作詞家zopp「ヒット曲のテクニカル分析」第10回

亀と山P、テゴマス…...作詞家zoppが考える“続編”曲の面白さ「深読みは歌詞だからこそできる」

「物語の内容よりも、キャラクターが物語を作っていく」

ーー続編とわかるようにするにはタイトルも大事だと思います。スペイン歌謡四部作とジャニーズWESTの三部作に関してはタイトルで明らかに続編だとわかりますが、テゴマスだとそんなに続編感はない。これは曲同士の距離感や制作チームとの合意も関係しているんですか。

zopp:そうですね。「抱いてセニョリータ」を作った時には「青春アミーゴ」の続編のような曲を書こう、という制作チームとの合意があったので、2作品の間に橋渡しするようなキャッチーなキーワードがあった方がいいと考えてタイトルにスペイン語を。テゴマスの場合は2人で1人称を歌わないといけなかったりするので、そういう時はどちらかに似たキャラクターにすると片方のファンの子は複雑じゃないですか。だから手越くんとも増田くんとも違う「テゴマスくん」というキャラクターを作って、僕が勝手にずっと同じ主人公の作品を時代別に書いていただけなので、あえてタイトルに続編感を出さないようにしていましたね。続編としてではなくても生きる作品にしたかったのもありますし。ラブソングでハッピーな歌とか、失恋ソングとか、たくさん歌詞を書いていると、言えることも出て来る描写も限られてくると思うんですよ。「テゴマスくん」のように同じキャラクターにしておくと、この人は前にもこの描写があったから違う描写にしよう、と考えやすくなると思います。

ーー書いている本数が多いと同じパターンにはまってしまう。

zopp:多くの作家さんの場合、アーティストや自分自身を主人公にすることがほとんどですけど、僕の場合は“劇団zopp”がいて、その中からキャラクターをピックアップして僕が演出しているようなイメージです。実は作品に如実には出ていなくても、僕の作詞全体の裏テーマとして同じ人が登場するストーリー、という意味での“続編”もあります。

ーーなるほど。歌詞の主人公や舞台設定のディテールはどこまで細かく決めるものですか?

zopp:昔は結構アバウトだったんですけど『ジョジョ(の奇妙な冒険)』を描いている荒木飛呂彦先生が、一つひとつのキャラクターにちゃんと履歴書を作っていると言っていたんですね。それを聞いて、すごくいいなと思って。履歴書さえあれば感覚で被ったりしないので、肘をつく癖があるとか、舌打ちをする癖があるとかも履歴書に書いておく。そうすればある作品で舌打ちをして、全然違う作品でも舌打ちをしていて、実は一緒のキャラクターなんです、みたいなことがしやすくなる。自分の中で履歴書の項目は決まっているので、まずは全部埋めるんです。僕も物語の内容よりも、キャラクターが物語を作っていくと思っているので、キャラクターの存在は歌詞を書く上でも1番大事だと考えていますね。

ーー秋元康さんの場合、グループの人数が多い分、主人公をどのメンバーにするかで書く歌詞の内容も変わっていっているような気がします。ソロ曲はもちろんそうですし、ユニット曲はそのユニットのメンバーたちに合わせたような歌詞を書いていらっしゃるというようなイメージがあって。

zopp:あれだけ人がいたらやりやすいと思います。メンバー一人一人のキャラも立っているでしょうし。多分秋元さんも、曲ありきで作っているというよりかはセンターに立つメンバーのキャラクターありきで作っているという気がしますね。

ーーちなみに“劇団zopp”の劇団員の中に、全く自分は反映されていないんですか。

zopp:僕は全然いないです。歌詞の世界では、本当に僕じゃない人間のストーリーを作るので。でも、自分が好きな漫画のキャラクターとかドラマのキャラクターをベースにすることはありますね。もちろん少し変えたりはしますけど、人気のあるキャラクターってどこか共通点があるじゃないですか。『進撃の巨人』のリヴァイと『ドラゴンボール』のベジータみたいに(笑)。それを踏まえつつ、細かいところをきちんと設定してあげるんです。好きな食べ物を設定するとどこの場所に置いてあげるかも決まりますし、よく遊ぶエリアとか、最寄り駅も大事で。位置条件も決めやすくなるので、思い悩む事がないんですよ。自分で想像して書くというよりかは、Google Earthを見ながらここにこれがあるからこう描写しよう、というところまで考えているので、映画を作るのに似ているかもしれません。ロケハンしている感覚というか。

ーー以前から歌詞を映画的に作るというのは聞いていましたが、漫画的な表現も入っているんですね。

zopp:そうかもしれないです。シンガーソングライターの方の歌詞は私小説的ですが、僕の歌詞は文学的というよりは大衆的なんだろうな、と感じますね。漫画って4コマ漫画とかもあったりして、比較的短い。でも起承転結はちゃんとしているから、4コマ漫画で自分の作品を書け、と作詞クラブでも教えていました。漫画の良さは、大事なところはコマが大きくてわかりやすいことで。映画は同じ大きさのスクリーンでずっと見ているので、音が盛り上がってくるとここは大事なんだなとわかるんですけど、しっかり2時間見ないといけないじゃないですか。短い時間で大事なシーンが見たい時は、漫画で大きなコマだけ追いかけるのもアイデアを得るためには有効だと思います。

ーーポップスとしては4コマ漫画くらいわかりやすく、要約しないと伝わらないですよね。

zopp:1曲では書ききれないんですよね。Aメロ、Bメロ、サビ、各パート16小節ぐらいずつしかない。16小節ではそれほどたくさんのことを書けないので、起承転結ぐらいがちょうど良いと思います。

(取材=中村拓海、村上夏菜/構成=村上夏菜)

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