s**t kingzが考える、J-POPシーンにおける振付の“重要性”

s**t kingzが考える振付の“重要性”

 リオ五輪閉会式のパフォーマンスやドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)での“恋ダンス”の流行など、踊りにフォーカスの当たることが多いここ数年のJ-POPシーン。それらを陰ながら支えてきた振付師は、現在のシーンを語る上で欠かせない存在だ。この連載では、最前線で活躍する振付師にインタビューを行なっていく。そのルーツやダンサー・振付師としての矜持、自身が手がけるコレオグラフのポイント、これまでの仕事の解説などを通して、振付という面からJ-POPの“今”を紐解こうというものだ。

 第1回に登場するのは、shoji、kazuki、NOPPO、Oguriの4人からなるダンスチーム・s**tkingz(シットキングス)。これまで三浦大知やBoAのバックダンス、CROSS GENE、EXO、Hey! Say! JUMP、Kis-My-Ft2、SHINee、V6などの楽曲の振付を担当し、個々人の活動を加えるとAAA、Da-iCE、超特急、DISH//、mihimaru GTらの楽曲も数多く手がけている。さらに、2015年に『a-nation』出演、2016年にマンガ家のヤマザキマリ脚本による単独公演開催、今年は『SXSW』出演と、ダンスパフォーマンス集団として未開の地を歩み続けている彼ら。ワークショップやライブで国内外を飛び回る中、自らの振付スタイルから、日本と海外のストリートダンス事情、4人の夢見る未来までたっぷりと話を聞いた。(鳴田麻未)

ダンスのプロから見た、三浦大知の本当のすごさ

――まずはs**tkingzが振付を考案する基本的な流れを教えてください。

shoji:シッキンの4人に依頼が来た場合は、最初にアーティストの事務所やレーベルの方からやりたいことをひと通り聞きます。それを元に4人で話し合ってコンセプトを決めつつ、曲の中でどのパートを誰が振り付けるかっていう“振り分け”のジャンケンをして。で、振付を持ち寄って構成していくときもあれば、4人集まった場でイチから流れを作っていくときもあって、楽曲によってさまざまなんですけど。

――ジャンケンで担当パートを決めているとは驚きです。

shoji:振付に限らずシッキンはいろんなことをジャンケンで決めます(笑)。雑に決めてるわけではないんですよ。話し合いながら決めていくとなんとなく各々のイメージで「こんな曲だったらサビはこの人が作ったほうがいい」って一辺倒な感じになってきちゃうので、ジャンケンで作ることで毎回新鮮味を保ってるというか。

――これまでダンサーとしてもコレオグラファーとしても数多くのアーティストと仕事をしてきた皆さんですが、特に印象に残っている方を挙げるとしたら?

NOPPO:(三浦)大知はやっぱりすごいですね。歌と踊りはもちろん、自分自身でイメージを持って振付したりMVを作ったりするから。それが当たり前になっちゃってるくらい今の大知は高いレベルで活動してるし、それに関わらせてもらってるのはうれしいです。

――「三浦大知のパフォーマンスがすごい」とはいろんな方面で言われていますけど、踊りのプロから見て具体的にどうすごいと思いますか?

shoji:大知くんも時代を遡るといろいろ変化してるんですけど、タイミングごとに自分のダンス技術がやりたいほうに追いついてるんですよね。「次はこういうことをやりたい」って考えるアーティストはたくさんいらっしゃいますけど、自分で踊ったときにきちんと魅せられる、技術的な準備ができてる人って意外に少ないと思うんです。彼はそれができてるのがすごいと思います。新しいことをやろうと思って、実際にやったときにちゃんとカッコいいものとして見えるという。

