“2020年の東京”はどう歌われる? サザン、三代目JSB、椎名林檎、Sexy Zoneの曲から考察

サザンオールスターズ「東京VICTORY」

 上記の3曲が、2020年に向け新たな視点から「東京」を見ているのに対し、都市の再開発により失われていく風景へのノスタルジックな感覚を残しているのが、サザンオールスターズの「東京VICTORY」だ。2014年9月の発売当時、特設サイトに発表された桑田佳祐のコメントでは、「私たちが36年以上も音楽を作り続けてきた千駄ヶ谷ビクタースタジオのすぐ近くにある国立競技場が建て替えられることの寂しさや無常感」を感じたことが明かされていた。(参考:http://special.sas-fan.net/special/sas2014/

 今、都心のあらゆる場所で工事が進み、かつてあったビルや公共施設、風景が急速に失われ、代わりにいくつもの新しい建物が増えている。「東京VICTORY」は、そのことに切なさを感じながらも、変わっていくことを受け入れ、「みんな頑張って」と日本とそこに住む人々を鼓舞する。冒頭や間奏部分の幾十にも重なるコーラスワークや力強く進むメロディラインも高揚感に溢れ、アンセミックに鳴り響く。2013年に無期限活動休止から復活し、再び唯一無二の国民的グループとしてスタートをきったサザンだからこそ、東京オリンピックという一大イベントを前に、未来を喜び、希望を歌った「東京VICTORY」は、大きな存在感を発揮することとなった。

 2011年の東日本大震災以降、日本では「ひとつになろう」というスローガンが度々掲げられるようになった。2020年の東京オリンピックも、震災復興としての一面を持っている。そのために乗り越えていくべき多くの問題を抱えながらも、今の日本にとって、東京オリンピックは万人にとっての共通の夢でもある。

 過去と未来。夢と挫折。人との出会いと別れ。変わっていくもの、変わらないもの。「東京」は、日本の歌謡史の中で重要な題材となりながら歌い継がれてきた。「東京」を歌った曲の歴史を追えば、それは東京という街に人々は何を見出してきたのか、その価値観の変遷を追うことにもなる。2013年9月に東京でのオリンピック開催が決まってから、「東京」は、社会を映す鏡となり、個々に生きる人々を再びつなぐ役割を担う街として描かれているのかもしれない。

(文=若田悠希)

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