MAN WITH A MISSIONが成功した「2つの要因」 そのオリジナリティはどう確立したか?

 そして先にも触れたように、こういうヴィジュアルだからこそ、鳴らすサウンドは本格的なものでなくてはならない。MWAMを聴いていると、90年代後半を起点にメロディックパンクやミクスチャーロック、そして現在のラウドロックと “過去20年の国内ストリートミュージック”の歴史が走馬灯のようによみがえってくる。しかし、そこには単なる焼き直しや“パクリ”では終わらないオリジナリティが確実に存在している。

 もっともわかりやすい例としては、1月25日にリリースされるニューシングル『Dead End in Tokyo』が真っ先に挙げられるだろう。すでに報道されているとおり、この作品の表題曲はアメリカのロックバンド、Fall Out Boyのパトリック・スタンプをプロデューサーに迎え制作された。楽曲のテイストやちょっとしたアレンジからは、確かにFall Out Boyっぽさが感じられる。しかし、曲を聴き終えたときに残るのは“MWAMらしさ”だったりもする。

 また同じように、カップリングの「Hey Now」はBOOM BOOM SATELLITESの中野雅之がプロデュースを担当しており、冒頭のサウンドアレンジやAメロのテイストは確実にBOOM BOOM SATELLITESからの影響を感じさせるのに、サビに突入すると“MWAMらしさ”が一気に炸裂し、やはり曲を聴き終えたときは“MWAMらしさ”が色濃く残る。これだけコラボレーション相手のカラーをしっかり生かしつつも、自分たちの芯にある“らしさ”は絶対に殺さない、いや、殺せないというMWAMのスタイルは特筆に値するものと言える。

 思えばMWAMは過去にもNirvana(「Smells Like Teen Spirit」「Lithium」)やMr.Big(「Green-Tinted Sixties Mind」)といった90年代初頭に活躍した海外バンドのカバー曲を発表しているが、これらの楽曲も原曲のテイストを残したまま独自のカラーで染め上げていた。こういったチャレンジが、現在の“他のテイストをうまく取り入れつつも、ベースにあるカラーは決して揺らがない”というスタンスに直結しているのかもしれない(だからこそ、一度完成したMWAMの楽曲をBOOM BOOM SATELLITESや石野卓球などがリミックスしたテイクで別の楽しみ方ができるのが、非常に興味深い)。

 近年、MWAMは海外展開も積極的に行っているが、まずはその奇抜なヴィジュアルが各国でウケて、続いてバンドが奏でるパワフルでオリジナリティある楽曲にノックアウトされるケースが多いと聞く。MWAMは今後もさまざまな実験を繰り返しながら、「頭はオオカミ、身体は人間」という彼らにしか作れない音楽で我々人間を楽しませてくれるに違いない。

■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる