姫乃たま『音楽のプロフェッショナルに聞く』番外編 ぱいぱいでか美

姫乃たま × ぱいぱいでか美、両立アイドルが考える理想の“私”と“活動スタイル”

自分の原動力が何なのかを知っているだけで素晴らしい(姫乃)

 

姫乃:でか美ちゃんはライブ活動をしながらマスメディアへの露出もしているわけだけど、テレビの仕事があったからライブ活動も続けられているっていう気はしない?

でか美:人という字みたいな(ジェスチャーをしながら)。

姫乃:アイドル業とタレント業が支え合って、的な。

でか美:そうだね。ファンもライブの時間も大好きなんだけど、たまによくわからないライブに出ると家に帰ってからどうしようもない気持ちになる時があって、その後に華やかな収録現場に行くと元気をもらえるし、逆にテレビの収録でうまく喋れなかった時は、ライブで応援してもらえると元気が出るから、どちらかが極端に減ったりするとやっていけないかなって思う。

姫乃:ハレとケの差が埋まってね。きっと両方の仕事が互いに影響しあってもいるよね。

でか美:テレビで見てくれた人が、ライブハウスに行くのは怖いけど、いろんなハードルを越えて会いに来てくれたりとか、そういう「『有吉反省会』見て来ました」って言ってくれるファンの人と私が喋ってるのを見ると、現場のオタクがすごい嬉しそうにしてくれたり。オタク……私はファンとオタクっていうのは違うと思ってるんですけど。

姫乃:うんうん、ここ数年でライブに来て熱心に応援してくれるファンの人を、愛情込めてオタクって呼ぶ文化ができたもんね。

でか美:オタクの人も私がテレビに出てるから、応援するモチベーションを保ててると思う。

姫乃:彼らはでか美ちゃんがテレビに出てなくても好きだと思うけど、応援してる子がテレビに出てたらきっと嬉しいよね。しかし私は本当に、バラエティ番組の仕事で勝てる気がしないんだけど、でか美ちゃんはすごいよねえ。

でか美:いやいや、勝ってないよ。でもテレビ好きでよく見てたし、あと最近は批判してくる人が一番の真っ正面からテレビを見ている視聴者だなって気がついて。いまはSNSで否定も肯定もできるし、それであんまり怖くなくなってきたっていうのはあるかな。でも「爪痕残すぞ!」っていうアイドルが多い中で、今日勝つ勇気みたいなのが出せなくて、それが自分の良いとこでもあり悪いとこでもあるんだけど、それが今に繋がっちゃってるなあっていうのは思う。

姫乃:いやでも、でか美ちゃんは頑張って活躍してるし、我々インディーズソロアイドルの星ですよ。ここまで来るのだって大変だったと思うし、そもそも芸名もセクハラ半分で付けられて。

でか美:そう、専門学校の時に一緒にバンドを組んでた仲良い先輩に付けられたんだけど、セクハラと気づかず。これより面白い名前ないじゃんと思ってずっと使ってます。

姫乃:ほんと、苦労も多かったと思うけどいい名前だよね。以前、そのバンドがすごい楽しくて、ずっとこのバンドをやっていくって思ってたから、解散したショックでソロになったって聞いたような気がするんだけど合ってるかな。

でか美:メンバーが就職したり、他のバンドに加入するのを見てて、もう絶対に人と音楽やらないって気持ちになって。

姫乃:ショックっていうか、怒ってたのね。

でか美:ひとりで何ができるかなって思った時に、弾き語りかなって思ったんだけど、周りから歌って踊ってる時が楽しそうだよって言われて、じゃあそうしようって。それで22歳でソロになって徐々にいまの形になった感じ。

姫乃:初期の「歌って踊れるバンドウーマン」っていうキャッチコピーは自分でつけたの?

でか美:2013年ってまだライブハウスに出るアイドルってBiSくらいしかいなかったけど、その時点でBiSはすごい売れてたから共演することもなくて、ライブハウスでバンドの中に放り込まれることが多かったから、一見アイドルっぽいけど、アイドルじゃないことがわかるように自分でサムいキャッチコピーをつけるしかないなと。

姫乃:私は2009年からその時期も粛々と地下のライブハウスで活動していたんだけど(笑)、たしかに最初の頃はバンドと共演することも多くて、アタックが強くないといけないって気持ちになったなあ。

でか美:あと名前が名前だから。いまはみんな慣れてくれて「ぱいぱいでか美でーす!」って登場してマジメに歌っても大丈夫だけど、当時は結構、なあんだみたいな雰囲気になっちゃうかなあって思ったから、尖ったキャッチコピーにしました。

