織田哲郎が語る、“名曲”が生まれる条件「思いつきの破壊力プラス構築力の高さ」

織田哲郎が語る、音楽の理想の形

いろんなことを試しながら、次に活かしていく

ーー『W FACE』のインタビューの際に、「ジョン・レノンは一発芸が大得意で、ポップの本質的な部分は理屈ではなく、瞬発力で突然浮かぶもの」という話がありました。それはご自身の楽曲でも意識しているのでしょうか?

織田:それはどの曲を作るにあたっても、一番重視してますよ。結局、自分がポンと思いついたものの破壊力が一番重要ですね。その破壊力がないものをどれだけ構築して、手触りよくしても、僕はあんまり面白いと思わないかな。ジョン・レノンの曲は、どれを聴いても未完成なものに思えるんだけれど、常に面白いと感じる何かがある。そして、ポール・マッカートニーによる構築力の高さーーだからビートルズはいいんですよね。思いつきの破壊力プラス構築力の高さの両方があるというのは、音楽の一番理想的な形だと思う。

ーーその両立ができているか、ということをプロデューサーとして、常にジャッジしている。

織田:そうですね。加えてプロデューサー・織田はとても論理的な人間なので、ケースバイケースでのシチュエーションがあります。例えば、人をプロデュースするときは、そのアーティストなり、レコード会社なり、この人たちが望んでいることのために、一番いい道筋を案内してあげなければいけない。作品の制作にかかわる人ということではなく、プロデューサーは道筋を示す人なんです。例えば、アーティストが歌詞も曲もすべて作るけれど、どうすれば自分たちが求めている音楽に到達できるかわからない、というチームには、「もっとこうやったらいいと思うよ」というふうに、その音楽に行き着くためのアレンジという道筋をちょっとずつ示してあげる、ということだと思います。「私は歌詞も書けません。曲も作れません。でもシンガーとして何者かであるはずです」という場合には、歌詞も曲も自分が用意しよう、ということにもなる。道案内をするために足りない材料は、自分が提供するなり、人から持ってくるなりすればよくて、一番大事なのは「こっちだよ」と道を示すということですよね。

ーー織田さんは、理論家であり表現者でもあるという印象です。

織田:でもやっぱり、人間には得意不得意があって。僕の場合、圧倒的に不得意なものは“持続すること”なんです(笑)。極端な話、「おどるポンポコリン」は自分が歌う想定ではないじゃないですか。ああいう作品が生まれることには意味があるけれど、「おどるポンポコリン」ばっかりの路線をずっと行こうよと考えたら、すぐに詰まる。だからいろんなことを試しながら、次に活かしていくんです。ぐるぐる回りながら螺旋のような形で進化していく、というのが自分のシステムですね。

ーーソロとしての創作もありながら、ROLL-B DINOSAURとしての活動もある、というのはまさにその形ですね。

織田:そうですね。いいペースでできているなと思ってます。

ーーなるほど。今回シングルとして『CAFE BROKEN HEART』がリリースされましたが、アルバムは見据えているのでしょうか?

織田:来年には出るんじゃないですかね。春ぐらいには出さないといかんと思っているので。来年還暦ですからね。せっかく還暦だからアルバムぐらい出さなければ、と強く思っています。

ーー前作からちょうど4年ですからね。

織田:そうなんですよ。気がついたらそれぐらい経っているので。もう、ここで「出ます」って言っちゃおう(笑)。本当かなあ? でも楽しみですね。前作は「RED」盤と「BLUE」盤に分けましたけど、何をやる気なんだろうね(笑)。

ーーそれらが統合された何かかもしれない?

織田:そうかもしれない。ある意味、ROLL-B DINOSAURをやっていることで少し整理がついているということもありますしね。日々曲は作っているので、そういう意味では、すっきりと統一されたものができるんじゃないかな。でも、こればっかりはできてみないと分からないですね。

ーー今作から考えると、前作とは違うニュアンスのものにもなりそうです。

織田:そうですね。基本的には、シンガーとしての織田哲郎は、今回の「CAFE BROKEN HEART」でなんとなく固まってきてるところがあって。「還暦のやつが言う話じゃねーだろ、いまさら固まってきたのかよ!」っていう話なんだけど(笑)。でも、正直なところそういう感覚だし、とてもいいものができるな、という気はしていますね。

(取材=神谷弘一/撮影=三橋優美子)

『CAFE BROKEN HEART』

■リリース情報
『CAFE BROKEN HEART』
発売:2017年7月5日(水)
価格:¥1,204(税抜)
<収録曲>
1. CAFE BROKEN HEART(NHKラジオ「深夜便のうた」(2017年7~9月))
2. 八月の蒼い影2017
3. CAFE BROKEN HEART (off vocal ver.)
4. 八月の蒼い影2017(off vocal ver.)

■ライブ情報
<織田哲郎>
『SAPPORO CITY JAZZ』
7月22日(土)サッポロミュージックテント(札幌市中央区大通西2丁目)

『織田哲郎アコースティックライブ in そよ風ホール』 
9月9日(土)久留米市田主丸複合文化施設 そよ風ホール

『織田哲郎コンサート in 調布』
9月24日(日)調布グリーンホール(大ホール)

<ROLL-B DINOSAUR>
『YOKOHAMA SUMMER ROCK FES. “Revolution Rocks 2017”』
8月19日(土)横浜 BAY HALL
『CHAIN THE ROCK FES. 2017』
8月26日(土)川崎 CLUB CITTA’ 

織田哲郎OFFICIAL WEBSITE
ROLL-B DINOSAUR OFFICIAL WEBSITE

 

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる