少々強引な喩えだろうか。プリンスとレニー・クラヴィッツをうまく掛け合わせた様な印象もある。サビでの<これ以上はもう>の“じょう”と“もう”に強いアクセントがあり、足腰をグッと下に降ろさせ、且つ、ヘッドバンキングを促す重厚なノリがある。デビュー20周年にこうした強い曲を世に送り出すのは、今後の活動を大いに期待させる一手だ。
さて。KinKi Kidsと言えば山下達郎が作編したデビュー曲の「硝子の少年」のイメージが世間的には強いだろうが、ここ最近のKinKi Kidsを語る上で欠かせないのが堂島孝平の存在である(曲数だけ見れば最も多く関わっていると思われる)。ファンの間では“3人目のKinKi Kids”との呼び名も高い。そんな堂島が、KinKi Kidsに初めて曲を提供したのが2000年の「Misty」(『D album』収録)という曲であった。それから17年。タイトルも詞も、どこかその初仕事を彷彿とさせるのがカップリング曲の「Shiny」である。
浜辺を走る恋人の背中に擦れ違いだした二人の関係を重ね合わせていた「Misty」は、<僕には気づかないまま 君は霧の向こうへ 消えてゆく>という一節で終わっていた。対して「Shiny」は、その二人の関係が終わってしまった後も未だに忘れられない男の心情を歌った曲なのだろう。
<過ぎ去ってもまだ消えない残像が キラキラ 引っ掻くんだ>
<あの声 あの色白の手 甘い香りを嫌うとこも 覚えているのさ>
といったフレーズは、ハートブレイクした男のイメージが強いKinKi Kidsの詞の世界観にも合致する。悲嘆にくれる男の心を撫でるような今野均ストリングスによる弦の演奏と、Fujikochansによるコーラスの絡み合いは極上だ。
デビュー20周年という記念すべき年に、10年ぶりに初週売上が20万枚に届き、初期の頃のように大物アーティストに楽曲を提供してもらい、さらに“3人目のKinKi Kids”が長年の付き合いをさらに深める楽曲をカップリングに潜ませたシングルが、この『The Red Light』なのである。
■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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