NOPPO:大知がすごいと言われる一番の理由は、やっぱりライブにあると思う。MVだとカット割りがあったり何回も撮れたりしますけど、ライブはごまかせないから。

shoji:うちらダンサーの何倍もというぐらい一番踊ってるしね。

――大知さんの振付の特徴に、床に手をついたり座るといったフロア(床技)があります。J-POPでは普通あんなにフロアを取り入れないと思うんですが。

shoji:そうですよね(笑)。毎回フロア入った瞬間に「大知くん、ここ歌う?」ってうちらから訊くんですけど、本人は「ああ、うん。マイク持ち替えれば歌えるから」って飄々と言うので、改めてすごいなと思います。

――そうすることで、テレビ番組では引きの画で撮ることになり、上半身ばかりでなく全身を見られるのでうれしいです。

Oguri:僕たちとしても、全身で見て振り付けを味わってほしいですね。大知だったらずっと引きでもいいくらい。

shoji:2012年に、シッキンも参加してる「Right Now」のリハ動画が話題になったんですけど、ああやって定点の映像で見せられる時点で高い技術力だと思います。カット割りが入ると楽しいけど、定点ですごいと思わせるのはそれだけうまいからなので。

三浦大知 / Right Now (Dance Rehearsal)

ジャニーズ、SMエンタテインメントの振付秘話

――V6、Hey! Say! JUMP、Kis-My-Ft2の振付を手がけた経験がありますね。ジャニーズの人たちは振り覚えが早いと聞きますが、本当にそうなんですか?

一同:早い。

Shoji : ジャニーズの皆さんはダンスの得意不得意に関わらず、皆さん覚えるのが早いんです。普通ダンスがあまり得意でない人は覚えるのも時間がかかるものなんですが、ジャニーズの皆さんはそういうことも関係なくサッと覚えます。覚えた上で動きのニュアンスやディテールに苦戦することもあるんですが、音楽をかけると最後までついてこれるんです。

Oguri:どんな状況でも、本番になるとバシッと決めるよね。

shoji:そう! そういうところも何か持ってるんだなっていう感じがしますね。舞台やミュージカルを含め、いろんなことをやってるからか対応力がすごい。自分がやったことのない動きでも、そういうものを体に入れること自体に慣れてるのかもしれないですね。覚えが早い上に皆さんすごく真面目だと思います。

Oguri:「ここは自由な動きで」っていうところは必ず出てくるんですけど、そういうときに自分のカッコいい角度もわかってるから、振付師的には助かりますね。

shoji:あと、ファンの人たちの気持ちをホントによく考えてるんですよ。「今こうなってますけど、ファンの人たちはきっとこういうものを求めてると思うんです」みたいな話が出て「じゃあ修正しましょうか」となったり、本人たちから「ファンの人たちが喜ぶと思うのでこういう振りを入れてみたいんですけどいいですか?」と意見を出してくれたり。アイドルという仕事への意識の高さに驚きます。

――なるほど。また、BoA、SUPER JUNIOR、SHINee、EXO、NCT Uなど、SMエンタテインメントのアーティストにも多く関わられています。厳しいレッスンで有名な事務所でもあり、ダンスのスキル水準やシンクロ率がすごいですよね。

Oguri:SMのアーティストはストイックだよね。

kazuki:平均的にうまいし、すごく一生懸命だし。

NOPPO:振付も「ここ歌えないような振付だけど……」とか考えないで作れるね。求めてくるものがダンス重視だから。

shoji:韓国の音楽文化そのものに、ダンスの存在がすごく大きいんですよ。なんなら振付に合わせて歌詞が変わったりするんです。振付師ながら「この間奏がもう少し長かったら振付的に面白いんだけどな」とか「歌割りがこうしてあったら面白くできるんですけど」と言ってみると、ホントに歌割りを変えてくれたり。そのくらいダンスが重要視されていて。

――へえー。

shoji:うちらが関わり出したEXOのデビューの頃(2012年)はキャッチーな振りを打ち出すという話がよく出てたんですけど、最近のSMからの依頼は、パフォーマンスとしてすごいものを作りたいというのが多いですね。

NCT U_일곱 번째 감각 (The 7th Sense)_Music Video

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