姫乃:最初はライブハウスでテキーラガールとかもやってたよね。

でか美:やってたやってた。来た仕事はなんでもやってた。

姫乃:そこから活動が安定するまで、どういう大きい出来事があったんだろう。

でか美:バンドが解散してソロになった時、大森靖子さんが「ひとりになっちゃったんだね……」って感じで気にかけてくれて、ディスクユニオンの金野さんを紹介してくれたの。それで「名前が面白いからうちでリリースしよう」ってことになった。

姫乃:私もいまCDのリリースでお世話になっているけど、一事が万事その調子で、面白ジャンキーおじさんだよね。最高。

でか美:しかもそれとは別で大森さんが一緒にCD出そうって言ってくれて『PAINPU』を出したら、ナタリーとかに取り上げてもらえて、『有吉反省会』(日本テレビ系)に呼んでもらえるようになって、そこで金銭的にはかなり安定したかな。ライブもノルマを払ってたのが、チャージバックになって、ギャラになって、テレビに出たことでお金を払わないといけないって思ってもらえるようになったみたい。

姫乃:アイドル業とタレント業でそういう相互作用があるのはいいね。あと流通すると、いままでいかに自分が業界からなかったことにされてたか気がつくよね(笑)。いたよーって思う。2009年からずーーーっと地下にいましたよー! まあ、今もだけど。

でか美:そう。だから私も“芸歴”は、そこから始まったような気がするよ!

姫乃:ぱいぱいでか美の芸名が活動を安定させてくれたっていうのは、すごくいい話だよね。それに大森さんとの出会いがでか美ちゃんにとってすごく大きなきっかけになってるんだけど、最初はハロプロ好きで通じ合ったっていうのが、本当に尊い。ハロプロには入れなかったかもしれないけど、確実にハロプロがでか美ちゃんの人生になってるわけだから。私は未だに大森さんとは面識がなくて、ももちのことも詳しくないのですが、ハロプロが好きだからアイドルを名乗らなかったり、大森さんがやっている弾き語りはやらなかったり、尊敬する人とは別のアプローチをしたいんだなっていうでか美ちゃんのマジメな頑張りが伝わってくるよ。そのモチベーションってどうやって保たれてるのかな。

でか美:最初に好きになったアイドルがハロプロだったし、実は音楽やりたいって思ったきっかけが宇多田ヒカルさんで、テレビに出たら目の前にテレビスターの有吉(弘行)さんがいて。……多分、私がやりたいと思ってることって、全部売れないと叶えられないんだよね。だからだと思う。

姫乃:でも、自分が何になりたくて、何をしたくて、その原動力が何なのかを知っているだけで素晴らしいよね。

でか美:もう大人だからね……。

姫乃:そう、私達もう大人なんですよね……。さあ、最後になんか言い残したことありますか?

でか美:ももちと共演したい!!!!!

姫乃:オーケー、それ絶対書いておきますね。

 

■ぱいぱいでか美 リリース情報
『PPDKM / 桃色の人生!』
発売:4月5日(水)
価格:初回盤【CD+DVD】¥1,800(税込)
通常盤【CD】¥1,200(税込)

<CD収録内容>
M-1「PPDKM」
Lyrics by E TICKET PRODUCTION
Music & Arranged by E TICKET PRODUCTION
Programming: E TICKET PRODUCTION
Produced by E TICKET PRODUCTION

M-2「桃色の人生!」
Music & Lyrics by でか美
Arranged by ミナミトモヤ
Strings arrangement : KOJI oba
Guitar : 荒川慎一郎(deid,VELTPUNCH,ayutthaya)
Bass : ミナミトモヤ

M-3「言いたいことはありません」
Music & Lyrics by でか美
Arranged by KM_BONELAB

<初回盤DVD収録内容>
1.PPDKM(MV)
2.桃色の人生!(MV)
3.PPDKM (Mecha Ippatsudori ver.)(MV)

ぱいぱいでか美「PPDKM」
ぱいぱいでか美「桃色の人生!」

ぱいぱいでか美Twitter

■姫乃たま(ひめの たま)地下アイドル/ライター

1993年2月12日、下北沢生まれ、エロ本育ち。アイドルファンよりも、生きるのが苦手な人へ向けて活動している、地下アイドル界の隙間産業。16才よりフリーランスで地下アイドル活動を始め、ライブイベントへの出演を軸足に置きながら、文筆業も営む。そのほか司会、DJとしても活動。フルアルバムに『僕とジョルジュ』があり、著書に『潜行~地下アイドルの人に言えない生活』がある。

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