『GLORY ROAD TO BUDOKAN COUNTDOWN LIVE』レポート(3)

コレクターズとフラカンが生んだ「最高の余韻」 武道館前ラストライブを観た

 

 そしてTHE COLLECTORS。もちろん加藤ひさしは今日もモッズ・カラーの武道館仕様スーツ。「MILLION CROSSROADS ROCK」で陽性に、かつファストにスタートしてガッとフロアをつかみ、続いてMartha & The Vandellas→The Who→The JAM→THE COLLECTORSと連なる……あ、武道館終わるまではあんまり詳しくセットリストを書かない方がいいか。ええと、そんなような超懐かしい曲、そして次はさらに懐かしい曲の連打で、フロアの温度を上げ放題あげていく。以降、曲名の表記、減らしますが、基本的には最初から最後まで、きっと武道館でもやるであろう曲、もしくはやってほしい曲がどんどん並んでいく、うれしいセットリストでした。

 

 「いやあ、今日も入ってるねえ。うれしい、ありがとう」と、最初のMCで今日もソールドアウトであることにまずお礼を述べる加藤ひさし。「怒髪天、the pillows 、そして今日はフラワーカンパニーズに背中を押されて、このまま武道館へ行きます。前回、チケット残りわずかって言って、今回は『(売り切れて)ごめん』って言いたかったんだけど、言えなかった」と、まだチケットがあることを告知し、グレートのユニオンジャック柄オーバーオールを「普通じゃない、おかしいでしょ」といじってから、「OK、じゃあさらにロマンチックな夜にする」と中盤戦に。

 「TOO MUCH ROMANTIC」や、アニメ『ドラゴンボール超』(フジテレビ系)エンディング曲になった例の最新シングル「悪の天使と正義の悪魔」(これほんとにいい曲! このバンドの最強ポイントだけでできている感じ)などを並べ、さらにグイグイとさらにオーディエンスを引き込んでいく。

 

 某曲の後半で弦6本が火を噴きそうな長尺ギター・ソロをキメるなど、古市コータロー、今日も絶好調、というか、この人のセミアコから絶好調じゃない音が出ている場に遭遇したことなど、ついぞないわけだが。

 アコギを弾いた6曲目でジャケットを脱いだ加藤ひさし、8曲目が終わったところのMCで「ちょっとジャケット着るわ、冷えちゃう」と、再び袖を通す。

 そして「今日ステージを下りたら俺たち無菌室に入らないといけない」と口にしたり、武道館まで無事にすごさねばならないのだということを某時事ネタをからめつつトークしたり。武道館発表以降、MC時の年寄り系自虐ネタが増加&加速している気がしないでもない。

 さらに加藤、フラカンのファンに手を挙げさせ、「結婚式は何回もできる、葬式は一回しかできないんだから。会社とかに『おかっぱ頭の先輩が死んだ』って言って武道館に来ればいいじゃん」、挙句「今日終演後にグレートが、さっきのユニオンジャック姿で武道館のチケットを手売りしてくれるから」とむちゃぶり。「こうして言っても、増子もさわおも売ってくれなかったけど、今日は絶対売ってくれる。しかもあなたにぴったりの席を選んでくれる!」とダメ押し。

 客席で観ていたグレートが思わず頭を抱えたところで、「新曲聴きたいでしょ?」と12月7日リリースのニューアルバム『Roll Up The Collectors』から「ロマンチック・プラネット」を披露、そして、武道館でも絶対マストな2曲をさらに連打し、フロアの温度を臨界点まで上げて本編終了。ラストの曲では大きな大きなシンガロングがクアトロを包んだ。

 

 アンコールでは、フラカン鈴木圭介と竹安堅一が登場。先に武道館をやった者のアドバイスを求められ、竹安は「すごく寒いです」、圭介は「乾燥してます、気をつけてください。僕の加湿器を貸しますよ」。

 しかし加藤、「いいよ。ライブ観て思ったよ、あんなかっこ悪い演出ねえよな、って。家電だよ? 家電だったら俺、冷蔵庫置くよ」。オーディエンス、大笑い。加藤、「加湿はするしロボット掃除機は動いてるし、そういう武道館やろうよ」とさらにのっけるも、コータローにさらっと「普通にやろうよ」と阻まれ、さらにみんな大笑い。コータロー、絶妙の間と声のトーンでした。

 

 そして6人で「世界を止めて」をセッション。THE COLLECTORSの大名曲、というよりも90年代日本のロックの大名曲である、聴いているとすばらしすぎて曲が終わるのがせつなくなるこの曲がツイン・ボーカル&ツイン・ギターで奏でられ、さらに多幸感が広がっていく。

 ちなみにフラカン、2月は名古屋・広島・大阪のクラブクアトロでイベント『シリーズ・人間の爆発』を行っているが、広島ではフラカン+クハラカズユキで、大阪ではフラカン+クハラカズユキ+フジイケンジで「世界を止めて」をカバーし、エールを送ってきた。アンコールで「真冬の盆踊り」をやって、曲が途中でブレイクして「世界を止めて」が始まる、フロア大歓声&熱狂ーーという、熱くて美しい光景でした。

 歌い終えて加藤、「いやあ最高だ、すばらしい!」。さらに1曲プレイしてアンコールを終え、客電がつき、終演BGMで「悪の天使と正義の悪魔」がかかるも、加藤、楽器を置こうとするメンバーを止め、さらに予定外のアンコールを追加、フロアを狂喜させてから、「サンキューありがとう、シー・ユー・武道館」と、ステージを下りた。武道館まであと10日、最高の余韻を残し、期待を大きくさせる、素敵なエンディングだった。

 さて終演後のロビー。グレートマエカワ、本当に武道館のチケット、ロビーで手売りしていました(ユニオンジャック姿ではなかったが)。帰途につくお客さんたちに大ウケ、1枚売れる度に拍手が起きていた。自分たちの武道館の時、半年にわたり日本各地でチケットを手売りしまくってきた人だけあって、実に手慣れた配席ぶりでした。

(写真=柴田恵理)

■兵庫慎司(ひょうご・しんじ)
1968年生まれ。音楽などのライター。1991年に株式会社ロッキング・オンに入社、2015年4月に退社、フリーに。「リアルサウンド」「RO69」「ROCKIN’ON JAPAN」「SPA!」などに寄稿中。フラワーカンパニーズとの共著『消えぞこない メンバーチェンジなし! 活動休止なし! ヒット曲なし! のバンドが結成26年で日本武道館ワンマンライブにたどりつく話』(リットーミュージック)が発売中。

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■ライブ情報
『THE COLLECTORS “MARCH OF THE MODS” 30th Anniversary』
日程:2017年3月1日(水) 開場 17:30/開演 18:30
会場:日本武道館

THE COLLECTORSオフィシャルサイト

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