松村早希子の「美女を浴びたい」
宇多田ヒカルと椎名林檎の佇まいは“神話”のよう 長きの親交が結実した“二人のための歌”
Hikkiは、このMVでも、アルバムのジャケットでも、音楽番組やインタビューなどのメディア露出でも、常に、この「母・藤圭子のかつての髪型と同じ髪型」を貫いています。そして母の死と、自らも子を持ち母親になったことが、このアルバムを作った動機であると繰り返し語っています。その語られる言葉とビジュアルから、誰もが、彼女に起こった悲しい体験と、このアルバムを結びつける筈です。しかし実際に耳にした音楽は、限定された個人の状況にしか当てはまらないものではなく、誰もが「これは自分のことだ」と思える普遍的なものでした。
iTunesにこのアルバムを入れると「R&B」ジャンルと表示されます。けれど、このアルバムこそが、日本語で歌われたポップミュージック、「J-POP」の代表格なのだと思います。
Hikkiの音楽は、思い出の数々と直結しています。
「気配」を表すフランス語の『Fantôme』というタイトルを冠したこのアルバムは、金木犀が香りはじめて秋の気配を感じる季節に届けられました。美術館で素晴らしい展覧会を観た帰り道に大粒の雨に降られて、隣を歩く友人が「今『真夏の通り雨』が頭の中で鳴ってるよ!」と、小さく叫んだ思い出と、私の人生の道の上で結びつきました。
■松村早希子
1982年東京生まれ東京育ち。この世のすべての美女が大好き。
ブログにて、アイドルのライブやイベントなどの感想を絵と文で書いています。
雑誌『TRASH-UP!!』にて「東京アイドル標本箱」連載中。
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