井上苑子が見せたパフォーマンスの進化 新たな一歩踏み出したツアーファイナル

 等身大の“胸キュン”な歌詞で、同世代のリスナーから圧倒的な支持を得るシンガー・井上苑子。映画『ReLIFE リライフ』の主題歌「メッセージ」を掲げたツアー『井上苑子 春ツアー2017「いぬうえ幼稚園入園式 ともだち100人できるかな」』のファイナルとして4月26日に開催した中野サンプラザ公演は、井上が同世代に支持される理由を改めて感じたライブだった。

 ライブは園児(=観客)たちに「いぬうえ幼稚園」の“井上先生”が注意事項を呼びかけるVTRからスタート。井上は映像内で「楽しい時は体を動かしながら聴いてくれると嬉しいです!」と笑顔を見せると、大きなビーチボールや色鉛筆を模した飾りなどのカラフルなセットに囲まれたステージにバンドセットとともに登場した。

 

 まずは「線香花火」を披露すると、会場は熱心なリスナーによるピタリと揃った掛け声とともに、一足先に夏が来たかのような熱気に。その後は「ふたり」「ナツコイ」と井上の真骨頂とも言える初々しくもハッピーなラブソングが続いた。これらの楽曲では、まるで少女漫画を読んでいる時のようなもどかしさや甘酸っぱさを感じさせる歌詞と、井上の透き通ったピュアな声のマッチングを楽しむことができた。

 そして再びVTRのコーナーに。映像には井上と芸人・たんぽぽが登場し、「今日みんなが観に来たのは、どのこ〜?」「そのこ〜!」という井上と観客による、新たなコール&レスポンスを考案。新曲「スタート!」で早速その掛け合いを実践し、観客を大いに盛り上げた。「君との距離」「おんなのこ」とギターを手にストレートな思いを歌っていた井上だが、キーボードの演奏のみで披露された槇原敬之のカバー「どんなときも。」ではガラリと雰囲気を変え、高い歌唱力と美声で魅了。裏表のない素直な人柄はもちろん、バンドメンバーが奏でる豊かな音色にも負けない、時に可愛らしく、時に切なく響く井上の声に人気の理由があることを感じた。

 続いて芸人・永野も登場したVTRでは、井上が考案した「だいすき。」の振り付けを観客にレクチャー。“ギターを弾いて歌う”という音楽を届けることに重点を置いたパフォーマンスに加え、観客と一緒に踊るという楽しみ方が取り入れられた。観客を巻き込んでライブを楽しもうとするその姿勢からは、彼女のエンターテイナーとしての新たな一面が滲み出ているようだった。

 一方で、初の映画主題歌となった「メッセージ」の披露前には「薬局でチープな化粧品を買おうとしてたら、自分の曲が流れて買いづらかった」と、ステージを降りたら“普通の19歳”であることが伝わるエピソードも。そんな親しみやすい井上が歌うからこそ、同世代のリスナー達は、曲の主人公たちに自身の姿を重ねられるのかもしれない。実際この日の客席には制服姿も珍しくなく、井上が「学校帰りの人?」と尋ねると大勢の手が上がっていた。

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