BABYMETALにはYMOとの共通点がある? 円堂都司昭が改めて考察する、世界的成功の理由
ただ、日本の少女たちの世界的成功に関しては、批判や揶揄もあった。なかでもピーター・バラカンの“BABYMETALは「まがいもの」”発言は、ファンの激しい反発を呼んだ。だが、ふり返ってみればバラカンは、英語詞への関与などYMO関連の仕事によって日本での知名度をあげた人物であった。このことは、考えようによっては興味深い。
YMOも、初期(1979〜1980年)の海外ツアーの模様が国内で報道され、逆輸入的に日本での人気を高めたバンドだった。彼らが欧米で話題になったのは、第一にコンピュータを使ったテクノというサウンド・コンセプトが、新鮮だったからだ。当時、シンセサイザーを多用したポップスの波が、米英でも同時多発的に起こりつつあった。テクノが音楽における世界の共通語になり始める時期だったのである。
それだけではない。YMOのメンバーは中国の人民服風の衣裳を着て、メロディにもオリエンタルなフレーズを混ぜるなど、欧米人が思う「まがいもの」の東洋を意図的に演じる戦略性があった。また、彼らのツアーに参加した矢野顕子が数曲、無邪気な幼女のようなアクの強いボーカルで注目される一方、渡辺香津美のフュージョン系ギタリストとしての力量が評価されもした。
これに対し、BABYMETALは、「カワイイ」+メタルというミスマッチの企画モノで始まっている。いわば「まがいもの」でありながら、海外との共通語であるメタルというコンセプトを徹底させることで、独自のポジションを築いた。メタルにアイドルという新たな選択肢を加えたのである。
そして、「メギツネ」のように東洋趣味を織りこんだ曲がありつつ、少女たちが童心を感じさせるパフォーマンスを披露し、神バンドがテクニカルな演奏を繰り広げるという構図だ。「まがいもの」を特異な優れものにする方程式を成立させた点で、BABYMETALはYMOと共通したところがあった。まあ、バラカンは認めないだろうけれど。
ファースト『BABYMETAL』では、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」に代表される通り、シリアスとギャグが混在する意味不明なパワーがあった。一方、セカンド『METAL RESISTANCE』では、シリアスとギャグが色分けされ、曲ごとにサウンドの傾向も整理された。メンバーの年齢が上昇したこと、海外への意識が高まったことが、曲が変化した背景にはあるのだろう。だが、SU-METALの凛としたボーカルを中心にして、神バンドの高度な演奏とアイドル的な「カワイイ」を体現したダンスが合体するライブは、相変わらず意味不明な面白さに満ちている。来年の彼女たちは、どのような展開をみせるのだろうか。
■円堂都司昭
文芸・音楽評論家。著書に『エンタメ小説進化論』(講談社)、『ディズニーの隣の風景』(原書房)、『ソーシャル化する音楽』(青土社)など。