太田省一『ジャニーズとテレビ史』第三十三回:『コード・ブルー』&『ごめん、愛してる』

長瀬智也と山下智久がドラマに欠かせない理由ーー『コード・ブルー』『ごめん、愛してる』から考察

 7月に入り、続々と新しい連続ドラマが始まっている。そのなかで今期個人的に目を引くのが、長瀬智也と山下智久の存在である。長瀬は「日曜劇場」枠の『ごめん、愛してる』(TBS系)、山下は「月9」枠の『コード・ブルー〜ドクターヘリ緊急救命〜THE THIRD SEASON』(フジテレビ系)で、それぞれ主演を務める。両作品とも、いわば局の看板枠。期待の大きさがうかがい知れる。

 『ごめん、愛してる』は、同名韓国ドラマのリメイク版。児童養護施設で育った長瀬智也扮する主人公を中心に、吉岡里帆、坂口健太郎、大竹しのぶとのあいだで繰り広げられる重厚なラブストーリー。親子の三角関係と男女の三角関係という二つの複雑な関係が交錯しながら展開する愛憎劇だ。

 一方、『コード・ブルー〜ドクターヘリ緊急救命〜THE THIRD SEASON』のほうは、人気医療ドラマの3rdシーズンになる。フライトドクター候補生だった山下智久扮する主人公だが、いまは救急救命センターを離れて脳外科医になっているところから物語は始まる。そのなかで、同じフライトドクター候補生だった新垣結衣、戸田恵梨香らとともに医師として、人間として成長していく姿が描かれる。

 1978年生まれの長瀬智也は、1995年『カケオチノススメ』(テレビ朝日系)で連続ドラマ初主演。また1985年生まれの山下智久は、2006年『クロサギ』(TBS系)で同じく連続ドラマ初単独主演。以来、二人ともドラマ主演の実績を積み重ねてきた。もちろん歌手業と並行してではあるが、俳優としての存在感をひときわ感じさせるジャニーズと言えるだろう。

 俳優としての二人には、対照的なところもある。長瀬が『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』(日本テレビ系)や『泣くな、はらちゃん』(日本テレビ系)などのように感情豊かで「熱い」役柄のイメージがあるのに対し、山下は『クロサギ』(TBS系)や今回の「コード・ブルー」シリーズなどのように冷静でクールな感じの「醒めた」役柄の印象がある。長瀬の「動」に対して山下の「静」、と言ったらいいだろうか。

 ただ、二人には似ている面もある。ユーモアのセンスである。派手なギャグで笑わせるのとは違う、演技そのものからにじみ出る面白さ、おかしみがある。

 もう少し具体的に言うと、長瀬智也の場合は、「じわっ」とくる面白さだ。たとえば『ごめん、愛してる』では、長瀬が吉岡里帆に対して繰り返す「ボケちん」というセリフに込められたニュアンスにもそれが感じられる。一方、山下智久の場合は、「ふわっ」とした浮遊感のある面白さがある。『ボク、運命の人です』(日本テレビ系)で山下が演じる「神」が亀梨和也をけむに巻くような恋愛指南をする場面にも、とらえどころのない面白さがあった。

 つまり、俳優としての二人に共通するのは、シリアスとユーモアが表裏一体になった演技のクオリティの高さである。そしてその意味で思い出すのが、二人が共演したドラマ『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)である。

 この作品が放送されたのは、2000年のことだった。原作は石田衣良による同名のベストセラー小説。池袋西口を舞台に繰り広げられる不良同士の抗争を描いたドラマである。長瀬智也が演じたのは主人公のマコト。元は有名な不良で、それゆえ厄介な依頼事がたびたび持ち込まれる。マコトは、「めんどくせぇ」と言いながらも、持ち前の正義感で無理難題に挑んでいく。

 その「めんどくせぇ」のセリフも別に笑わせようというものではないのだが、長瀬扮するマコトの口を通して発せられるとどこかユーモラスだ。群れない一匹狼でありながら、周囲からの信頼は厚く、人間的に愛されている。まさに、俳優・長瀬智也がこの後演じることになった多くの役柄の原点とも言える役柄である。

 また、窪塚洋介、妻夫木聡、坂口憲二、佐藤隆太、小雪、阿部サダヲなど、このドラマをきっかけに注目された俳優も多かった。

 山下智久もそのひとりである。放送当時まだ15歳だった山下が演じたのは、マコトの友人のシュンだった。専門学校生でイラストのうまいアニメオタク。人見知りの激しい性格だが、マコトには心を開く。長瀬の「動」に対する山下の「静」の対比がすでにここにある。その後山下は、多くのドラマ出演を経て『クロサギ』での初単独主演にいたる。

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