「また、生きて会いましょう」 Suck a Stew Dry、“完全燃焼”の現体制ラストライブを観た
アンコールを望む手拍子の中ステージに戻ってきたメンバー。「Suck a Stew Dryで初めて合わせた曲をやります」と紹介して始まったのは「アパシー」。続けて、「もうひとつの終わり」では、疾走感のあるグルーブに、フセのコーラスが彩りを与える。その後のMCでは、「今日フセくんが脱退して、僕たちのこの先のことはまだ何もお知らせてできていないんだけど、ちゃんと言わないとなと思っています」「残ったメンバーは一度お休みをさせていただきます。でも、生きてたらまたどこかで絶対会えると思うので。生きてたらいいので、また、生きて会いましょう。ありがとうございます。Suck a Stew Dryでした」と、篠山の口から告げられた。
Suck a stew dry現体制でのラストナンバーは「遺失物取扱所」だった。最後の時が刻一刻と迫りながらも感傷的なムードになることを避けるように、アグレッシブなステージを見せた5人。それにつられるように、オーディエンスからも手拍子が沸き起こり、サビ部分では手が挙がる。そんな光景を目にしたメンバーも笑顔を見せ、篠山、フセ、ハジオ、スダユウキ(B)は、ステージの上を縦横無尽に動き回る。スリリングでありながらバンド一丸となった頼もしさを感じさせるアンサンブルを響かせて、5人はステージを去っていった。そしてその後も、オーデイエンスの拍手はしばらく鳴り止むことなく続いていた。
この日のライブは、5人がベストを尽くした完全燃焼のステージだった。篠山が書く歌詞は、不器用で複雑で、孤独な人間の心模様がありありと伝わってくるものだ。だが、それがSuck a Stew Dryというバンドの音楽になった時、聴く者の心に普遍的に届く強さを持つ。そんなSuck a Stew Dryというバンドの音楽にあらためて向き合うことができ、バンドの核心をかつてなく深く刻み付けられたライブであった。翌日12月8日には、あらためて今後の活動休止が発表されたが、またいつか、新曲を携えてステージに帰ってきてくれるだろう。今はこのライブの余韻を胸に、再会の時を心待ちにしたい。
(取材・文=若田悠希/撮影=白石達也)
■セットリスト
Suck a Stew Dry
『遺失物取扱所:Another End』
2016年12月7日(水)渋谷CLUB QUATTRO
1.ユーズドクロージング
2.カラフル
3.Thursday's youth
4.エヴリ
5.並行世界のエデン
6.ないものねだり
7.水曜日の出来事
8.二時二分
9.レフストアンブルフィ
10.冷たいリグレ
11.SaSD[eve]
12.傘
13.人間遊び
14.Normalism
15.トロイメライ
EN1.アパシー
EN2.もうひとつの終わり
EN3.遺失物取扱所