『KiLLER BiSH』特集1:松隈ケンタのプロデュース術
BiSHの“本気”を支える松隈ケンタの作家性 柴那典がそのプロデュース手腕を読み解く
そしてもう一つ、彼本人に話を聞いたことによると、制作の際には歌のディレクションとレコーディングにかなり力を入れていて、それが自らの楽曲の個性に結びついている自覚があるという。アイドルソングの作曲家の中にはあらかじめ歌割りを決めて作るクリエイターも多いが、彼の場合はメンバー全員に楽曲のイメージを伝え、全員のヴォーカルをレコーディングした上で、その後にそれぞれのパートに最も映える声をセレクトしてミックスしているらしい。
つまり、松隈ケンタの作家性は曲調だけでなく「声の演出」にも強く表れる。そう考えると、もともとメンバーの歌唱力に定評のあったBiSHだが、新メンバーとして8月に加入したアユニ・Dも含め、声の表現力に磨きをかけたことがアルバム『KiLLER BiSH』の完成度につながっていると言える。
収録曲にもそれが表れている。リード曲「オーケストラ」では、ハスキーでパワフルな声のアイナ・ジ・エンドと伸びやかな声のセントチヒロ・チッチがサビのメロディをわけあい、疾走感と独特のトゲをもたらしている。
タイトルの通りレッド・ツェッペリンの名曲をモチーフにした「Stairway to me」もそう。アコースティック・ギターのイントロから後半のギターソロまで6分を超える壮大な展開を見せるドラマティックな楽曲は、アルバムの聴きところの一つだ。
また、新メンバーのアユニ・Dの歌声はどことなく無垢な少年っぽい響きがあり、「本当本気」の全力疾走なメロディック・パンクの曲調などではそれが効いている。
そして、個人的にアルバムのフェイバリットは、最もダークなナンバーでもある「Am I FRENZY??」。タムを回し続けるパワフルなドラミングとリンリン作詞の狂気性を持った歌詞が印象的なこの曲では、サビの「あ゛ぁぁぁぁ」というシャウトが耳に刺さる。「IDOL is SHiT」でのリンリンのハイトーンな絶叫も、アイナ・ジ・エンド作詞の「Throw away」の「このままじゃ、気が狂いそう!」という一節もそう。声が尖っている。
『KiLLER BiSH』は、パンクロックの曲調を通して、ある種の「痛み」と、それを突き抜けていくような痛快さをありありと刻み込んだ一枚となっている。おそらくこれを機に、アイドルシーンの外側も含め、グループの“本気”がより広く伝わっていくことになるのではないだろうか。
■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」/Twitter
■リリース情報
BiSH『KiLLER BiSH』
発売:10月5日(水)
ALBUM+DVD -LIVE盤- 価格:¥5,980+税
Disc-1[CD]収録曲数未定
Disc-2[DVD]LIVE映像収録曲数未定
ALBUM+DVD -Loppi・HMV限定盤- 価格:¥4,000+税
Disc-1[CD]収録曲数未定
Disc-2[DVD]BiSHキャノンボール、Music Video収録
luteにて未公開のシーンも収録
CD 価格:¥3,000+税
Disc-1[CD]
■ライブ情報
BiSH Less than SEX TOUR FINAL'帝王切開'
10月8日(土) 東京・日比谷野外音楽堂 17:00/18:00
チケット料金
S席 ¥30,000(税込)※当日限定SPECIAL LIVE鑑賞権+お土産付き
A席 ¥10,000(税込)※お土産付き
B席 ¥5,000(税込)
チケット一般発売中
プレイガイド
チケットぴあ