『進撃の巨人』『CRISIS』サントラ手掛ける澤野弘之、アニメと実写で楽曲はどう変わる?

 そうしたアプローチの違いは、サントラの曲名からもうかがえる。澤野サントラには個性的な曲名が多い、というのはファンのあいだでは有名な話だが、それがアニメサントラだとより顕著になるのだ。

 たとえば『魔王』の場合、「pSYCHOMETRy」「LiVE/EViL」のように表記に特徴はありながらも、意味が読み取りやすい曲名が付けられている。『まれ』では「Mt氏」「Otto64」(読み:やまし、おっとろし)といった当て字のようなものが増えるが、これもまだ序の口。アニメサントラになると、「巨♀~9地区」「犬Kあ3L」(読み:めがたきょじんちく、いぬかさる)など、さらに謎めいた曲名が目立つようになる。特殊記号が使われるのは当たり前で、一瞬文字化けを疑ってしまうほどだ。澤野いわく、タイトルにはなるべく意味を持たせないよう、意図的に不可解な文字列にしているそうだが、同時に「僕としてはお遊びの要素が強い」のだそうだ。(参考:澤野弘之、「甲鉄城のカバネリ」の仕事を語る)つまり、言い換えれば「アニメ劇伴の方がドラマ劇伴よりもお遊び要素が強い」のではないだろうか。

 普段、映像作品を見ていても、サントラのタイトルにまでは気がまわらないという視聴者がほとんどだろう。しかし、澤野サントラの場合、遊び心が存分に詰まったタイトルにもぜひ注目してほしい。サントラを比較する際にも、音楽的なアプローチ以外に曲名を照らしあわせることで、両者の違いがわかりやすく浮かび上がってくる。

 今回のように、澤野が地上波で実写とアニメ作品の両方を担当するのはなかなかない機会だ。『CRISIS』の曲名などはまだ公開されていないが(5月3日現在)、この折にぜひ両放送でサウンドを聴き比べてみてはどうだろう。

■まにょ
ライター(元ミュージシャン)。1989年、東京生まれ。早大文学部美術史コース卒。インストガールズバンド「虚弱。」でドラムを担当し、2012年には1stアルバムで全国デビュー。現在はカルチャー系ライターとして、各所で執筆中。好物はガンアクションアニメ。Twitter

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