米津玄師、阿部真央、カノエラナ、majiko、赤い公園…作り手の“存在”がリアルに伝わる作品たち

 ネット音楽のシーンで“まじ娘”として注目を集め、昨年から“majiko”名義で再スタートを切った女性アーティストのミニアルバム。作詞・作曲・編曲・トラックメイクからイラストまでを手がけるマルチアーティスト(このキャリア、米津玄師との親和性も感じる)として知られる彼女は、メジャーデビュー作となる『CLOUD 7』でも、その特異で独創的な音楽表現を存分に発揮している。その中心にあるのは、儚くて危うい自己の存在を映し出す歌。ダークな心象風景を描きながら、決して自己憐憫に陥らない凛とした佇まいも印象に残る。美しく憂いを帯びたボーカル、シューゲイズ、ジャズ、エレクトロニカなどを自在に取り入れたサウンドメイクもきわめて個性的だ。

majiko「ノクチルカの夜」

 バンドであることの意義、“この4人じゃないと生まれない音楽”を常に証明し続けている赤い公園のニューシングル『闇夜に提灯』は、切なさと寂しさに押しつぶされそうな夜の闇を抜け、儚げな希望の光を見つけるまでの物語を描いたナンバー。繊細な感情の移り変わりをノスタルジックな手触りの歌と昇華する津野米咲のソングライティング、ほんのり和風のメロディをドラマティックに歌いこなす佐藤千明のボーカルも冴えているが、何よりも素晴らしいのがメンバーの呼吸が生々しく感じられるバンドサウンド。まるで全員が声を合わせた歌っているような感覚に捉われるグルーヴは、まさに赤い公園の固有性そのもの。まるで赤い公園という人格が存在するかのような音像に圧倒される。

赤い公園 - 「闇夜に提灯」Music Video

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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