振付稼業air:man、夏まゆみ、竹中夏海……人気振付師の特徴を書籍から分析

竹中夏海『IDOL DANCE!!! 歌って踊るカワイイ女の子がいる限り、世界は楽しい』(2012年、ポット出版)

 アイドル専門の振付師として活躍する竹中夏海が、アイドルのダンスの極意や事務所ごとのダンスのカラーの違いなどを徹底分析。自らが振付で関わるPASSPO☆(当時はぱすぽ☆名義)の玉井杏奈や、東京女子流のディレクター&衣装担当などのインタビューもあり、さまざまな立場からの現場の声も反映されている。

 彼女がアイドルのダンスを俯瞰する上でたびたび語っているのが、Perfumeのダンスパフォーマンスの凄さ。技術的に上手いのはもちろんだが、3人の魅力をMVで世界的に発信するにあたって、ステージとは異なるMV専用の振付が多用されていることをポイントとして挙げている。「love the world」(2008年)の座った姿勢から始まる振付、「ナチュラルに恋して」(2010年)での動く歩道を使ったウォーキングやラインダンスなど、映像作品として完成度の高いダンスシーンを作り込むことで、固定ファン以外の層にも人気が広がったという説には確かにうなずけるものがある。

 また中でも特に詳しく説明されているのが、フォーメーションについて。例えば結成当初、踊っていると必ず正面からは見えにくいメンバーがいる10人編成だったPASSPO☆における、曲のサビ途中でメンバーを回転させる“渡り鳥”“万華鏡”などの個性派フォーメーションを図解で説明。他にも平面で広がって動きを見せるPASSPO☆に対し、ハロー!プロジェクトのグループは「階段を使った見せ方とかが凄く巧い」と評価している。

 一言で振付師と言っても、わかりやすく教えることを重視した振付稼業air:man、育成に重点を置いている夏、俯瞰して冷静に分析する竹中などスタンスに大きな違いがある三者。しかし3冊ともアイドルのパフォーマンスを楽しむ上でさまざまなヒントを与えてくれることは間違いないので、ぜひご一読を。

■古知屋ジュン
沖縄県出身。歌って踊るアーティストをリスペクトするライター/編集者。『ヘドバン』編集参加のほか、『月刊ローチケHMV』『エキサイトBit』などで音楽/舞台/アートなど幅広い分野について執筆中。

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